EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
大型案件や株価パフォーマンスの動向から、投資家のマインドと市場の役割が見えてくる
藤原 続いて大型案件のIPOについても見ていきましょう。2022年は大型案件の延期が相次ぎました。IPOの件数のうち、公開価格ベースの時価総額300億円未満が9割を占め、特に100億円未満が約7割と大型案件が少なかった印象があります。大型案件で行われるグローバルオファリングは、前年比1社減の4社でした。海外機関投資家などから調達する旧臨時報告書方式も15社で、前年比12社減と激減しており、それに呼応してか、上場承認の取り消しが22年は9社と前年の5社から倍増しました。大型案件を巡るこうした傾向へのご見解を聞かせていただけますか。
小沼氏 これは大型の発行企業の存在と、市況に影響される海外投資家とのバランスの問題でしょう。今後タイミングを見計らって良い案件が出てくる可能性が極めて高いと見ています。22年は海外機関投資家の間でリスクオフのモードが広がっていましたが、それが長く続くとは限りません。全体としてはスタートアップへの投資により、次の社会の推進に期待しようというムードはグローバルに広がっています。
藤原 国内機関投資家はいかがでしょうか。
小沼氏 国内では大手機関投資家が、流動性の高い銘柄でないとなかなか投資できないという雰囲気が伝統的にありましたが、伸び代はスタートアップや中堅企業にあるという認識も確実に広がっています。東証としては、ぜひ投資家の方々にはこうした企業をしっかりとリサーチしていただき、積極的な投資をお願いしたいですね。
藤原 スタートアップの赤字上場の傾向についても考察したいと思います。22年は赤字上場が9社と、前年の13社から4社減でした。ただし20年は8社でしたから、元の水準に戻ったとも言えます。また上期が1社だけだったのに、下期に8社と増えました。特に特徴的なのは市場の目が成長性だけでなく、収益性も重視し、企業の業績を見る目が極めて厳しくなっているということでしょう。こうした赤字上場の傾向についてご意見はありますか。
小沼氏 数年前に比べて、赤字上場に対する投資家の視野は確実に広がっています。リスクオフのムードの中でも、海外を含めた投資家が赤字の背景や要因を基に、将来どのようになっていくのかというポテンシャルを、しっかり見極めるようになってきたという印象を抱いています。特に技術の評価が難しいディープテックの企業などは、私たちも投資家の目利きを参考にしながら、より良い上場のプロセスを考えていきたいと思っています。