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ジャパネットが「長崎スタジアムシティ」で描く新たな地域創生とは
長崎県に本社を構える株式会社ジャパネットホールディングスは、「長崎スタジアムシティ」への取り組みを2017年から開始。EYは、スポーツビジネスや地域連携などの知見を活かし、この民間主導の巨大プロジェクトに参画。主にICT領域での価値向上を実現すべく「ICT PMO」の役割を担当しました。
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民間主導のスポーツ×地域創生事業が地方の可能性を広げ、日本をリード
事業費約1,000億円が投じられた「長崎スタジアムシティ」のプロジェクトは、地域に賑(にぎ)わいをもたらすとともに、持続可能な事業としても成立させる必要がありました。そのため、長期的に更新可能なデジタルサービスのデザインと、複合的なサービス提供の効率化を追求するICTの活用が不可欠でした。
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株式会社ジャパネットホールディングス(以下、ジャパネットホールディングス)と言えば、「ジャパネットたかた」のTV通販事業の印象が強いかもしれませんが、2019年にグループのもう一つの柱として、スポーツ・地域創生事業を立ち上げました。2017年から地元長崎のプロサッカークラブ「V・ファーレン長崎」の経営を通じて地域を盛り上げ、2020年には長崎初のプロバスケットボールクラブ「長崎ヴェルカ」を立ち上げてB.LEAGUE参入を果たしています。
グループ会社の一つ、スポーツ・地域創生事業の中核として設立された株式会社リージョナルクリエーション長崎がフロントとなって推進し、2024年10月14日に開業を迎えた「長崎スタジアムシティ」は、民間主導のスポーツ、エンタメを核とした複合型事業として注目を集めています。 プロジェクト立ち上げの経緯について、同社執行役員の折目 裕(ゆたか)氏は次のように語ります。
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「2017年に、当時経営不振だったV・ファーレン長崎を救済する形でグループ会社化することで、ジャパネットグループにスポーツ事業が生まれました。同じ年に偶然、長崎スタジアムシティの予定地になる三菱重工長崎造船所幸町工場の跡地活用の話が持ち上がったのです。ジャパネットホールディングス社長の髙田は長崎の街の真ん中にサッカースタジアムを核とした“日本で誰も見たことがない街”をつくることで、V・ファーレン長崎ひいては長崎の皆さまを元気に、そして長崎の未来をより良いものにできるのではないかという思いのもと、このプロジェクトに手を挙げました」。
長崎スタジアムシティは、約2万人を収容するサッカースタジアムを中心に、約6,000席のアリーナ、ホテル、商業施設、オフィスなどで構成される、地域創生の核となる、文字通り“シティ”として誕生しました。長崎スタジアムシティには約80の店舗が並んでいます。
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この巨大なプロジェクトを率いたのはジャパネットホールディングス代表取締役社長 兼 CEOの髙田 旭人(あきと)氏。長崎でその最前線を任されてきた折目氏は、髙田氏とともにプロジェクトに熱い情熱を注ぎ続けてきました。
しかし、プロジェクトの立ち上げ当初は、今までにない野心的な取り組みに対して、周囲から必ずしも肯定的な声ばかりが聞かれた訳ではなかったと折目氏は振り返ります。
「しばらくは“こんなモデルが長崎で成功する訳がない”といった声も多方面から聞かれました。夢や理想を打ち砕くような発言をする、いわゆる『ドリームキラー』と呼ばれる人たちです。今年のジャパネットグループの会社テーマは『ドリームキラーに勝つ』という言葉を掲げており、長崎でも成功できることを証明するためにも、スポーツの力を信じてプロジェクトを最後までやり遂げようと取り組んできました」。
まだ前例のないこの巨大プロジェクトには、開発から整備・運用にかけて、幅広いステークホルダーが登場します。長崎スタジアムシティ全体で提供されるデジタルによる数々のサービスには、顧客体験をより良くするための接点から、それらを支える高速ネットワークなどのインフラに至るまでのトータルな設計が必要とされます。かつ複雑化が想定される運営には、効率化、省人化を実現することが重要視されていました。
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同じく、プロスポーツを通じて地域振興に取り組み、持続可能な長期的価値の創出を志向するEYは、2021年よりICT関連を総合的に推進するPMOとしてプロジェクトに参画しました。
EYは、プロスポーツチームの経営、DX支援の実績、アリーナやスタジアムを中心とした街づくりなどのスポーツによる地域創生支援の実績を積み重ねていました。さらに施設や街づくりにおける総合的な知見、行政との連携など、多様な課題を包括的にマネジメントするノウハウも豊富に有していました。
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統合されたデジタル体験は顧客体験価値と経済的価値を高める
スポーツビジネスによる地域振興に知見のあるEYは、スポーツビジネスの専門メンバーに加えて、DX、行政、官民連携に長(た)けたメンバーがワンチームとしてジョイン
複合的な施設全体のICTを総合的に管理するPMO業務を担いました。
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民間主導によるかつてないプロジェクトを担当したのは、EYでもスポーツDXと地域創生の実績が豊富なパートナーの岡田 明です。折目氏と共にプロジェクトを振り返ります。
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岡田: これまで日本では、民間企業が主導してスタジアムを建設するケースはとてもまれでした。公共性が優先され、スポーツ施設に加えて、スポーツやエンタメといったコンテンツや周辺のビジネスを含めた収益性を考慮して取り組むアプローチが少なかったためです。ですが、このプロジェクトでは“民間ならでは”の特色を追求してきました。
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折目氏: 長崎スタジアムシティは日本では長崎のここでしか見られない場所になると思います。サッカースタジアムにホテルが併設されている景色そのものが日本初になりますし、サッカー単体では年間20日間くらいしか試合がないので、比較的収益が安定しやすい施設を一緒に集めてシティ全体で黒字化させるというモデルは民間ならではの発想ではないでしょうか。ICTに関しても行政では難しいであろう尖(とが)った実証や事例を積極的に取り入れたかった。ICTで民間ならではのスポーツビジネスのアプローチを提供できると思っています。
岡田: まず、長崎スタジアムシティの利便性、快適性を追求していった時に、そこにどのような体験が必要になるのかというビジョンとゴールを設定しました。ゴールに向け、最新のICTを活用してサービスそのものをデザインしていきました。ICTに投資をするという意思決定をされたところに、民間ならではのプロジェクトの大きな価値があると思います。
折目氏: システムを構築していく上で、ICTを活用して何を実現したいか、どんな世界観をお客さまに提供したいかという、最初のビジョン、ゴール設定が非常に重要だと感じていました。EYさんとは事例を交えてさまざまな意見交換をさせていただき、私たちにはないアイデアを頂きながら、一緒にこのビジョンとゴールを設定できたことに大きな手応えを感じています。
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来場者体験の特徴として、一つのアプリですべてが完結することだと折目氏は続けます。
折目氏: 長崎スタジアムシティ専用アプリの登録者はすでに35万人(2024年8月時点)います。このビッグデータを活用して、嗜好(しこう)性によって情報を出し分け、分析を行って改善していくことも当初からEYさんと一緒に検討していました。
さらに労働力削減の観点から、人的な稼働が最も必要となるイベント時、稼働が穏やかな通常時のシフト管理をICTで可視化することによってオペレーションを最適化し、省人化することにも期待を寄せています。
長崎スタジアムシティはICTの活用により、施設の運用効率を向上させ、さらに消費機会を創出する点で高い経済的な効果を見込んでいます。
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大規模な発注の交渉を行う場面でも、EYとワンチームとして取り組んだ成果があったと折目氏は語ります。
折目氏: 大規模プロジェクトにおいて、特に数億円以上の発注案件での候補企業との折衝や、厳しい交渉において、先頭に立っていただきました。私たちクライアントと契約企業との間で厳しい意見が交わされると、その後の業務関係がうまくいかなくなることもあります。そのため、中立的な立場で介入していただき、円滑な関係を築いていただいたことに深く感謝しています。
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長崎スタジアムシティがスポーツで生み出す地域のつながりと社会的価値
ジャパネットホールディングスが立ち上げ、EYがワンチームとして伴走してきた長崎スタジアムシティは、10年、20年先にも持続可能な価値を提供し続ける存在であることと、同様の課題を抱える地方自治体の先駆けとなり、地域から日本を活性化することを目指しています。
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折目氏はグローバルに展開するEYが、世界で起きているスポーツトレンドを長崎に取り入れていることにも大きなメリットを感じたと言います。
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折目氏: 世界的に見ても、スポーツビジネスやべニューへの投資は、より大きくなっている傾向にあると考えています。それはスポーツのチカラや、地域を巻き込んだ街づくりが、企業価値の向上や、ビジネスとして成立しているからだと考えています。日本の中でもそのトレンドはより大きくなっていくと思います。
岡田: よく私たちもコンサルティングで、スタジアムやアリーナなどのベニューの運営と、スポーツ興行やそれに付随するチケッティング、飲食などの提供を一体で行うことによる価値の向上、さらに配信など創出されたコンテンツをさまざまな媒体で収益化するエンターテインメント事業を担っていくことで収益の幅が広がっていくというお話をさせていただきますが、まさにこれを体現されているのが長崎スタジアムシティだと思います。新しい日本のスポーツビジネス、エンターテインメントビジネスが長崎を起点に次のステージに行けると良いと思っています。
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折目氏: 実際に施設が出来上がってきて、こけら落としのコンサートのチケットが好調だったりしてきますと、ドリームキラーは今ではほとんどいなくなりました。
当初は数名だったスタッフも今では300人の体制となり、一丸となって開業準備を進めていると言います。
折目氏: 開業はあくまでスタートで、施設の持続可能性が大きな課題だと考えています。初年度は注目されますが、お客さまの期待値を維持して10年、20年と成長し続ける長崎スタジアムシティで在りたいからです。
岡田: 公共の皆さまも、例えばジャパネットホールディングス様のような民間企業と一緒になっていいものをつくるんだという共創モデルが増えていけばいいと思います。公共が民間にお任せして、磨き抜かれたサービスを提供していく具体例が増えれば、公共も民間もこういったプロジェクトに対する感度が上がってくると思います。
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折目氏: その通りです。私もプロジェクトスキームは、民間主導が正解だとは思っていません。公的機関と連携したプロジェクトの在り方を含めて、各地域の実状に応じて、こういった事例が増えていくことが全国を元気にできると考えています。
公共と民間の枠組みを超えた新しい地域創生が、長崎を起点として日本全国に広がることを折目氏は望んでいます。
折目氏: 私たちが挑戦している長崎市は40万人の商圏で、全国的に見ればそれほど大きなものではありません。しかし、そこに大規模な投資を行い、面白い取り組みが成功すれば、他のどの都市でもうまくいくという事例になります。多くの地方が衰退している中で、スポーツの力を使って街を活性化させる、その先駆者となり『長崎モデル』と呼ばれるようになるとうれしいです。
ジャパネットホールディングスとEYが企業の枠を越えたワンチームとなってプロジェクトを共創して4年。いよいよ長崎スタジアムシティオープンの運びとなりました。
日本各地をスポーツの力で元気にしていく民間モデルの取り組みが形となった今、すでに大きな反響を呼んでいる「長崎スタジアムシティ」の今後の動向に、長崎県民のみならず多くの人々が熱い視線を注いでいます。
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変革の時代を勝ち抜くために欠かせないことは何でしょうか
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EY Japanのスポーツビジネスでは、「スポーツ価値循環モデル」を掲げ、スポーツ団体や地域コミュニティ、地方自治体、国家と連携することで地方創生や社会課題の解決に取り組んでいます。
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EY Japanは、スポーツによるコミュニティの再蘇生を目的とし、人づくり、場づくり、コトづくり、ルールづくりに取り組んでいます。スポーツを起点として人とのつながりやコミュニティの基盤を作り上げる。そして、増え続ける医療費などの社会コストを低減し、コミュニティに集積される社会的価値を経済的価値に転換することにより、地域の経済循環を再構築します。
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