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公認会計士 新井 篤
平成28年6月第1四半期の四半期報告書で、その他の会計方針等の変更(「繰延税金資産の回収可能性適用指針」「平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更」以外)の注記の開示状況を知りたい。
【調査範囲】
【調査結果】
企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」(以下「四半期会計基準」という。)では、前年度及び直前四半期に採用した会計方針は継続して適用し、みだりに変更してはならないと定められており(四半期会計基準第10項、第21項)、実務的には会計方針の変更及び会計上の見積りの変更(以下、これらをまとめて「会計方針等の変更」という。)は、期首に行われることが一般的であると考えられている(同基準第47-3項)。
そこで、第1四半期の四半期報告書に記載された会計方針等の変更の注記を分析することで各社の会計方針等の変更の傾向を把握できると考え、回収可能性適用指針の適用、及び平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更以外の要因で行われた会計方針等の変更(以下「その他の会計方針等の変更」という。)の開示例を調査した。
その他の会計方針等の変更について開示を行っている会社は130社であり、総件数は140件であった。具体的な内訳は(図表1)のとおりである。
(図表1)その他の会計方針の変更の開示状況
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(*) 開示上は「会計方針の変更」として開示されていた場合でも、一般的に会計上の見積りの変更に分類される変更については、会計上の見積りの変更として集計している。
平成28年度税制改正以外の要因で行った減価償却方法の変更では、変更を行ったすべての会社が従来使用していた方法(定率法や加速度償却法)から定額法に変更していた。変更理由は以下のような事例が比較的多く見られた。これら以外に、平成28年度税制改正を契機に見直しを行った事例も見受けられた。
固定資産の耐用年数の変更については、変更会社数20社のうち、減価償却方法の変更と同時に実施している会社が7社あった。減価償却方法と同時に変更を行っている場合でも、変更理由は必ずしも同じではなかった。
また、耐用年数の変更に係る注記がなされていた19社のうち、耐用年数の変更の詳細が注記から読み取れない会社が一定数存在したが、耐用年数を延長したと思われる事例が9社と最も多かった。
(図表2)耐用年数変更会社の開示分析
変更前後の耐用年数の記載 |
変更による影響額の記載 |
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---|---|---|
あり なし |
あり 軽微 |
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延長(9社)(*1) |
5 4 |
8 1 |
短縮(4社)(*2) |
4 0 |
|
双方(1社) |
1 0 |
1 0 |
不明(5社) |
0 5 |
(*3) 3 2 |
(*1) 在外子会社のある無形固定資産の償却を非償却とした例を含む。
(*2) 特定の資産の移転や建替えなどによる短縮であるため、いずれの会社も変更前の耐用年数は記載されていなかった。
(*3) いずれも減価償却方法の変更と合わせた影響額が記載されており、耐用年数の変更のみの影響額が不明な事例である。
四半期財務諸表における税金費用の計算は、原則として年度決算と同様の方法によることとされているが、税引前四半期純利益に年度の見積実効税率を乗じて計算する方法(四半期特有の会計処理)によることができる(四半期会計基準第14項)。税金費用の計算方法を変更した会社8社のうち、原則法から四半期特有の会計処理に変更した会社は5社、四半期特有の会計処理から原則法(ないし簡便法)に変更した会社は3社であった。四半期特有の会計処理に変更した会社では、四半期決算の迅速化・効率化を目的としていた。一方で、原則法(ないし簡便法)に変更した会社では、税金費用をより適切に四半期財務諸表に反映することを目的としていた。
また、四半期特有の会計処理に変更を行った会社5社について、四半期決算日から四半期決算短信の開示日までの経過日数を前年度と比較した。その結果、実際に提出までの日数が短縮した会社が4社であり、1社は前年度と同日数であった。また、四半期報告書提出日までの経過日数を調査したところ、短縮した会社は3社であり、長期化した会社は2社であった。
(図表3)税金費用の計算方法の変更
変更内容 |
変更 |
決算短信開示日数 短縮化 変化なし 長期化 |
四半期報告書開示日数 短縮化 変化なし 長期化 |
---|---|---|---|
原則法→四半期特有 |
5社 |
4社 1社 0社 |
3社 0社 2社 |
四半期特有→原則法 |
3社 |
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総 計 |
8社 |
(*1) 原則法から四半期特有の方法に変更した会社は、四半期決算の迅速化・効率化を目的としていたことから、短信開示日数・四半報開示日数の前年第1四半期の開示日数を調査した。
(*2) 原則法には簡便法を含んでいる。
変更を行った会社6社は、いずれもこれまで決算時の為替相場により換算していたものを、期中平均相場による換算に変更したものである。また、6社のうち影響が軽微であるため遡及適用を行っていない会社が3社、過去の情報が収集・保存されていないため、一定期間(10年)のみ遡及した会社が1社存在した。
(旬刊経理情報(中央経済社) 平成28年10月20日号 No.1460 「平成28年6月第1四半期『四半期報告書』の開示分析」を一部修正)
平成28年6月第1四半期 四半期報告書分析