有効なガバナンスでサステナビリティの価値を引き出すには
有 効 な ガ バ ナ ン ス で サ ス テ ナ ビ リ テ ィ の 価 値 を 引 き 出 す に は
執筆者
Julie Teigland
EY EMEIA Area Managing Partner; EY Global Leader, Women. Fast forward
Andrew Hobbs
EY EMEIA Center for Board Matters Leader, EMEIA Public Policy Leader
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EY Europe Long-Term Value and Corporate Governance Survey 2023 (pdf) (PDF)
EYのEurope Long-Term Value and Corporate Governance Survey 2023の結果から、ガバナンスの強化が、サステナビリティへの取り組みを加速させることが分かりました。
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要点
新たな調査の結果から、サステナビリティへの取り組みの目標を具体的な成果につなげるには、有効なガバナンスと取締役会の監督機能が不可欠であることが分かった。 短期的な優先課題と長期的な優先課題との間の綱引きにうまく対応できるかどうかが鍵を握っており、企業はサステナビリティガバナンス改革の道のりが長いことを認識している。 取締役会の力のバランス、報酬、報告にフォーカスすることで、体系的かつ説明責任を果たすことのできる信頼のおけるサステナビリティへのアプローチを実現できる。
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世界が直面するサステナビリティの課題への対処には一刻の猶予もありません。コーポレートサステナビリティという概念が生まれたのは1980年代後半のことです。しかし、世界各国の組織はいまだに、地球温暖化や現代奴隷などの問題で目に見える成果を挙げられずにいます。社会はこの取り組みをリードする役割を企業に任せていますが、有意義な成果を挙げるのであれば、企業はコーポレートサステナビリティに対する自社のアプローチを劇的に変える必要があります。
年に1回発表しているEYのEurope Long-Term Value and Corporate Governance Surveyの第3版では、200名のシニアリーダーから意見を聞き、コーポレートガバナンスがどのような進化を遂げ、サステナビリティを自社の戦略や長期的価値へのアプローチに組み込むようになってきているかを調べました。その結果、サステナビリティへの取り組みの目標を具体的な成果につなげる上で不可欠な要素として浮かび上がってきたのが、有効なガバナンスと監督機能です。
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EYのEurope Long-Term Value and Corporate Governance Survey 2023をダウンロードする(英語版のみ)
EYの分析結果から、サステナビリティガバナンス改革で優れた成果を挙げている少数派グループの「上級者(Expert)」が財務的価値の向上を推し進め、改革の進展を図っているのに対して、多数派の「初級者(Beginner)」は課題が山積していることが分かりました。
今後12カ月間の売上高成長率に楽観的な見通しを示している回答者の割合は、上級者が76%に上ったのに対して、初級者は半数未満(45%)にとどまっています。 上級者の半数強(52%)が、環境サステナビリティに対する自社のアプローチの一部である気候目標の達成に向けた現在までの進捗状況に「非常に満足」している一方で、初級者のこの数字はわずか13%です。
上級者とそれ以外を分けるものは何であるかを明らかにし、かつサステナビリティガバナンスの強化に向けた道筋を描きやすくするために、今回の調査では以下の3つのテーマについて調べました。
有効なガバナンスは価値創造型のサステナビリティに向けた取り組みの推進に貢献するが、短期的な優先課題と長期的な優先課題との間の綱引きが続いているのはなぜなのか 先駆的な企業が良い成果を挙げていながら、サステナビリティガバナンス改革の道のりが長いことを認識しているのはなぜなのか 企業が体系的かつ説明責任を果たすことのできる信頼のおけるガバナンスを構築し、サステナビリティの価値を引き出すにはどうすればいいのか
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長期的価値の向上に向けた取り組みの進捗状況と課題、そしてコーポレートガバナンスへの影響を把握するため、欧州企業の取締役とシニアリーダー200名を対象に調査を行いました。内訳は20%が取締役会の議長または非業務執行取締役、20%がCEO、残り60%がその他の経営幹部です。回答者の組織の年間売上高は、半数が10億ユーロ以上、残りの半数が1億ユーロ以上10億ユーロ未満で、所在国数は合計で欧州の15カ国、業種数は合計で26業種でした。
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上級者と初級者を選別するため、ハードな課題(「ESGパフォーマンスの向上意欲を高める役員報酬の決め方」など)からソフトな課題(「自社のESGの優先課題とアプローチで取締役会の全メンバーの足並をそろえることを目的とした、オープンで率直な議論の促進」など)までの主要6項目で自社のガバナンスがどの程度有効であるかに関する回答者の評価を基に、サステナビリティガバナンスのスコアを付けました。このスコアから、回答者をサステナビリティガバナンスの有効度が高い「上級者」と有効度が低い「初級者」に分け、各グループが回答したアプローチ、メリット、課題を評価しています。
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1
第1章
より良いガバナンスがより良い成果を支える
有効なガバナンスは価値創造型のサステナビリティに向けた取り組みの推進に貢献するが、短期的な優先課題と長期的な優先課題との間の綱引きが続いている。
サステナビリティ課題への対処には世界全体が責任を負っていますが、必要な変革を早急に推進する上で中心的な役割を担っているのは企業です。
「(オペレーティングモデルであれ、製品や支援機能、あるいは人材であれ)サステナビリティ戦略を実行している企業は、地球と社会により多くの価値をもたらしているだけではありません」とEYのEMEIA Area Managing Partner and EY Global Leader – Women. Fast forwardのJulie Linn Teiglandは言います。「企業やその株主により多くの財務的価値も、もたらす場合が多いのです」。これは、EYが「価値創造型のサステナビリティ」と名付けたアプローチです。EYのSustainable Value Surveyでは、企業の69%が気候変動への取り組みで、期待以上に財務的価値を高めることができたと回答しています。
今回の最新の調査結果から、こうした成果を挙げる上で、有効なサステナビリティガバナンスが役立つことが分かりました。上級者は売上高成長率をより楽観視しているだけでなく、気候目標の達成状況への満足度も高い傾向にあります。
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これは、売上高成長率に楽観的な見通しを示した回答者と、気候目標の達成状況に非常に満足している回答者の割合(前者は上級者が76%、初級者が45%、後者は上級者が52%、初級者が13%)を表した棒グラフです。
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とはいえ、成否の鍵を握るのは、短期的な優先課題と長期的価値との間で続く綱引きにうまく対応できるかどうかです。サステナビリティ・アジェンダへの対処を推し進める必要に迫られていることで、ビジネス上の短期的な圧力と長期的な圧力のバランスを取ることが一段と複雑化してきました。
これが顕著に表れているのが、企業と株主の間の力の関係(ダイナミクス)です。今回の調査結果では、74%が「財務業績と収益性が短期的に低下することになったとしても、自社の事業に関わるESGの課題に対処しなければならない」と回答しています。これは投資家の見解とも合致します。EYのGlobal Corporate Reporting and Institutional Investor Survey の結果では、投資先企業は、短期的に利益が減少することになったとしても、事業に関わるサステナビリティの課題に対処すべきだと考える回答者が78%に上りました。
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つまり、両「陣営」とも長期的価値を守り高めるには、難しい判断とトレードオフが必要だという点で一致しています。ところがこれと同時に、今回の調査結果では回答者の64%が「短期的収益を求める圧力を投資家から受けており、それがサステナビリティへの長期的な投資を阻んでいる」とも答えているのです。
こうした緊張関係、中でもとりわけ報告を巡る緊張関係への対処で重要な要素となるのが、取締役会と経営陣、そして投資家との関わり合いの質です。Corporate Reporting Survey の結果からは、投資家の80%が「サステナビリティに長期的に投資する根拠を適切に説明していない企業があまりにも多い」と感じていることも分かりました。これは、コーポレートストーリーの内容を充実させ、長期的価値に関する企業戦略への支持をリーダーがより効果的に訴えることができるようにするためには、ガバナンスの強化が早急に必要であることを示唆しています。
言うまでもなく、必要な短期的最適化と長期的価値の間のバランスで組織自体が足並をそろえていなければ、効果的な外部向けのストーリーを創ることはできません。ところが、今回の調査結果から、短期的な業績とサステナビリティへの長期的な取り組みのバランスを巡り、リーダーシップチーム内で見解の相違があると感じる企業リーダーが著しく増えていることが分かりました。
これは、短期的な意思決定と長期的な意思決定を巡り、リーダーシップチーム内で見解の相違があると感じる回答者の割合を表した棒グラフです。この割合は2022年の調査の55%から67%に増加しています。
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ガバナンスの上級者だからといって、こうした緊張関係が少ないというわけではありません。実際のところ、内部に意見の相違があると答えた人の割合は上級者が74%に上ったのに対して、初級者は58%でした。つまり、オープンな議論と連携のための有意義な機会を設け、こうした戦略的トレードオフのバランスを取るアプローチを構築する必要があるということです。
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2
第2章
サステナビリティ・ガバナンスのさらなる強化が必要
先駆的な企業は成果を挙げていながら、上級者はサステナビリティガバナンス改革の道のりが長いことを認識している。
組織の大半(72%)が自らの事業に最も関係する国連の持続可能な開発目標(SDGs)に対応した公約を明確に掲げています。サステナビリティ関連の重大なリスクと機会はダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンから自然資本までさまざまです。長年にわたりリーダーが取り組んできた課題であることと、企業が高度なアプローチをとることに対する社会の期待の高まりを踏まえ、まず気候変動問題を取り上げます。
ステークホルダーの間では、気候変動関連の優先課題に企業は⼗分な緊迫感を持って対処していないとの懸念が⾼まっています。従業員は気候変動問題に⼗分に迅速に対応していると感じていないと答えた回答者が55%いました。こうした不安の⾼まりは、⾃社が掲げる公約が意義ある成果へとつながっておらず、また⾃社が直⾯する課題の実情を⽰すものではないという懸念を反映しています。
先に述べたように、上級者は気候⽬標の達成状況に対する満⾜度が、初級者より⾼くなっています(満⾜している⼈の割合は上級者が52%、初級者が13%)。⼀⽅、より良い成果を挙げながらも、上級者が気候変動問題を巡るガバナンスの重要な要素を改善するにはまだまだやるべきことがあると認識しているのも事実です。取締役会の果たす役割を例にとって⾒てみましょう。「気候変動対策についての経営陣に対する異議申し⽴て」で取締役会の機能が「極めて有効に働いている」と感じる回答者は、上級者が半数弱(40%)いたのに対して、初級者ではわずか17%でした。
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これは、気候変動ガバナンスの主な要素で、取締役会の監督機能が「極めて有効に働いている」と感じる回答者の割合を表した棒グラフです。初級者、上級者ともにこの割合が最も高かったのは(初級者が33%、上級者が57%)、「気候変動対策の公約の実施状況と進捗状況に対する取締役会の監督機能」でした。
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3
第3章
サステナビリティ・ガバナンスを前進させる
取締役会のパワーバランス、報酬、報告にフォーカスすることで、体系的かつ説明責任を果たすことのできる信頼のおけるアプローチを実現できる。
優先課題1:体系的なアプローチの導入に加え、より良いパワーバランスの確保と知識の向上
企業は取締役会の意思決定にサステナビリティを組み込む幅広い体制を整えてきましたが、一般的なアプローチは確立されていません。例えば、28%が監督機能をサステナビリティ専門委員会に付託しているのに対して、23%がこれをリスク委員会や監査委員会など既存の委員会に付託しています。その一方で、監督体制が整っていたとしても、果たしてサステナビリティが、取締役会のあり方の組織的・本質的な部分として根付いているのかといった疑問を依然として抱く人が多いのも事実です。
取締役会の体制と意思決定プロセスにサステナビリティの課題が完全に組み込まれていると感じているのは、回答者のわずか7%でした。 4分の1強(27%)が、完全に組み込むには大きな変革が必要だと感じています。
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適切な体制の整備は重要ですが、有効なガバナンスを構築するにはサステナビリティへの取り組みに十分な時間を充てることも不可欠です。そうでなければ、例えばコンプライアンス要件の順守など、単に既存の価値を守る以上の対応をとることができません。有効なガバナンスの確保には、議論に新たな視点を持ち込めるようにすることも必要です。
上級者の83%が「取締役会の議題を管理し、短期的なビジネス上の問題だけでなく、長期的なESG関連のリスクと機会についても常に議論がなされるよう取り計らうこと」で力を発揮していますが、初級者ではこの割合が52%に低下します。 上級者の86%が「取締役会のダイバーシティを向上させ、新たなメンバーにも発言時間をきちんと公平に配分し、ESGのトピックに新鮮な視点をもたらすこと」で力を発揮していますが、初級者ではこの割合が36%に低下します。
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有効な監督機能と意思決定機能の確保には、適切なコンピテンスも⽋かせません。イノベーションを推進する上で重要なのは、コーポレートサステナビリティの最新の主な傾向や推進要素、課題を常に把握しておくことです。急速に変化する、サステナビリティを巡る状況にリーダーは迅速に対応しなければなりません。ところが、サステナビリティに関する強⼒な提案をすることによる、⻑期的価値の創造を妨げる社内の障壁は何かと今回の調査で尋ねたところ、回答者である取締役会の議⻑とメンバーが挙げた課題の上位2つのうち1つが「主要な分野の知識不⾜」でした(取締役会のメンバー全体の38%が選択)。
つまり、EY EMEIA Public Policy LeaderのAndrew Hobbsが言うように、「サステナビリティ目標の進捗では、ESGのトピック関連の経験とスキルを持ち、ESGへの取り組みに意欲的な取締役会が費やす質の高い時間が、サステナビリティ委員会など正式な体制づくりよりも重要」なのです。
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サステナビリティ戦略の策定と実行に関する的確な意思決定を行うために必要なスキルすべてに取締役会がアクセス可能であると、どの程度自信を持っているか。アクセスできない場合には、何をすればいいか。 長期的戦略を成功させる上で重要なサステナビリティ目標をきちんと把握していると自信を持って言える根拠は何か。 そのサステナビリティ目標を会社の戦略、ガバナンス、業務にどのように組み込んでいるか。 その目標の進捗状況をどのように測っているか。
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優先課題2:サステナビリティ・パフォーマンスに連動した報酬に対する大胆なアプローチで、説明責任を持たせる
報酬の重要な割合を占め、経営陣に説明責任を持たせる一助となる、サステナビリティ目標達成状況に関する「報酬レベル」のKPIの設定は難しい課題です。とはいえ、この設定を求めることには、説得力のある根拠があります。有効な変動報酬制度の導入が、サステナビリティへの取り組みの成果と目標の進捗を支えることになるのです。
以下のような複数の課題に対処するには包括的なアプローチが必要となります。
複数年にわたる評価期間︓今回の調査の回答者が最⼤の課題として挙げたのは、給与と変動報酬の評価期間が1年間であるのに対し、サステナビリティ⽬標の評価期間は5年から10年間に及ぶことが多いという調整の難しさです(回答者の39%が、主な障壁の1つに選択しました)。 意図せぬ結果︓サステナビリティ成果重視の報酬へのストックオプション制度導⼊を、⻑期的価値の創造の促進に確実に結びつけるにはどうすればいいのでしょうか。株式が重視され過ぎることで、株価を上げるための短期的業績追求を招く恐れはないのでしょうか。
「何を重視すべきか」といった問題もあります。ステークホルダーはどのような項目についてリーダーを評価すべきだと考えているのでしょうか。また、マテリアリティ評価の終了後に重要なのは、優先順位を決め、あるいはインセンティブ制度の指標の重み付けをして、適切な行動を促すことです。最後に、指標をどのように組織全体に浸透させていけばいいかも検討する必要があります。
こうした複雑な課題が硬直化や漸進主義に陥る危険性を⾼めているのです。実際、今回の調査結果から、組織の半数弱(47%)が現在、サステナビリティを重要な報酬決定要素にしていることが分かりました。⼀⽅、上級者は、先進的なアプローチを採っている割合が格段に⾼くなっています。
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上級者:61%がESG指標を上級幹部の重要な報酬決定要素にしている(限定的な報酬決定要素にしているのは34%)。 初級者:29%が重要な報酬決定要素にしている(限定的な報酬決定要素にしているのは59%)。
真のインパクトを生むには考え方の転換が必要です。経営幹部、取締役会、報酬委員会は、進化し続けるESG関連のKPIの設定にあたり、実際主義的かつ臨機応変な姿勢をとる必要があります。また、ステークホルダーとの関係をよりオープンで透明性の高いものにすることで、この重要な問題でステークホルダーと真正面から向き合い、サステナビリティへの取り組みの詳しい内容を共有することもできます。
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役員報酬に関するポリシーにおいて、組織が実現を目指しているのは、サステナビリティへの取り組みによるどのようなインパクトや成果なのか。 役員報酬に関するポリシーに盛り込むべき重要なESG指標は何か。どのような方法で、その有効性を定期的に評価しているか。 役員の変動報酬を連動させている(短期的と長期的、両方の)業績指標は、会社の価値観、パーパス(存在意義)、サステナビリティ関連の優先課題をどの程度反映し、またこれらにどの程度沿っているか。 役員の業績評価と変動報酬制度に財務業績指標と非財務業績指標をどのように組み込み、またこの2つのバランスをどのように取っているか。 ESG指標ばかりを重視してその他の指標を軽視する等の、予期せぬ結果を回避できているとどの程度自信を持って言えるか。 役員報酬に関するポリシーに盛り込まれたESG関連の目標は、サステナビリティ目標に沿ったものであるか、また、(例えば、毎年自動的に達成できるわけではない、あるいは毎年達成が保証されているわけではない)背伸びした高めの目標である「ストレッチターゲット」となっているか。
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優先課題3:信用でき信頼できる重要な開示情報に基づくアプローチ
報告と情報開示における信頼性の高さは、成功と目標を共有するという意志だけでなく、組織が取り組みを進める中で直面する課題と困難に立ち向かうという意志の表れです。ステークホルダーが知りたいのは、その企業の現状と今後の展望、そして、それを実現するための計画の内容であり、グリーンウォッシングやグリーンウィッシングは望んでいません。真に重要な課題に的を絞った、信頼のおける「ありのままの」ストーリーを望んでいるのです。
先駆的な企業ほど、事業運営のために戦略へのサステナビリティの組み込みとKPIの導入も進めています。それにより、事業にとって何が重要か、そして、そのために何を測定・評価する必要があるかが一層明確になるのです。このパーパスの明確化によって、サステナビリティガバナンスの上級者がEUの企業サステナビリティ報告指令(CSRD)の発効に伴う規制環境の変化に向けた体制をしっかりと整えている理由の説明がつくでしょう。
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これは、EUが間もなく実施する企業サステナビリティ報告に関する規制に向けた「体制を整えている」か、「体制を完全に整えている」と感じる回答者の割合を表した棒グラフです。上級者はその対応に必要なテクノロジーとデータ解析スキルがあると答えた人が最も多かった(83%)のに対して、初級者で最も多かったのは、例えば生物多様性や人権など、ESGのその他の要素に関連する正確で検証可能なデータがあるとの回答でした(62%)。
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信頼でき一貫性のある質の高い財務・サステナビリティ報告書を作成するために、経営陣はどのような体制を整えているか。この体制を支えるための適切なスキル、経験、指揮命令系統、説明責任制度はあるか。 信頼でき一貫性のある質の高い報告書を作成するには、会社のリスク管理システムと内部統制システムをどのように変える必要があるのか。 これからCSRDが発効するまでの間に、これらの領域でどのような対応をとる必要があるのか。
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今後の見通し
有効なガバナンスとは常に変化する概念であるため、その意味では、取締役会の仕事に終わりはありません。今回のインタビュー調査の結果から、サステナビリティ・アジェンダが進化し続けており、リーダーは幅広いトピックに目を向け、多大な時間を費やす必要があることも分かりました。具体的には生物多様性、企業の幅広いバリューチェーンにおける人権、従業員のエクイティとインクルージョンなどのトピックです。
常に変化し続けるこのアジェンダは、言うまでもなく、CEOと取締役会メンバーにとって大きな課題です。アジェンダが常に変化し複雑なため、一部企業が戦略的な姿勢をとらず受け身になり過ぎたり、場合によっては、どこに注力すべきかが不透明で足を踏み出すことすらできなかったりする恐れがあります。しかし、適切なガバナンスを構築すれば、長期的価値の創造で最も重要なサステナビリティのトピックに照準を合わせることができます。このトピックとは、組織の未来を確保しながら、地球と地球で暮らす人類の未来も守ることです。
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サマリー
常に変化し続けるサステナビリティ・アジェンダは、欧州のCEOと取締役会メンバーにとって大きな課題です。アジェンダが流動的で複雑なため、一部企業が戦略的な姿勢をとらず受け身になり過ぎたり、場合によっては、どこに注力すべきかが不透明で足を踏み出すことすらできなかったりする恐れがあります。しかし、適切なガバナンスを構築すれば、長期的価値の創造で最も重要なサステナビリティのトピックに照準を合わせることができます。このトピックとは、組織の未来を確保しながら、地球と地球で暮らす人類の未来も守ることです。
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執筆者
Julie Teigland
EY EMEIA Area Managing Partner; EY Global Leader, Women. Fast forward
Andrew Hobbs
EY EMEIA Center for Board Matters Leader, EMEIA Public Policy Leader
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