田中氏:「グループ各社の担当部署にメールでデータ提供を依頼し、指標ごとに異なるフォーマットで収集している状況でした。特にCO2排出量は、エネルギー使用量など複数のデータから集計しなければならず、時間がかかります。取締役会への実績報告には、準備に3カ月ほどかかっており、モニタリングやPDCAサイクルが十分に機能していませんでした」
コスモエネルギーホールディングスでは、中長期的に重要なESG課題(マテリアリティ)8項目を明示し、それぞれに細かくKPIを設定しています。サステナビリティ戦略会議では、各KPIの進捗状況を踏まえて次のアクションを討議しているため、データの依頼、収集、集計を効率化することは、喫緊の課題でした。同社は非財務情報管理システムの構築にあたり、複数社に提案を依頼。その中でEYをパートナーに選び、2022年よりEYとの連携が始まっています。
戦略策定からシステム導入・データの利活用支援までEYがサステナビリティ施策全体をサポート
田中氏:「EYには最適な提案に向けて当社の業務内容を深く理解しようとする姿勢があり、手厚いサポートに期待しました。また、システムの運用方法が明確に定まっていない中でしたが、導入したシステムは全事業所に連携して長期的に使用したかったので、スクラッチ開発でのシステム構築は避けたいと考えており、汎用(はんよう)性のあるマイクロソフトのプラットフォーム(Microsoft Sustainability Manager)を提案いただいたことも大きかったです。特定の数値の算定に特化したシステムは、使い勝手が良い一方で、拡張性がありません。将来的に分析に活用する際にシステムを改造したいと考える可能性もあるため、数年後にも対応できるシステムなのか、という点も重要なポイントでした。今後の社会的ニーズにも対応できる柔軟なEYのご提案が、今回のソリューションとして最適と考えました」
コスモエネルギーホールディングスとEYはまず、各事業所の現場でヒアリングを実施。データの収集・算出方法をシミュレーションすることで、製造、輸送、販売に至る各工程の情報収集方法を、1つずつひもといていきます。
田中氏:「拠点ごとにデータの集計方法も異なるため、私たち自身も全体像を把握できていませんでしたが、EYのヒアリング対応によって全体の把握にもつながりました。また、今回のシステム化は、非財務情報収集の効率化だけでなく、経年変化や指標間の相関といった分析も大きな目的です。KPI進捗のモニタリングにおいては、ダッシュボードなどによりわかりやすく可視化することで、目標達成度を高めたいとも考えていました。そのためには、データが1カ所に集約されていなければなりません。複雑なデータを一元的に管理することが、本プロジェクトの要だったのです」