EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
要点
2023年6月27日(火))にTKP新橋カンファレンスセンターにおいて、「米国IPOの最前線2023~Nasdaq市場の最新動向~」を開催いたしました。
これは、2019年以降、日本企業及び日系企業による米国IPOは増加傾向にあり、足元でもハイバリエーション、巨大市場へのアクセス、ブランド力強化を目的として米国市場での上場を検討する日本企業が増加していることから、上場準備会社の経営者・管理担当役員等の皆さま向けに、Nasdaq市場の動向、米国マーケット動向、法務、IPO準備、会計・開示対応といった特に関心の高いテーマについて、取り扱いました。
会場参加・オンライン参加合わせて350名強のお申し込み者数があり、関心の高さがうかがえました。
まず、セミナーの冒頭、EY新日本有限責任監査法人 副理事長 大内田 敬より、開催のあいさつがあり、昨今の日本の株式市場やIPOマーケットの状況、米国IPOマーケットの状況や魅力等について触れられました。
Nasdaq市場の動向~日本企業にとっての米国市場~
登壇者:Nasdaq 日本代表 杉原 幹郎 氏
杉原氏からは、冒頭、Nasdaqの歴史や同市場を運営する会社は、マーケットプラットフォームを提供しているフィンテック企業としての特徴がある旨のお話がありました。
その後、世界主要取引所の時価総額や上場件数件数の比較、Nasdaqに上場している主要企業、主要株式市場の成長率、流動性比較等が説明され、Nasdaq市場の魅力が説明されました。
また、米国上場と日本上場の比較分析やニューヨーク証券取引所との比較が説明されNasdaq上場のメリットについて触れられていました。
米国IPOのマーケットの動向
登壇者:ゴールドマン・サックス証券株式会社 株式資本市場部長 箕輪 祐介 氏
箕輪氏からは、ゴールドマン・サックス証券株式会社のご紹介の後、現在の米国市場の動向が説明されました。その後、米国市場と日本市場の比較、証券市場のイノベーションは米国から起こっている点が触れられ、最後に米国IPOに適した日本企業の特徴がまとめられました。
最新の米国IPOの法務
登壇者:GT東京法律事務所(Greenberg Traurig LLP)
パートナー 弁護士 石川 耕治 氏
石川弁護士からは、どのような企業が米国上場を目指すべきか? アドバイザリー選定のポイント、IPO準備のスケジューリング上のポイント、IPOの準備体制、必要な英語力のレベルといった内容の説明がありました。
まとめとして、「米国上場は、大変だけど手続がシンプルで透明性が高い」、「タイミングが極めて重要である」「トップの覚悟が重要」である旨が触れられました。
米国IPOに向けた準備、会計・開示対応
登壇者:EY新日本有限責任監査法人 パートナー 公認会計士 齋藤 圭祐 氏
EY新日本有限責任監査法人 パートナー 公認会計士 原 貴博 氏
弊法人齋藤会計士からは、上場準備スケジュールとSEC(米国証券取引委員会)レビュープロセスとして全体スケジュール(図1)とSECレビュープロセス(図2)について、説明がありました。
全体スケジュール
SECレビュープロセス
次いで、SECコメントのトレンドと事例について、説明がありました。SECコメントの領域としては、Non-GAAP financial measures(Non-GAAP指標)、MD&A、セグメントの3領域が2022年、2021年におけるSECコメントのトップ3であったとのことでした。(図3)
SECコメントのトレンド
* 2021年7月-2022年6月/2020年7月-2021年6月の1年間をそれぞれ2022、2021としている
* 時価総額USD 57 Million以上の会社のForm10-K、Form 10-Qを対象としている
出所:「SEC Reporting Update: Highlights of trends in 2022 SEC comment letters」、SEC Reporting Update - Highlights of trends in 2022 SEC comment letters | EY – US (2023年6月20日アクセス)
まとめとして、SECレビュープロセスを乗り切るために、1.多くの部署・関係者等を巻き込んだ早期の準備(KPIやセグメントの設定等)、2.SECスタッフからの質問にフォーカスし、可能な場合には関連するガイダンスも活用する、3.関連するガイダンスを適用するにあたっては会社固有の事情に照らして判断し、判断根拠を説明する点が重要であり、投資銀行、監査人や弁護士、会計アドバイザー等、外部関係者とも調整が必要である点が述べられました。
弊法人原会計士からは、米国上場のための会計監査を進める上で、実務上知っておくとよい事項として5つのポイントが説明されました。具体的には、1.監査人の選定、2.IFRSの準備、3.ITシステム、4.内部統制、5.将来計画の見積りの各項目について触れられました。最後に、どうしたら万全の準備ができるか? についてよくある落とし穴9つとそれへの対応が述べられました。(図4)
IPOの留意点:どうしたら万全の準備ができるか?
プログラムの取りまとめとして、最後にEY新日本有限責任監査法人企業成長サポートセンター 副センター長 善方 正義から、閉会のあいさつをさせていただきました。その後、登壇者と参加者の名刺交換会が催され、関係者のネットワークが図られました。
EY新日本有限責任監査法人では、2022年3月に日本企業による米国を含む海外市場での上場支援及びグローバルオファリング支援、外国企業による日本市場での上場支援を強化するため「クロスボーダー上場支援オフィス」を企業成長サポートセンター内に設置しました。
「クロスボーダー上場支援オフィス」では、これまで数多くのクロスボーダー上場やグローバルオファリング支援で培ったプロフェッショナルとしての知見とナレッジを集結し、増加するクロスボーダーで上場市場を目指すスタートアップに対して、上場支援サービスを提供しております。
日本企業の海外上場及びグローバルオファリング時の監査
海外企業の日本上場のための監査(JDR、インバージョン上場を含む)
IFRS・米国会計基準等への会計基準コンバージョン、開示作成支援サービス
クロスボーダー上場を前提とした組織再編サービス、税務サービス(*)
米国SOX法をはじめ各国の基準に対応した内部統制整備支援サービス
(*)EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社及びEY税理士法人による支援サービスを含む
【共同執筆者】
山本 竜大
(EY新日本有限責任監査法人 企業成長サポートセンター シニアマネージャー)
※所属・役職は記事公開当時のものです。
EY新日本、クロスボーダー上場対応を強化するため「クロスボーダー上場支援オフィス」を設置
【EY Japan】EY新日本有限責任監査法人(東京都千代田区、理事長:片倉 正美)は、日本企業による米国を含む海外市場での上場支援およびグローバルオファリング支援、外国企業による日本市場での上場支援を強化するため「クロスボーダー上場支援オフィス」を企業成長サポートセンター内に設置しました。
2023年6月27日(火曜日)にTKP新橋カンファレンスセンターにおいて、「米国IPOの最前線2023~Nasdaq市場の最新動向~」を開催いたしました。セミナーでは、Nasdaq日本、ゴールドマン・サックス証券株式会社、GT東京法律事務所(Greenberg Traurig LLP)の弁護士、EY新日本有限責任監査法人の会計士が登壇しました。