EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
以下では、グループ通算制度の概要や実務対応報告第42号の適用初年度の取扱いを中心に説明しています。
従来の連結納税制度は、企業グループ全体を1つの納税主体とする制度であり、各法人の所得金額と欠損金額を合算(損益通算)して計算した連結所得金額に、親法人の適用税率を乗じ、各種税額控除等を行って連結法人税が計算されていました。しかし、連結納税制度については、損益通算等により、単体納税に比べて連結グループ全体の法人税額が減少するというメリットがある一方、税額計算の煩雑さや、誤りが生じた場合にグループ全体の再計算が必要であり、税務調査後の修更正に期間を要するというデメリットが生じていました。
この点、グループ通算制度は、損益通算等のメリットを残しつつ、親法人及び各子法人が法人税の申告を行う個別申告方式となっています。また、原則として修更正による他の法人への影響が遮断される措置がとられています。グループ通算制度の概要は(図表12)のとおりです。
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※「通算税効果額」とは、法人税法26条4項に規定する通算税効果額をいい、損益通算、欠損金の通算及びその他のグループ通算制度に関する法人税法上の規定を適用することにより減少する法人税及び地方法人税の額に相当する金額として、通算会社と他の通算会社との間で授受が行われた場合に益金の額又は損金の額に算入されない金額をいう(実務対応報告第42号5項(10)) (出所:EY新日本有限責任監査法人ウェブサイト 情報センサー 2021年8月・9月合併号「会計情報レポート」<表1>を一部修正) |
実務対応報告第42号は、グループ通算制度を適用する企業の連結財務諸表及び個別財務諸表並びに連結納税制度から単体納税制度に移行する企業の連結財務諸表及び個別財務諸表に適用することとされており(実務対応報告第42号3項本文)、2022年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から原則適用となっています。
連結納税制度とグループ通算制度では、個別申告方式か否かといった申告手続は異なるものの、企業グループの一体性に着目し、完全支配関係にある企業グループ内における損益通算を可能とする基本的な枠組みは同じであるとされています。このため、実務対応報告第42号は、連結納税制度とグループ通算制度の相違点に起因する会計処理及び開示を除き、連結納税制度における実務対応報告第5号等の会計処理及び開示に関する取扱いを踏襲するという基本的な方針により開発されています(実務対応報告第42号40項)。
したがって、基本的に会計処理及び開示に影響するのは、連結納税制度からグループ通算制度に変更されたことによる税務上の影響であると考えられます。
なお、実務対応報告第42号は、通算税効果額の授受を行うことを前提としており、通算税効果額の授受を行わない場合の会計処理及び開示については、連結納税制度における取扱いを踏襲するか否かも含めて取り扱わないこととされています(実務対応報告第42号3項なお書き)。
このため、通算税効果額の授受を行わない場合の会計処理及び開示について、具体的な定めは存在しないことから、過年度遡及会計基準4-3項に定める「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合」に該当することになると考えられるとされています(実務対応報告第42号38項)。したがって、企業として適切な会計処理を検討した上で、財務諸表を作成するための基礎となる事項を財務諸表利用者が理解するために、採用した会計処理の原則及び手続の概要を示すという開示目的に沿って、当該事項を注記する必要があるか検討することになります(過年度遡及会計基準4-2項)。
個別財務諸表における将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性の判断については、実務対応報告第42号に定めのあるものを除き、回収可能性適用指針6項から34項の定めに従うことになります(実務対応報告第42号10項)。
グループ通算制度を適用する場合の個別財務諸表上の繰延税金資産の回収可能性に関しては、連結納税制度における取扱いが踏襲されており、回収可能性の判断にあたっては、以下の点に留意する必要があります。
グループ通算制度の対象となるのは法人税及び地方法人税であり、住民税及び事業税はグループ通算制度の対象ではありません。このため、法人税及び地方法人税と住民税及び事業税とでは、税効果会計における取扱いが異なるため、これらを区別して税効果会計を適用する必要があります(実務対応報告第42号8項)。すなわち、税金の種類ごとに繰延税金資産の回収可能性の判断を行う必要があり、また、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率についても、税金の種類ごとに算定する必要があります(実務対応報告第42号9項)。
繰延税金資産の回収可能性の判断に関する手順は、基本的には単体納税制度における手順(回収可能性適用指針11項)と同様ですが、通算税効果額の影響を考慮する必要があります。すなわち、将来加算一時差異の解消見込額と相殺し切れなかった将来減算一時差異の解消見込額について、まず、通算会社単独の将来の一時差異等加減算前通算前所得の見積額と解消見込年度ごとに相殺し、その後に、損益通算による益金算入見積額(当該年度の一時差異等加減算前通算前所得の見積額がマイナスの場合には、マイナスの見積額に充当後)と解消見込年度ごとに相殺することになります(実務対応報告第42号11項(1))。
以下の【設例】において、S1社については、一時差異等加減算前通算前所得の見積額が△350であり、S1社単独の一時差異等加減算前通算前所得では将来減算一時差異100と相殺することができません。しかし、S1社の通算前所得△450が損益通算によりP社及びS2社に配分されるとともに、S1社では損益通算による益金算入450が見込まれます。損益通算による益金算入見積額450について、S1社の一時差異等加減算前通算前所得の見積額△350に充当した後の残高100により、将来減算一時差異と相殺することが可能であるため、S1社の個別財務諸表において、将来減算一時差異100は回収可能であると判断されることになります。
回収可能性を判断する際の企業の分類については、単体納税制度における考え方(回収可能性適用指針15項から32項)が基礎となりますが、「通算グループ内のすべての納税申告書の作成主体を 1つに束ねた単位(通算グループ全体)の分類」と「通算会社の分類」をそれぞれ判定し、「いずれか上位の分類」に応じて将来減算一時差異に係る回収可能性の判断を行うことになります(実務対応報告第42号13項(1)、(2))。
「通算会社の分類」の判定は、従来の単体納税制度における分類の判定と同様ですが、損益通算や欠損金の通算を考慮せず、自社の通算前所得又は通算前欠損金に基づいて判定する点に留意が必要です(実務対応報告第42号13項(1))。一方、「通算グループ全体の分類」の判定においては、「一時差異等」や「課税所得」、「税務上の欠損金」、「一時差異等加減算前課税所得」等の通算会社ごとに生じる項目は、その合計が通算グループ全体で生じるものとして取り扱い、企業の分類の判定を行うことになります(実務対応報告第42号17項)。
なお、「通算グループ全体の分類」と「通算会社の分類」のいずれか上位の分類に応じて回収可能性を判断する取扱いは、あくまで、グループ通算制度の対象となる法人税及び地方法人税に係る部分についてのみである点に留意が必要です。
以上をまとめると、将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性を判断する際の企業の分類は、(図表13)のとおりとなります。
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グループ通算制度には、「特定繰越欠損金」と「特定繰越欠損金以外の繰越欠損金」の2種類の繰越欠損金があります。
「特定繰越欠損金」は、単体納税時に発生した繰越欠損金のうち、主に、グループ通算制度の開始時や新規加入時において、一定の要件を満たす場合にグループ通算制度に持ち込むことが認められたものをいい、自社の所得に対してのみ控除可能です。一方、「特定繰越欠損金以外の繰越欠損金」は、グループ通算制度開始後に生じた繰越欠損金であり、通算グループ内の他の法人の所得金額から控除可能です。なお、経過措置として、連結納税制度からグループ通算制度に移行する法人における非特定連結欠損金は、グループ通算制度において「特定繰越欠損金以外の繰越欠損金」として、通算グループ内で控除することができます。
これらの繰越欠損金は以下の順序で控除されます。
① 発生年度の古い順に控除
② 同じ発生年度の「特定繰越欠損金」と「特定繰越欠損金以外の繰越欠損金」がある場合は、特定繰越欠損金を先に控除
税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性の判断に関しても、連結納税制度における取扱いが踏襲されており(実務対応報告第42号51項)、「特定繰越欠損金」と「特定繰越欠損金以外の繰越欠損金」ごとに、その繰越期間にわたって、将来の課税所得の見積額(税務上の繰越欠損金控除前)に基づき、税務上の繰越欠損金の控除見込年度ごとに損金算入限度額計算及び翌期繰越欠損金額の算定手続に従って損金算入のスケジューリングを行い、回収が見込まれる金額を繰延税金資産として計上することとされています(実務対応報告第42号12項)。
特定繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性は、税務上認められる繰戻・繰越期間内における当該通算会社の課税所得の見積額(税務上の繰越欠損金控除前)と通算グループ全体の課税所得の見積額の合計(税務上の繰越欠損金控除前)のうち、いずれか小さい額を限度に、当該各事業年度における特定繰越欠損金の繰越控除額を見積ることにより判断します(実務対応報告第42号[設例3] 2(*1)参照)。
回収可能性の判断において、「特定繰越欠損金以外の繰越欠損金」については通算グループ全体の分類に応じた判断を行うこととされています。また、「特定繰越欠損金」については、損金算入限度額計算における課税所得ごとに、通算グループ全体の課税所得は通算グループ全体の分類に応じた判断を行い、通算会社の課税所得は通算会社の分類に応じた判断を行うこととされています(実務対応報告第42号13項(3))。
グループ通算制度においては、各通算会社が納税申告を行いますが、企業グループの一体性に着目し、完全支配関係にある企業グループ内における損益通算を可能とする基本的な枠組みは連結納税制度と同様であるとされており、グループ通算制度を適用する通算グループ全体が「課税される単位」となると考えられます。このため、連結納税制度における取扱いを踏襲し、連結財務諸表においては、通算グループ全体(通算グループ内のすべての納税申告書の作成主体を1つに束ねた単位)に対して、税効果会計を適用することとされており(実務対応報告第42号47項)、連結財務諸表における繰延税金資産は、通算会社の個別財務諸表における計上額を単に合計したものではなく、通算グループ全体として、繰延税金資産の回収可能性の判断に関する手順に基づき計上する必要があります。
通算グループ全体について、繰延税金資産の回収可能性の判断を行うにあたっては、回収可能性適用指針11項の、「将来減算一時差異」は「通算グループ全体の将来減算一時差異の合計」と、「将来加算一時差異」は「通算グループ全体の将来加算一時差異の合計」と、「一時差異等加減算前課税所得の見積額」は「通算グループ全体の一時差異等加減算前課税所得の見積額の合計」と読み替えた上で、回収可能性の判断を行うこととされています(実務対応報告第42号15項)。
具体的には、Q13【設例】であれば、通算グループ全体の将来減算一時差異900に対して、通算グループ全体の一時差異等加減算前課税所得の見積額の合計が900のため、全額が回収可能と判断されます。
なお、「特定繰越欠損金」と「特定繰越欠損金以外の繰越欠損金」とに分けて、損金算入のスケジューリングを行い、回収が見込まれる金額を繰延税金資産として計上する点は、個別財務諸表上の取扱いと同様です(実務対応報告第42号16項)。
また、通算グループ全体について回収可能性があると判断された繰延税金資産の金額と、各通算会社の個別財務諸表において計上された繰延税金資産の合計額との差額については、連結上修正することとなります(実務対応報告第42号14項)。例えば、「通算グループ全体の分類」よりも「通算会社の分類」の方が上位であるため、個別財務諸表において「通算会社の分類」に基づき繰延税金資産の回収可能性の判断を行っている場合、連結財務諸表上は「通算グループ全体の分類」に基づき繰延税金資産の回収可能性の判断を行うことから、個別財務諸表において計上した繰延税金資産の合計額との差額が生じ、連結財務諸表上修正(個別財務諸表で計上された繰延税金資産の一部取崩し)が必要となる可能性があります。
実務対応報告第42号に定めのあるものを除き、法人税及び地方法人税に関する表示は、法人税等会計基準の定めに従うこととされています(実務対応報告第42号24項)。したがって、グループ通算制度を適用する場合でも、税法の規定に従い算定した法人税及び地方法人税の金額を「法人税、住民税及び事業税」などその内容を示す科目をもって各通算会社の損益計算書に表示します(法人税等会計基準9項)。また、納付されていない税額は、「未払法人税等」などその内容を示す科目をもって各通算会社の貸借対照表に表示することとなります(法人税等会計基準11項)。この点、個別申告方式であるグループ通算制度では、各通算会社が納税義務を負っているため、各通算会社の個別貸借対照表で「未払法人税等」が計上される点が、連結納税制度とは異なります。
また、通算税効果額に係る債権及び債務は、通算会社間の債権債務関係であるため、「未収還付法人税等」や「未払法人税等」ではなく、未収入金や未払金に含めて貸借対照表に表示することとされています(実務対応報告第42号25項)。
注1 2022年10月28日に法人税等会計基準が改正されており、これにあわせて実務対応報告第42号も一部改正されている。本資料は、改正前の実務対応報告第42号に基づいて作成している。
個別財務諸表においては、税効果会計基準等の定めに従って、同一納税主体の繰延税金資産と繰延税金負債は双方を相殺して表示し、異なる納税主体の繰延税金資産と繰延税金負債は双方を相殺せずに表示することとされています(実務対応報告第42号26項、59項)。
連結財務諸表においては、通算グループ全体に対して税効果会計を適用することとしていることから、法人税及び地方法人税に係る繰延税金資産及び繰延税金負債については、通算グループ全体の繰延税金資産の合計と繰延税金負債の合計を相殺して表示することとされています(実務対応報告第42号27項、60項)。
グループ通算制度の適用により、実務対応報告第42号に従って法人税及び地方法人税の会計処理又はこれらに関する税効果会計の会計処理を行っている場合には、その旨を税効果会計に関する注記の内容とあわせて注記することとされています(実務対応報告第42号28項)。
連結財務諸表及び個別財務諸表における以下の注記は、法人税及び地方法人税と住民税及び事業税を区分せずに、これらの税金全体で注記することとされています(実務対応報告第42号29項)。
2022年8月26日に、企業会計基準委員会(ASBJ)から、実務対応報告第43号が公表されています。
2019年5月に成立した「情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律」(令和元年法律第28号)により、金融商品取引法が改正され、いわゆる投資性ICO(Initial Coin Offering(注2))は金融商品取引法の規制対象とされ、各種規定の整備が行われました。
具体的には、これまで流通する蓋然性が低いものとされ、第二項有価証券として分類されてきた金融商品取引法2条2項各号に規定される信託受益権、民法上の任意組合契約に基づく権利、投資事業有限責任組合契約に基づく権利等(以下「集団投資スキーム持分等」という。)について、電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示される場合、株式等と同様に事実上流通し得ることを踏まえ、「電子記録移転権利」と定義し、規制が課されています。
また、2020年5月に改正施行された金融商品取引業等に関する内閣府令(以下「金商業等府令」という。)において「電子記録移転権利」よりも広い概念である「電子記録移転有価証券表示権利等」が定められました。これは、集団投資スキーム持分等を含む、金融商品取引法2条2項に規定されるみなし有価証券のうち、電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示される場合に該当するものであり、株式や社債などの有価証券表示権利も、電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示されるものとして含まれることになりました。
こうした状況を踏まえ、ASBJにおいて、金商業等府令における「電子記録移転有価証券表示権利等」の発行・保有等に係る会計上の取扱いの検討が行われ、実務対応報告第43号が公表されました。
注2 明確な定義はないが、一般に、企業等がトークン(電子的な記録・記号)と呼ばれるものを電子的に発行して、公衆から法定通貨や仮想通貨の調達を行う行為の総称するもの(「仮想通貨交換業等に関する研究会」報告書(金融庁2018年12月))
実務対応報告第43号は、「株式会社」が、金商業等府令1条4項17号に規定される「電子記録移転有価証券表示権利等」を発行又は保有する場合の会計処理及び開示を対象としています(実務対応報告第43号2項)。
(電子記録移転有価証券表示権利等)
金商業等府令1条4項17号に規定される権利をいい、金融商品取引法2条2項の規定により有価証券とみなされる権利(以下「みなし有価証券」という。)のうち、電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示される場合に該当するもの
電子記録移転有価証券表示権利等は、その発行及び保有がいわゆるブロックチェーン技術等を用いて行われる点を除けば、従来のみなし有価証券(電子記録移転有価証券表示権利等に該当しないみなし有価証券を指す。以下同じ。)と権利の内容は同一と考えられるため、実務対応報告第43号では、電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理は、基本的に従来のみなし有価証券を発行及び保有する場合の会計処理((図表14)参考)と同様に取り扱うこととされています。
具体的には、金融商品会計基準等上の有価証券に該当する電子記録移転有価証券表示権利等の発生及び消滅の認識については、別途の定めが置かれており、金融商品会計基準が定める原則(金融商品会計基準7項から9項及び金融商品実務指針)に従って行うこととされますが、その売買契約について、契約を締結した時点から電子記録移転有価証券表示権利等が移転した時点までの期間が短期間である場合に限り、契約を締結した時点において認識することとされています(実務対応報告第43号8項)。
その他、実務対応報告第43号における会計処理及び開示の概要は、(図表15)の通りです。
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電子記録移転有価証券表示権利等を発行又は保有する場合の表示方法及び注記事項は、みなし有価証券が電子記録移転有価証券表示権利等に該当しない場合に求められる表示方法及び注記事項と同様とすることとされています(実務対応報告第43号11項、12項)。
適用時期については、(図表16)のとおり、2023年4月1日以後開始する事業年度の期首から原則適用となります。また、実務対応報告第43号の公表日(2022年8月26日)以後終了する事業年度及び四半期会計期間から早期適用することが認められています。
原則適用 |
2023年4月1日以後開始する事業年度の期首から |
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早期適用 |
実務対応報告第43号の公表日以後終了する事業年度及び四半期会計期間から |
電子記録移転有価証券表示権利等は、今後どのように取引が発展していくかは現時点では予測することが困難であるため、一部の論点については実務対応報告第43号では取り扱わないこととしています(「資金決済法上の暗号資産又は金融商品取引法上の電子記録移転権利に該当するICOトークンの発行及び保有に係る会計処理に関する論点の整理」のポイント)
(実務対応報告第43号で取り扱わないこととした論点)
経済協力開発機構(OECD)は、かねてより、近年のグローバルなビジネスモデルの構造変化により生じた多国籍企業の活動実態と各国の税制や国際課税ルールとの間のずれを利用することで、多国籍企業がその課税所得を人為的に操作し、課税逃れを行っている問題(BEPS)への対処に取り組んでいましたが、2021年になり、OECD/G20の「BEPS包摂的枠組み」における国際的合意のうち、グローバル・ミニマム課税(第2の柱)における所得合算ルール(Income Inclusion Rule、IIR)が、我が国において導入されることとなりました。
グローバル・ミニマム課税における所得合算ルールとは、国際的に最低限の実効税率(15%)を定めた上で、それを下回る国(=軽課税国)における最低税率での課税を確保するべく、親会社所在地国が、親会社に対して、子会社の最低税率に至るまで課税(トップアップ課税)するルールです((図表17)参照)。
令和5年度税制改正において、グローバル・ミニマム課税に対応する法人税が創設され、それに係る規定(以下「グローバル・ミニマム課税制度」という。)を含めた改正法人税法(案)が国会に提出され、2022年3月末までに成立する見込みです。当該改正法人税法(案)では、基本的に、年間総収入金額が7.5億ユーロ以上の多国籍企業を対象として、一定の適用除外を除く所得について最低税率15%の課税が確保されるように制度化をすることとされています。
なお、グローバル・ミニマム課税制度を含む令和5年度税制改正の詳細については、EY税理士法人セミナー「2023 Japan Tax Update:令和5年度税制改正大綱の解説および最近の税務トピックス 第2部:BEPS2.0最新情報と実務対応」をご参照ください。
繰延税金資産及び繰延税金負債の額は、決算日において国会で成立している税法に規定されている方法に基づいて将来の会計期間における減額税金又は増額税金の見積額を計算することとされています(税効果適用指針44項)。
このため、既に国会に提出されているグローバル・ミニマム課税制度を含む改正法人税法(案)が2023年3月31日までに成立した場合、グローバル・ミニマム課税制度の適用(2024年4月1日以後開始する事業年度から適用)が見込まれる3月決算企業は、年度末決算においてグローバル・ミニマム課税制度を前提として、本来は、当該制度が税効果会計へ与える影響を検討する必要があります。
税効果会計は利益に関連する金額を課税標準とする税金を対象として認識するものですが、グローバル・ミニマム課税制度に基づいた基準税率(15%)までの上乗せ税額(以下「上乗せ税額」という。)は、親会社等がその所在地国の税務当局に支払うものであるため、課税の源泉となる純所得(利益)が生じる企業と納税義務が生じる企業とが相違することとなり、税効果会計を適用すべきかが明らかではないと考えられます。また、仮に税効果会計を適用するとした場合、グローバル・ミニマム課税制度に基づく税効果会計の会計処理に関して、以下の点が明らかではないと考えられます。
① グローバル・ミニマム課税制度の適用によって、企業が、既存の税法の下で認識した繰延税金資産又は繰延税金負債を見直す必要があるかどうか
② 上乗せ税額を加味すると、税効果会計に使用する税率がどのような影響を受けるか
③ グローバル・ミニマム課税制度に基づき、追加的な一時差異を認識すべきかどうか
これらに加えて、実務上の負担も想定されます。
以上より、改正法人税法の成立日以後に終了する事業年度の決算(四半期決算を含む。)において、改正法人税法の適用を前提とした税効果会計を適用することは困難と考えられます。このため、当面の間、必要と考えられる取扱いを示すために、企業会計基準委員会(ASBJ)より実務対応報告公開草案第64号「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)」が公表されました。
実務対応報告公開草案第64号では、グローバル・ミニマム課税制度の適用を前提とした税効果会計を適用することは困難であることから、当面の間、改正法人税法の成立日以後に終了する事業年度の決算(四半期決算を含む。)における税効果会計の適用にあたっては、税効果適用指針にかかわらず、グローバル・ミニマム課税制度の影響を反映しないことが提案されています。
また、(2)に記載のとおり、グローバル・ミニマム課税制度を前提とした税効果会計については、現行の枠組みにおいて適用すべきか否かが明らかではないと考えられることを踏まえて、企業間の比較可能性等の観点から、グローバル・ミニマム課税制度を前提として税効果会計を適用するといった原則的な取扱いの適用を認めず、当該特例的な取扱いを一律に適用することが提案されています。
なお、当該特例的な取扱いは、グローバル・ミニマム課税制度の具体的な内容やグローバル・ミニマム課税制度の適用を前提として税効果会計を適用すべきかどうかが今後明らかになるまでの当面の取扱いであるため、特例的な取扱いを適用する期間は、ASBJが本実務対応報告の適用を終了するまでの間とされています。