EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
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資産運用会社が自問すべき問いは、以下の5つです。
- ニーズをきちんと把握できない可能性のある女性相続人らをサポートできるか。
- 若い世代の相続人の差し迫ったニーズや選好、価値観を把握しているか。
- フロントオフィスは、この複雑でデリケートなトピックにうまく対応できるか。
- 群を抜いた存在となり、他と一線を画した価値提案をする事業者と認識されるにはどうすればいいのか。
- 資産を維持すると同時に、競合他社からの資産流入を獲得する戦略が自社にはあるか。
自らの答えに確信が持てない資産運用会社は、被相続人と相続人のニーズを中心に据え、遺産に焦点を当てた魅力的な価値提案の構築に向け、今すぐ行動を起こさなければなりません。とはいえ、当社の経験から言うと、このような変革に着手することができるのか、自社の能力に自信の持てない事業者が多いようです。
このギャップを埋めるには、相続の課題に焦点を絞った、カスタムメイドの戦略とオペレーティングモデルが必要です。こうした体系的なアプローチでは、資産の世代間移転への対処に有効であることが実証されている対応策を利用します。このアプローチの最も顕著な特徴は、以下のように4つに大別できます。
1. 相続に関する対応方針を変える
相続についての会話は、クライアントに、不安ではなく心の平和をもたらすものでなければなりません。相続に関わる方針の変更は不可欠であり、またどの事業者も実現できるはずです。
資産運用会社は、話し合いの内容を、否定的な意味合いを持つ場合もある「相続」から、家族を守ることや家族の遺産(レガシー)、家庭の理念へと変える必要があります。健康問題が生じた場合に資産を保全し、家族を守ることについての会話は有益な第一歩となり、移転計画や相続アドバイスに関わる、その後の話し合いにつながるかもしれません。
被相続人が理想とする資産のあり方を明確に把握することが、そのクライアントとの会話の中心に常に家族を据え、被相続人の個人的、職業的、場合によっては慈善活動関連の遺産(レガシー)を守ることに明確に重点を置く一助になると考えられます。
2. 女性相続人と若い世代の相続人を理解する
被相続人と相続人のニーズや価値観、選好の違いを把握することが不可欠です。若い世代のデジタル機能への関心をよりどころにするなど、単純すぎる前提は通用しません。
クライアントは千差万別です。しかし、裕福な被相続人の多くに共通する特徴があります。その大半は70歳以上の男性で、好況の恩恵を何十年にもわたり受けており、資産運用会社と長く付き合ってきた人たちです。これとは対照的に、相続人のニーズと価値観、そして銀行などとの関係は、はるかに多様であり、また未開拓の領域です。
第一相続人は女性であることが多く、それまで資産運用に触れることがあまりなかった人が少なくありません。これは、男性の第一相続人に比べ、これまでそのニーズと選好に十分な対応がなされてこなかったクライアントセグメントだからです。若い世代もまた、概して、高齢の被相続人とは目指す目標が大きく異なります。その要因は、裕福な家族の国際化や伝統的な家族構成の崩れ、金融リテラシーの低下、投資に対する考え方の多様化などです5。
3. 現場に権限を与える
リレーションシップマネージャー(営業を主体とする運用担当者)が、先を見越したクライアントエンゲージメントに必要なスキルとリソースを備え、かつ、こうしたクライアントエンゲージメントに意欲的に取り組むよう促すことを最優先課題とすべきです。それに特化した研修と、人工知能を活用したアドバイザーのコパイロットが、自信の醸成とエンゲージメントの拡大に役立ちます。リレーションシップマネージャーは今後、ファミリーガバナンスや相続税、生命保険、信託法、慈善活動などの分野の専門家にアクセスする必要も出てくるでしょう。
資産運用会社は、早い段階で相続人とも向き合うべきです。先を見越したクライアントとの関係強化で、クライアントエンゲージメントとクライアント教育の下地を作ることができます。加えて、サステナビリティやデジタル資産、オルタナティブ投資、投資一任勘定などの領域の需要が今後高まることを予期しておくべきです。
もう⼀つの重要なステップは、相続後の財産の価値を高めることを⽬的とした戦術的施策に基づくポートフォリオの策定です。戦術的施策として考えられるのは、⽬標に基づいた家族の資産の配分、多世代にわたるクライアントの確保、第⼀世代と第⼆世代のコミュニティの管理と教育、リレーションシップマネージャー用のマニュアルの策定などです。