会社法(平成26年改正) 第4回:計算書類

公認会計士 内川 裕介
公認会計士 武澤 玲子

1. 計算関係書類の種類

株式会社では、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表)及びその附属明細書を作成する必要があります(会435条第2項、計規59条第1項)。
また、このような計算関係書類以外にも、連結計算書類及び臨時計算書類が会社法において定められています。会計監査人による監査対象とあわせて、具体的に示すと以下のとおりです。

表

※1国際会計基準(IFRS)、修正国際基準又は米国会計基準に従って作成することができます。なお、平成28年1月8日の「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令」により、修正国際基準が追加されています。

(1) 計算書類等(個別)

株式会社の「計算書類」とは、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書及び個別注記表をいいます(会435条第2項、計規59条第1項)。計算書類及び事業報告は、ともに定時株主総会で株主に提供される書類であり、これらを合わせて「計算書類等」と呼びます。
計算書類及び計算書類の附属明細書は会計監査人の監査の対象となりますが、事業報告及び事業報告の附属明細書は会計監査の対象とはなりません。

(2) 連結計算書類

連結計算書類は、有価証券報告書を提出する大会社に作成義務があるほか(会444条第3項)、会計監査人設置会社では、任意で連結計算書類を作成することができます(会444条第1項)。なお、任意で連結計算書類を作成した場合であっても、連結計算書類は監査役及び会計監査人の監査を受けなければなりません(会444条第4項)。
また、有価証券報告書における連結財務諸表を国際会計基準(IFRS)、修正国際基準または米国会計基準に従って作成できるとされた株式会社は、会社法における連結計算書類も国際会計基準(IFRS)、修正国際基準または米国会計基準に従って作成することができます(計規61条第2項、第3項、計規120条第1項、計規120条の2第1項、計規120条の3第1項)。

(3) 臨時計算書類

会社法において臨時決算制度が導入され、期中の損益を分配可能額に反映させることが可能になりました。この場合には臨時計算書類の作成が必要であり、作成された臨時計算書類には監査役または会計監査人の会計監査が要求されています(会441 条第1項、第2項)。
 

2. 注記表

(1) 個別注記表

個別注記表の記載項目は以下のとおりです。会社の種類(公開会社かどうか、会計監査人設置会社かどうか)によって、記載すべき項目が区別されています(計規98 Ⅰ、Ⅱ)。

項目

記載の要否

1継続企業の前提に関する注記(計規100)
2重要な会計方針に関する注記(計規101)
3会計方針の変更に関する注記(計規102の2)※1
4表示方法の変更に関する注記(計規102の3)※1
5会計上の見積りの変更に関する注記(計規102条の4)
6誤謬の訂正に関する注記(計規102条の5)
7貸借対照表等に関する注記(計規103)
8損益計算書に関する注記(計規104)
9株主資本等変動計算書に関する注記(計規105)
10税効果会計に関する注記(計規107)
11リースにより使用する固定資産に関する注記(計規108)
12金融商品に関する注記(計規109)※1
13賃貸等不動産に関する注記(計規110)※1
14持分法損益等に関する注記(計規111)※1
15関連当事者との取引に関する注記(計規112)
161株当たり情報に関する注記(計規113)
17重要な後発事象に関する注記(計規114)
18連結配当規制適用会社に関する注記(計規115)
19その他の注記(計規116)

ア:会計監査人設置会社で有価証券報告書提出会社

イ:会計監査人設置会社でア以外の会社

ウ:会計監査人設置会社以外の公開会社

エ:会計監査人設置会社以外の非公開会社

※1 連結注記表を作成している会社は、個別注記表においては注記を要しません

※2「公開会社」とは会社法2条5号に定義されている、株式に譲渡制限を定めていない会社のことをいいます。

(2) 連結注記表

連結注記表の記載項目は以下のとおりです。

 

項目

1

継続企業の前提に関する注記

2

連結計算書類の作成のための基本となる重要な事項等に関する注記

3

会計方針の変更に関する注記

4

表示方法の変更に関する注記

5

会計上の見積りの変更に関する注記

6

誤謬の訂正に関する注記

7

連結貸借対照表等に関する注記

8

連結株主資本等変動計算書に関する注記

9

金融商品に関する注記

10

賃貸等不動産に関する注記

11

1株当たり情報に関する注記

12

重要な後発事象に関する注記

13

その他の注記

(3) 注記表の作成

会社計算規則57条第3項では、計算関係書類は附属明細書を除き構成するものごとに「一の書面その他の資料として作成をしなければならないものと解してはならない」とされています。これは注記表として一括した表の作成は強制されていないことを示しており、各計算書類の末尾に記載することも認められていると考えられます。
また、計算書類の公告では、注記表の項目のうち一部が省略可能とされています(計規136 条第1項)。なお、有価証券報告書提出会社は計算書類の公告は不要とされています(会440条第4項)。
 

3. 附属明細書

附属明細書は、事業報告に係るものと計算書類に係るものの二つを作成します。事業報告に係る附属明細書については、第3回「事業報告」にて解説しています。

 

計算書類に係る附属明細書の記載内容(計規117)

1

有形固定資産及び無形固定資産の明細

2

引当金の明細

3

販売費及び一般管理費の明細

4

計規第112条Iただし書の規定により省略した事項があるときは、当該事項(会計監査人設置会社以外の株式会社が関連当事者の注記を一部省略した場合)

4. 包括利益計算書及びキャッシュ・フロー計算書

会社法における計算書類と有価証券報告書を比較すると以下のとおりとなります。なお、連結財務諸表を作成しておらず、個別財務諸表のみ作成している会社を前提とします。

 計算書類

有価証券報告書(個別)

貸借対照表

貸借対照表

損益計算書

損益計算書

株主資本等変動計算書

株主資本等変動計算書

注記表

注記

キャッシュ・フロー計算書

また、会社法における連結計算書類と有価証券報告書を比較すると以下のとおりとなります。

連結計算書類

有価証券報告書(連結)

連結貸借対照表

連結貸借対照表

連結損益計算書

連結損益計算書

連結株主資本等変動計算書

連結株主資本等変動計算書

連結注記表

連結注記

連結包括利益計算書

連結キャッシュ・フロー計算書

会社法の計算書類及び連結計算書類においては、キャッシュ・フロー計算書、連結包括利益計算書や連結キャッシュ・フロー計算書(以下「キャッシュ・フロー計算書等」)を作成し開示することまでは求められていません。しかし、会社が、連結計算書類に加えて任意にキャッシュ・フロー計算書等を参考情報として作成し開示することは禁止されていません。なお、任意に参考情報としてキャッシュ・フロー計算書等を作成した場合、これらは会計監査の対象外となります。


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