COSOフレームワークの活用によるサステナビリティ報告における効果的な内部統制の実現

COSOフレームワークの活用によるサステナビリティ報告における効果的な内部統制の実現



COSOが発行した新たなガイダンスは、サステナビリティ報告におけるCOSOフレームワークの適用の一助となります。


要点

  • COSO(米国トレッドウェイ委員会支援組織委員会)がサステナブル報告における有効な内部統制を構築するためのガイドラインを公表した。
  • COSOフレームワークを活用することで、サステナビリティ関連情報に関する有効な内部統制の構築が可能となる。
  • 財務報告とは異なるサステナビリティ関連情報の特徴である、情報の収集範囲や経営者の判断や見積もりが多く含まれる点などに適切に対応することが肝要である。

2023年3月、米国トレッドウェイ委員会支援組織委員会(COSO)は、サステナビリティ報告における有効な内部統制を構築するためのガイドライン “Achieving Effective Internal Control over Sustainability Reporting (ICSR): Building Trust and Confidence through the COSO Internal Control―Integrated Framework”を公表しました。

出典:COSO Releases New (ICSR) Supplemental Guidance, coso.org/_files/ugd/3059fc_a3a66be7a48c47e1a285cef0b1f64c92.pdf(2023年8月17日アクセス)

このガイダンスでは、サステナビリティ関連情報に関する有効な内部統制の確立・維持に関する重要な論点を紹介しています。また、現状、サステナビリティ報告における内部統制は、十分に確立されていない状況ではあるものの、先導している企業の事例から得られる重要なインサイトについて説明をしています。そして、SECをはじめとする規制当局が気候関連の開示を義務付けた際に、企業が各種報告に対する統制の整備や、統制の有効性の向上に資することを目的としています。


COSOフレームワークの概要とサステナビリティ報告における適用例

COSOフレームワークは、米国をはじめ広く国際的に利用されている内部統制の基本的な考え方です。COSOフレームワークは、外部報告のみならず、経営管理に活用される情報の内部統制、監督、ガバナンスに関するゴールドスタンダードとして現在まで存続しています。

図1:COSOフレームワークの概要とサステナビリティ報告における適用例

財務報告とサステナビリティ報告の相違点

サステナブル関連の情報に対するニーズは着実に高まっているものの、社内外のステークホルダーが、現在入手できる情報の信頼性、有用性、品質について、財務データと同等の信頼性を持っていない場合が多く見られます。これは、サステナブル関連の情報が財務報告とは性質が異なることが一つの要因となっています。

図2:財務報告とサステナビリティ報告の相違点

サステナビリティ報告に係る効果的な内部統制の実現における留意点

効果的な内部統制を構築するにあたり、COSOフレームワークを活用することは非常に有用です。特に、内部統制に関する知見が蓄積されている財務報告領域の社内外の専門家を活用することで、効率的な導入につながります。

一方で、財務報告とは異なる点に対する適切な対応が新たに求められます。例えば以下の点については特に留意が必要であり、早期に検討が必要であると考えられます。

① 基準・規制動向等の適切な把握

基準・規制が安定している財務報告と異なり、サステナビリティ報告に対する基準・規制は発展途上にあり、今後も継続的に変化することが見込まれます。各規制当局や基準設定機関の動向を把握するだけでなく、サステナビリティ関連の論点について把握し自社への影響を検討することで、基準・規制に先んじて対応することが可能です。

 

② 第三者データの信頼性確保に向けた検討

サステナビリティ報告の特徴の一つに、第三者データへの依存が挙げられます。財務報告の対象となる子会社や関連会社とは異なる第三者のデータを使用する必要があります。サステナビリティ報告の作成者や保証提供者にとって、第三者データに対する信頼性が論点になることが想定されます。すでに、自社での検討のみならず、業界等の複数企業間での検討を行っている事例が見受けられます。

 

③ 有効なITシステムの導入検討

財務報告と比べ、サステナビリティ報告においては洗練されたITシステムが確立されていない状況です。一方で、サステナビリティ報告においても財務報告と同様に多種多様なデータを扱っており、データの信頼性やトレーサビリティの観点から表計算ソフトでの対応にはいずれ限界が来ることが予想されます。したがって、早い段階からITシステムの導入について検討を行い、必要に応じてITベンダーと共同で開発することも有効であると考えられます。有効なITシステムは、報告プロセスの効率化や堅確化だけでなく、サステナビリティ戦略の立案や評価に活用可能な分析に資することが考えられます。


サマリー

サステナビリティ報告の信頼性に対する要求が高まっています。COSOフレームワーク・ガイダンスを活用することで、効果的な内部統制の構築が可能です。財務領域に蓄積された知見を活用するとともに、情報の収集範囲をはじめとする、サステナビリティ報告の性質を踏まえた適切な対応が肝要です。


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