IPOに乗り出す時に備えて、今何をするべきか
IPOに乗り出す時に備えて、今何をするべきか

IPOに乗り出す時に備えて、今何をするべきか


2023年第2四半期、世界のIPO市場が鈍化する中、新興市場は成長しています。


要点

  • 2023年上半期の世界のIPOは前年同期比で件数が5%減少、調達額が36%減少した。
  • 米国では、2021年11月以来最大の募集が行われた。
  • Asia-Pacificは、世界全体のIPOの約60%を占め、地域別では依然としてもっとも優勢である。

2023年上半期には615件のIPOにより、609億米ドルの資金が調達されました。これは、前年比でそれぞれ5%と36%の減少です。第2四半期は、第1四半期と比較して大規模な取引が増加し、回復スピードは遅いものの、ギャップは縮小しました。このような控えめな結果は、世界経済の成長鈍化、金融引き締め政策、地政学的緊張の高まりを反映しています。しかし、一部の新興市場では、豊富な鉱物資源に対する世界の需要、膨大な人口、ユニコーン企業や起業家精神にあふれる中小企業がプラス要因となり、IPO活動が活況を呈しています。これらを含む調査結果は、EYの世界のIPO市場動向レポート2023年第2四半期に記載されています。

2023年も現在までのところ、テクノロジーセクターが引き続きIPO活動を主導しています。一方、エネルギーセクターの企業のIPO調達額は、エネルギー価格の世界的な軟化を受けて減少しています。また、クロスボーダーIPO活動は、主に中国から米国への資金流入の拡大とスイス証券取引所への上場の着実な増加により、件数と調達額の双方で著しく拡大しました。 

SPAC市場は、交渉が一段と複雑化していることを受け、引き続き困難な状況にあります。今後6カ月以内に期限を迎えるSPACのうち、膨大な数が、DeSPACを発表または完了しておらず、清算に直面しています。SPACのIPO活動は、2021年以前にみられたような、より常識的で持続可能な水準に戻ると期待されます。 


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EYの世界のIPO市場動向レポート2023年第2四半期では、より踏み込んだ分析と洞察をご紹介しています。

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エリア別のIPOパフォーマンス概要:第2四半期は第1四半期よりも好調

Americas(北・中・南米)では、IPOの件数は横ばいでしたが調達額は91億米ドルとなり、前年比で86%増加しました。この増加は主に、2021年11月以降で米国最大となる、単一の巨大スピンオフIPOによるものです。米国では、数件の大型取引を主な要因として市場が上向いており、最近の市場心理の改善は、2023年後半または2024年に米国のIPO活動が活発化する先触れとなる可能性があります。ただし、このような期待のもてる展開にもかかわらず、2023年の予期せぬ銀行危機のため、AmericasのIPO市場が全体的に回復するまでには、多くの市場参加者が年初に予測したよりも長い時間がかかるかもしれません。 

Asia-Pacific(アジア・パシフィック)のIPO市場は、年初来、件数と調達額において世界トップの地位を維持しており、そのシェアは約60%です。世界のIPO上位10社のうち、半数が中国企業で、1件は日本企業でした。同地域では、この期間に371件のIPOにより394億米ドルが調達され、前年同期比でそれぞれ2%と40%の減少となりました。調達額の大きな落ち込みは、中国のIPO市場が予想以上に冷え込み、多数の大規模なIPO案件が延期されたことによります。インドネシアは20年超ぶりに、世界の証券取引所のIPO件数ランキングで香港よりも上位になりました。 

EMEIA(欧州、中東、インド、アフリカ)ではIPO活動の縮小が続いており、年初来、167社が上場し、124億米ドルを調達しました。これは前年同期比で、それぞれ12%と50%の減少です。それにもかかわらず、この地域は全IPOディールの27%を占め、2番目に大きなIPO市場としての地位を維持しました。また、調達額ランキング2位(25億米ドル)のIPOディールが実施されました。インドの取引所も20年ぶりに記録を更新し、ディール件数のトップに躍進しました。しかし、大半の欧州諸国ではインフレが依然として困難な水準にあり、流動性の欠如のためにIPO活動が抑制される状況が続いています。


2023年第3四半期の見通し:パイプラインは待機中

IPO活動が世界的に回復し始めるのは、金融引き締め政策が最終段階に入り、経済状況と市場心理が徐々に改善していくとみられる2023年後半になると予想されます。 

他の従来型IPOすべてを上回る、巨大スピンオフIPOが米国で1件実施されると、この傾向が続く可能性が高いことが示唆されています。企業が売却を通じてより多くの株主価値の創造を目指す一方で、投資家は、回復の途上にあるIPO市場において収益力の高い成熟した企業を求めているため、大企業のスピンオフ上場やカーブアウト上場が主要市場で表面化する可能性があります。 

投資家の期待に応え、規制上の問題のために生じかねない遅延を回避するには、企業が上場を計画しているIPO市場それぞれによって異なる要件を理解することが不可欠です。投資家は今後さらに選好を強め、堅実なファンダメンタルズと実績のある企業を求めるでしょう。代替的なIPOプロセス(直接上場またはDeSPACによる合併)を始めとして他の資金調達手法(プライベートキャピタル、債券、またはトレードセール)まで、あらゆる選択肢を検討するべきです。 

経済状況は世界各地で異なり、地政学的情勢は予測不可能です。こうした中、一部の株式市場は過去最高水準にまで高騰し、ボラティリティが低下しています。テクノロジーやクリーンエネルギーなど、テーマ重視の一部のセクターでは、IPO活動が活発化する兆候があります。一流大企業は持続的なレジリエンス(復元力)を示しており、一方で、市場では、より現実的で許容範囲内のバリュエーションを伴う成長ストーリーが受け入れられるようになっています。 

この環境の変化を受け、企業は、今後機会の扉が開いたときに「IPOに乗り出せる」ように、今、準備を整えておく必要があります。


株式公開の手引き

株式公開の手引きは、IPO前、IPO期間中、そしてIPO後において、企業が戦略的に検討すべき事項を取り扱っています。

世界のIPO












IPOを成功に導く可能性を最大限に高めるために企業が取るべき対策に関して、より詳細な洞察を参照するにはEYの株式公開の手引き(PDF、英語版のみ)をダウンロードしてください。


過去のIPOレポート


サマリー

EYの世界のIPO市場動向レポート2023年第2四半期では、2023年上半期、世界のIPO市場が鈍化する中、新興市場が成長していることが明らかになりました。IPO活動が世界的に回復し始めるのは、金融引き締め政策が最終段階に入り、経済状況と市場心理が徐々に改善していくとみられる2023年後半になると予想されます。


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