1. ESG
気候変動の影響が続く中、経済のあらゆる分野で持続可能な活動の必要性が高まっています。このことは、環境負荷を削減しながら、持続可能な製品やサービスを生み出すことができる企業にビジネスチャンスをもたらします。
オーストラリア政府は、2050年までに温室効果ガスの排出量ゼロを目指す「長期排出量削減計画」を発表しました※4。この計画の一環として、政府は、水素や二酸化炭素の回収・貯蔵などの新技術を支援し、再生可能エネルギーへの投資を行う予定です。石炭や石油製品など、一部の部門はこの計画のもとでの現在の成長に苦戦していますが多くのメーカーがネットゼロの未来に向けて積極的に取り組みを進めています。
二酸化炭素排出量の削減は、経営陣・取締役会の優先事項となっており、企業は二酸化炭素排出量のモニタリングと削減に投資しています。
2. デジタルトランスフォーメーション
デジタル経済は急速に成長しており、デジタル技術は私たちの働き方、生活、ビジネスの在り方を変えています。この傾向は、多くの産業でイノベーションと生産性を促進しますが、同時に企業・労働者には新しいスキルや職務に適応しなければならない挑戦となります。例えば、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックによって、製造業では自動化、人工知能、産業用モノのインターネット(IIoT)などのデジタル技術の導入が加速しています。この傾向は今後も続くと予想され、製造業者は効率性の向上、コスト削減、変化に対処する能力向上を図る方法を模索しています。このようなニーズには、包括的な計画ツールや製造実行システム(MES)の導入などの計画や実行の可視化・システム化を通して取り組みが進んでいます。
また前述のESGのネットゼロ計画要件は、デジタル化の必要性をさらに高めています。スコープ1、2、3※5による包括的な炭素排出量を追跡する必要性から、製造業者はセンシング・ブロックチェーン技術を導入し、それぞれの製造工程からの排出を測定、監視、報告をする一貫した枠組みが必要となりつつあります。
3. リショアリング
新型コロナウイルス感染症によるパンデミックは、国際的なサプライチェーンに依存することの危険性を浮き彫りにしました。この経験から製造工程を国内回帰させる動きが出てくることが予想されます。この傾向は、国内生産能力の向上と新しいサプライチェーンモデルの構築をもたらす可能性があります。サプライチェーンの安定性、適応力、柔軟性の高さが重要であることがパンデミックにより明確になりました。この動きには、モジュール式製造システムの採用、柔軟なサプライチェーンの開発、そしてこれらを可能にする意思決定を高めるデータ分析の活用が含まれます。
4. 政策と貿易環境
オーストラリア政府は、製造業を雇用の維持と経済の付加価値を高めるための重要な産業分野と認識しています。2020年、オーストラリア連邦政府は、13億豪ドルの補助金を投入し、次の6つの優先分野を支援する「近代製造イニシアチブ(Modern Manufacturing Initiative※6:MMI)」を発表しました。
① 宇宙(スペース)
② 医療用製品
③ 資源技術や重要鉱物の加工
④ 食品・飲料
⑤ 防衛
⑥ リサイクルとクリーンエネルギー
2022年、連邦選挙が行われ、自由党から労働党への政権交代が起きました。政権交代と新政府の前政権に対する厳しい査定にもかかわらず、MMIは事業仕分けを乗り切り、新政権の下でも継続しています※7。
さらに、オーストラリアと日本は強固な二国間および多国間の貿易協定を結んでいます。2015年1月15日から発効した日豪経済連携協定(JAEPA)により、オーストラリアの輸出業者は商品とサービスの市場参入を大幅に拡大し、投資保護を大幅に向上させました。オーストラリアと日本は「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)」の加盟国であり、「地域包括的経済連携(RCEP)」の締約国でもあります。日本は、オーストラリア政府が頻繁に貿易交渉に参加し、貿易協定の運用の見直しを行う数少ない特別な国の1つであり、堅調な貿易・投資関係を下支えしています※8。