わかりやすい解説シリーズ「連結」 第3回:グループ間取引/債権債務の消去、未達取引及び貸倒引当金の調整

公認会計士 蟹澤啓輔

1. 連結グループ会社間取引の消去

連結損益計算書を作成するに際して、連結会社間の取引については連結上内部取引になるため相殺消去する必要があります。

図1 連結グループ会社間取引の消去

連結グループ会社間の取引は、連結上内部取引になるため、連結損益計算書を作成するに際して、相殺消去する必要があります。

なお、上記の他に連結会社間取引には下記のようなものもあります。

  • 一方では営業取引として認識、他方では非営業取引として認識しているような取引
    設例では記載していませんが、例えばP社が資産をA社にリースしているような場合、P社がリースを主たる収益として認識せず営業外収益に計上し、A社が支払リース料を営業費用に計上しているケースなどがあります。

  • 配当金の受払い
    設例では記載していませんが、連結グループ間で配当金の受払いが行われている場合、親会社の受取配当金と子会社の支払配当金を相殺消去する必要があります。

また、通常、連結グループ会社間取引は各社の金額が一致しますが、下記のような場合は、取引金額が一致しないため、連結上の修正などの調整が必要になります。

  • 未達取引(詳細は3. 未達取引の調整参照
    A社では商品を発送し売上計上したが、P社では商品が未着のため仕入原価を未計上となっているようなケース

  • 子会社の個別決算日が連結決算日と異なるケース
    海外子会社などでは子会社の決算日と連結決算日が一致していないケースがあるため、子会社の決算日と連結決算日の相違期間に生じた連結グループ間取引について不一致となります。当該期間に生じた重要な取引については、連結上で調整を行う必要があります。

  • 認識ズレ
    P社では受取利息の未収計上を行っているが、A社では重要性がないため支払利息の未払費用計上を行っていないようなケース

  • 認識漏れ(取引、相手先誤り)/過大認識
    A社ではP社売上として認識しているが、P社において他社からの仕入取引として誤認識しているようなケース

2. 連結グループ会社間債権債務の消去

連結貸借対照表を作成するに際して、連結グループ会社間取引から生じた債権債務は単純合算表上両建てで計上されているため、相殺消去する必要があります。

図2 連結グループ会社間債権債務の消去

連結グループで考えた場合、連結グループ会社間の取引から生じた債権債務は、連結手続において相殺消去する必要があります。

なお、上記の他に関係会社取引には主に下記のようなものがあります。

  • 一方では営業取引として認識しているが、他方では非営業取引として認識しているような取引
    設例では記載していませんが、例えばP社が資産をA社にリースしているような場合、P社が未収リース料を未収入金に計上し、A社が未払リース料を未払金に計上しているケースなどがあります。

また、連結グループ間債権債務についても、連結グループ間取引と同様に下記のような場合は、各社の残高金額が一致しないため、連結上の修正などの調整が必要になります。

不一致の要因

3. 未達取引の調整

連結グループ間取引でなんらかの要因で取引当事者の片方しか取引を認識していない場合、適切に調整した上で連結財務諸表を作成する必要があります。

図3 未達取引の調整

取引の認識時点の相違や商品の輸送・(国際)資金決済などにおいてタイムラグが生じる場合、連結グループ会社間取引で片方の会社のみしか取引を認識していないようなケースが生じることがあります。例えば期末日直前に子会社が親会社に出荷を行い売上及び売掛金を認識したものの、親会社に当該製品が到着し検収を行い仕入及び買掛金を認識したのが翌期になるようなケースです。

このような未達取引が生じた場合、連結会社間取引及び債権債務に不一致が生じます。このような場合には、未達取引を認識していない側の会社において当該関係会社間取引を認識する方向への調整を連結決算において行うことが必要になります。

4. 貸倒引当金の調整

個別貸借対照表上、連結会社間取引から生じた売掛金などの金銭債権に対し、貸倒引当金が計上されている場合には、連結会社間の売上債権の相殺消去と同時に、当該債権に対応する貸倒引当金を修正する必要があります。

図4 貸倒引当金の調整

連結グループ会社に対する売掛金に対し貸倒引当金を計上している場合、当該貸倒引当金の設定されている連結グループ売掛金の相殺消去を行うと、売掛金に対する貸倒引当金が過大に計上されている状態になってしまうため、相殺消去した連結グループ会社売掛金に係る貸倒引当金を修正する必要があります。なお、当該貸倒引当金に係る連結調整は翌期洗替処理を行います。


この記事に関連するテーマ別一覧


わかりやすい解説シリーズ「連結」


企業会計ナビ



会計・監査や経営にまつわる最新情報、解説記事などを発信しています。

ey-japan-corporate-accounting-theme-thumbnail