COP28から見るサステナビリティ報告のグローバル動向
気候変動対策を推進するサステナビリティ情報開示に向け、COP28においてIFRS財団が新たなコミットメントを発表しました。
要点
- COP28において、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の基準の導入を支援するために、IFRS財団はCOP28の「気候アクションデー」にサステナビリティ・ナレッジ・ハブを立ち上げた。
- さまざまな企業、投資家、証券取引所などが、気候関連開示の利用に対する支持を表明した。
- 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の取り組みはISSBに正式に移管され、情報開示環境のさらなる統合が反映されている。
COP28は2023年11月30日から12月13日にかけて開催され、グローバルなサステナビリティ報告に関連する数多くの発表が行われました。本記事では、企業が今後サステナビリティ関連財務開示を作成する際に、企業の取締役会メンバーや経営者層が理解しておくべき発表をご紹介します。
キャパシティビルディングを支援するナレッジハブ
IFRS財団のサステナビリティ・ナレッジ・ハブは、COP28の気候アクションデーに稼働を開始し、IFRS S1号「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」およびIFRS S2号「気候関連開示」の利用を支援しています。IFRS S1号およびIFRS S2号は、ISSBが公表した最初のISSB基準です。これらの基準は、2024年1月1日に発効し、各法域単位で採用されます。当ナレッジハブは、IFRS財団が多くのパートナーと共同で実施するキャパシティビルディングのプログラムの重要な要素です。そこでは、IFRS財団および第三者組織が開発したコンテンツが提供されており、市場のニーズや新たな実務慣行に応じて今後も追加される予定です。当ハブの現在のリソースには、ISSB基準の紹介、TCFD提言からISSB基準への移行ガイド、よくある質問集が含まれます。当ナレッジハブは、企業によるISSB開示の作成を支援するように設計されており、ISSB基準の理解を深めようとしている監査人、投資家、規制当局、その他のステークホルダーにとっても有用な情報集となります。
IFRS財団のナレッジハブは、企業がISSB情報開示を準備する上で有用な情報集であり、100以上のリソースで構成されています。また、ISSB基準の理解を深めようとする監査人、投資家、規制当局、その他のステークホルダーも支援します。
サステナビリティ関連財務開示に関する新たなコミットメント
COP28の会期中、IFRS財団は、強固なサステナビリティ関連財務開示を通じて、効率的で強靭(きょうじん)な資本市場を支援する、3つの新たなコミットメントを発表しました。IFRS財団は、キャパシティビルディングとは別に、政府や規制当局との対話を通じて各法域でのISSB基準の採用を推進し、証券監督者国際機構(IOSCO)および金融安定理事会(FSB)と緊密に連携していく予定です。また、ISSBが最近実施した優先課題に関する協議へのフィードバックを受け、新たな基準設定イニシアチブを推進し、サステナビリティ関連開示のグローバル・ベースラインを構築していくものと見られます。
ISSBの取り組みは、2024年1月1日から新たなISSB基準を規制枠組みに取り入れることで、世界中の法域の規制当局や基準設定主体から歓迎されています。
気候関連開示への賛同表明
COP28のファイナンスデーでは、数十の法域の協会、企業、投資家、証券取引所、会計組織を含む400近くの組織が、ISSBの気候関連基準であるIFRS S2号を気候関連開示のグローバル・ベースラインとして採用・活用を促進することを表明しました。COP28での気候変動対策の呼びかけに応えて、これらの組織は、グローバルレベルで一貫性があり、かつ比較可能な気候関連開示を可能にするための市場インフラ確立を支援すると宣言しました。また、世界中の法域がISSB基準を規制枠組みに採用する方法を検討しており、多くの規制当局や基準設定主体もISSBの取り組みを歓迎しています。
TCFDの取り組みの集大成
2023年7月、IFRS S1号およびIFRS S2号の公表を受け、FSBはIFRS財団に対し、企業における気候関連開示の進捗状況のモニタリングをTCFDから引き継ぐよう要請しました。IFRS S2号にはTCFD提言と比較して追加の要求事項がありますが、これらはIFRS S1号とIFRS S2号に完全に組み込まれているため、2つの基準を適用する企業はTCFD提言も満たすことになります。TCFD提言は、企業がISSB基準に移行する際の出発点として役立ちます。COP28は、TCFDの取り組みが正式に終了し、開示環境がさらに統合されたことのマイルストーンとなりました。
結論
ISSB基準の採用または利用については幅広いステークホルダーから支持が集まっており、企業は自らが活動する法域において、ISSB基準に準拠したサステナビリティ報告が要求されるかどうかをモニタリングする必要があります。同時に、企業が導入プロセスを推進するにはさらに多くのガイダンスが必要であると認識されていることから、関連リソースをより利用しやすくするための世界的な取り組みが行われています。
サマリー
COP28において、2024年1月に発効するISSBの新しい国際サステナビリティ開示基準は、幅広いステークホルダーから強力な支持を得ました。企業がこの基準を採用するのを支援するために、ISSBはCOP28の気候アクションデーに新たなナレッジハブを立ち上げました。このハブのリソースは、企業がスキルと能力を開発し、知識を共有することに役立つものであり、また、ビジネス界全体で気候変動対策を推進する人々に対して、サステナビリティ報告が、より優れた情報を提供することを支援します。
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