わかりやすい解説シリーズ「連結」 第2回:投資と資本の消去、のれんの計上と償却
1. 投資と資本の消去-子会社を新設したケース
子会社を新規に設立した場合、当該新設の子会社を設立のあった日の属する連結事業年度において連結の範囲に含めることとなります。
連結財務諸表を作成するに際しては、親会社と子会社の財務諸表を単純合算した後、当該新設子会社への投資額と子会社設立時における当該子会社の払込資本を相殺消去します。
親会社P社が子会社A社を新設するケースでは、P社によるA社の支配獲得がA社の設立時となるので、設立時点のA社への投資額とA社の払込資本を相殺消去します。
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P社の個別財務諸表とA社の個別財務諸表を合算した単純合算表を作成します。単純合算表では、P社の保有する子会社株式と、A社の払込資本額が両建てで計上されていますが、連結グループで考えた場合グループ内の取引となるため、両者間の投資額と払込資本を相殺消去します。
2-1. 投資と資本の消去-子会社を買収したケース
連結グループの外にある会社を買収により子会社とした場合には、当該買収のあった日の属する連結事業年度において連結の範囲に含めることとなります。
連結財務諸表を作成するに際しては、親会社と子会社の財務諸表を単純合算した後、当該子会社への投資額と買収時点における当該子会社の純資産を相殺消去します。
相殺消去の結果、買収価額(当該子会社に対する投資額)と買収時点における純資産額との差額を、のれんとして処理します。
親会社P社がA社を買収し完全子会社(100%取得)とするケースでは、親会社によるA社の支配獲得がA社の買収成立時となるので、買収時点の貸借対照表を基礎に、A社への投資額(買収価額)とA社の純資産(時価)を相殺消去します。
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以下の説明では、連結事業年度末において買収が行われたものとして解説します。
① 株式の取得
P社はA社の従来の株主から全株式を取得します。A社株式の取得価額は、A社の将来の収益性や資産の含み損益を考慮したものになるので、通常A社の帳簿価額による純資産額と異なります。
② A社の資産・負債を時価に修正
A社の資産・負債に含み損益が生じているものがあれば、A社の買収時点の貸借対照表価額を時価金額に修正します。評価差額は、純資産の増減額とします。
③ 単純合算
P社の個別財務諸表とA社の個別財務諸表(時価評価修正後)から単純合算表を作成します。
④ 投資と資本の消去
連結グループで考えた場合、単純合算表上A社への投資額とA社の純資産が両建てで計上されていることになるため、両者間の投資額と買収時点の純資産額(時価評価修正後)を相殺消去します。
新規設立の場合と異なるのは、相殺消去する対象が、A社の払込資本ではなく、買収時点の純資産額(時価評価修正後)であることと、A社の投資額とA社の純資産額(時価評価修正後)が一致しない点にあります。
⑤ のれんの計上
P社のA社への投資額及びA社の純資産が一致していないため相殺消去差額が生じます。当該差額は、のれんとして計上されます。
2-2. のれんの算定と償却
親会社の投資額と投資時点の子会社の純資産の差額は「のれん」として計上されますが、のれんは規則的に償却を行う必要があります。
親会社の投資額(買収価額)と子会社の買収時点の純資産額(時価評価修正後)は通常親会社が経営権プレミアムなどを考慮して買収額を決定するため差額が生じますが、当該差額はのれんとして計上されます。
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のれんは連結上の収益に子会社が貢献すると期待される20 年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却することになります。
設例のケースでは、投資額700に対して修正純資産が600であり、投資差額100が、のれんとして計上されます。当該のれんは償却期間(5年)にわたり規則的に償却されるため、翌年以降毎期20の償却費が発生することになります。
また、のれんの額がマイナスとなる場合を、負ののれんといいます。負ののれんが生じた場合には、当該負ののれんが生じた事業年度の利益として処理することになります。
3. 投資と資本の消去-子会社を買収によって部分取得(80%取得)したケース
連結グループの外にある会社を買収により子会社とした場合には、当該買収のあった日の属する連結事業年度において連結の範囲に含めることとなりますが、買収した子会社の持分が100%未満の部分取得の場合、連結上親会社の株主の持分と買収した子会社の既存の株主の持分を分けて認識する必要があります。
連結財務諸表を作成するに際しては、親会社と子会社の財務諸表を単純合算した後、当該子会社への投資額と買収時点における当該子会社の純資産のうち買収した持分比率に応じた額を相殺消去し、既存の株主の持分比率に応じた額を「少数株主持分」として計上することになります。
親会社P社が子会社A社を買収するケースで、子会社の株式の全部取得ではなく部分取得のケースでも、親会社によるA社の支配獲得がA社の買収成立時となるので、買収時点の貸借対照表を基礎に、A社への投資額(買収価額)とA社の純資産(時価)を相殺消去するとともに、A社の既存株主の持分を少数株主持分として計上します。
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① 株式の取得
P社はA社の従来の株主から株式を取得します。ただし、買収した子会社の持分が100%ではなく80%の持分を取得して支配権を獲得したケースです。
② A社の資産を時価に修正
子会社を新規に連結する場合、子会社の資産・負債を連結時点の時価で再評価する必要があります。(本設例では省略)
③ 単純合算
P社とA社の個別財務諸表を合算した単純合算表を作成します。
④ 親会社の投資と子会社の資本(親会社持分)の消去
全部取得でない新規連結の場合でも単純合算表上で重複している「子会社への投資」と「子会社の純資産」について相殺消去を行いますが、この場合消去の対象となる子会社の資本は買収時のA社の純資産にP社の持分比率を乗じた持分相当額になります。なお、P社持分以外の持分相当額については(6)で再度説明しますが、少数株主持分に振り替えることになります。
⑤ のれんの計上
P社のA社への投資額及びA社の持分相当額が一致していない場合、相殺消去差額をのれんとして計上します。
⑥ 少数株主持分の計上
買収時のA社の純資産のうちP社持分以外の既存株主の持分相当額[買収時のA社の純資産に(1-P社の持分比率)を乗じた価額] を少数株主持分として計上します。なお、少数株主とは親会社が多数派株主であるのに対応した用語です。
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