EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
公認会計士 内川 裕介
公認会計士 武澤 玲子
連結配当規制適用会社とは、ある事業年度の末日が最終事業年度の末日となる時から、当該ある事業年度の次の事業年度の末日が最終事業年度の末日となる時までの間における分配可能額の算定につき、会社計算規則第158条第4項の規定を適用する旨を、当該ある事業年度の計算書類の作成に際して定めた株式会社をいいます(計規第2条第3項51号)。すなわち、単体上の分配可能額よりも連結上の分配可能額の方が少ない場合、分配可能額の算定を連結ベースで算定することができるというものです。連結ベースで分配可能額を算定することにより、子会社でマイナスの利益剰余金を計上している場合には、分配可能額からそのマイナス分を差し引くことができます。
連結配当規制は、強制規定ではなく、任意規定となっています。そのため、連結配当規制の適用を受けるためには、連結配当規制適用会社である旨を個別注記表に記載することが必要です(計規98条第1項18号)。なお、連結ベースで分配可能額を算定することから、連結計算書類を作成することが前提となります。
連結配当規制を適用することで、①子会社間における親会社株式取得の制限がなくなる(会135条第2項5号、施規23条12号)、②債務超過子会社を吸収合併する場合や吸収分割する場合に、株主総会での説明義務がなくなる(会795条第2項1号、施規195条3項、4項)といったメリットがあります。その他、株主や債権者等に対して、より健全な財政状態であることをアピールすることができると考えられます。
連結配当規制適用会社の分配可能額は、単体上の分配可能利益から連結配当規制控除額を差し引いて算定します。
連結配当規制適用会社の分配可能利益=単体上の分配可能利益-連結配当規制控除額
連結配当規制における控除額は以下のように算定します。(計規158条4号)。
連結配当規制控除額=①最終事業年度の末日における貸借対照表の株主資本等の額(※1)-(②最終事業年度末日後に子会社から取得した親会社株式の取得直前の帳簿価額のうち当該子会社に対する持分に相当する額+③最終事業年度の末日における連結貸借対照表の株主資本等の額(※2))
※1 最終事業年度の末日における貸借対照表の株主資本の額+その他有価証券評価差額金(ゼロ以上である場合はゼロ)+土地再評価差額金(ゼロ以上である場合はゼロ)-のれん等調整額
※2 最終事業年度の末日における連結貸借対照表の株主資本の額+その他有価証券評価差額金(ゼロ以上である場合はゼロ)+土地再評価差額金(ゼロ以上である場合はゼロ)-のれん等調整額
単体上の株主資本等の額と、最終事業年度の末日後に取得した親会社株式の額及び連結上の株主資本等の額との差額が、連結配当規制における控除額となります。すなわち、子会社の資本金及び資本剰余金は連結仕訳において相殺消去されるため、通常、資本金及び資本剰余金は単体と連結で同額となります。したがって、単体と連結の差額は、結局、連結と個別の利益剰余金の差額、最終事業年度時点で保有する親会社株式及び最終事業年度後に取得した親会社株式、連結子会社の評価差額(マイナスの場合)となります。
※1 ゼロ以上である場合はゼロ
※2 のれん等調整額が資本金、資本剰余金および利益剰余金の合計額を超えている場合は資本金、資本剰余金および利益準備金の合計額
※3 のれん等調整額が資本金および資本剰余金の合計額を超えている場合は資本金および資本剰余金の合計額
※4 ゼロ未満である場合はゼロ
【具体例】
<前提条件>
①最終事業年度末日の連結貸借対照表、個別貸借対照表、および子会社貸借対照表は以下のとおりとします。
②連結子会社は100%子会社1社とします。
③最終事業年度末日から配当時点までに株主資本等を増減させる行為はないものとします。
会社法(平成26年改正)