伊藤:本当におっしゃる通りで、今年のBリーグチャンピオンシップ決勝で明らかになったのは、クラブの総合力の高さです。琉球ゴールデンキングスも宇都宮ブレックスもただ強いだけではなく、事業と強化してきたのはもちろんですが、ファンの皆さん、パートナーさんを巻き込んだ総合力が高いクラブです。
琉球の桶谷HCが「(クオーターファイナルとセミファイナルを)沖縄アリーナのブースターの皆さんに勝たせてもらった」※とおっしゃっていましたが、ヴェルカの目指すところもそういう総合力なのかなと思います。僕自身もただ強いだけではなく、クラブの総合力を高めることに貢献できる、唯一無二のGMになりたいと考えています。
岡田:すばらしいです。そして、長崎にも2024年にスタジアムシティという、沖縄アリーナに負けない場所ができるわけですよね。
岩下:はい。スタジアムシティはサッカー、バスケに特化した観戦体験ができるように設計しているのが1番の特徴です。サッカースタジアムはタッチラインから観客までの距離が5m、バスケはほぼ0距離。抜群の観戦環境で、長崎の人たちが毎週のように本物を見られる。スタジアムは約2万人、アリーナは約6千人で満員になるという世界観を目指しています。
実際にプロジェクトを進めると、スタジアム、アリーナ単体で回収できるほど甘くはないということも分かりました。だからこそ、ホテルや商業施設と複合型で収益化する構想にしています。
岡田:スタジアムシティは、ツーリズムという点でも長崎を活性化する要素になると思います。
岩下:スタジアムシティは長崎駅から徒歩で約10分という抜群の立地です。長崎駅には2022年9月に新幹線が開通しますし、長崎の名所の1つである稲佐山公園・長崎ロープウェイもジャパネットグループが指定管理者となり、より魅力的な場所へとリニューアルを進めています。
なにより、長崎はもともと観光都市なので、外から来られた方に対するウエルカム感がすごくあります。今も、諫早のトランスコスモススタジアム長崎から駅にかけての道をV・ファーレンロードと名付けて、道路沿いのお店が自発的にもてなしているんですよ。アウェーのファンの方たちに、無料で地元産の豚肉の串を振る舞ったり、かきを焼いたりして迎えています。
岡田:すごいですね。
岩下:長崎は人口が減っていますから、来てもらえることがうれしいんでしょうね。私たちもその文化を大切にしていて、スタジアムやアリーナを設計する上でもホームとアウェーの差を作らないことを意識的に行っています。
岡田:人口の減少が社会課題としてある中で、スポーツをきっかけに長崎に触れていただく機会が増えることは、地域復興の起爆剤になり得ますね。
岩下:スタジアムシティができる場所は三菱重工さんの工場跡地なのですが、長崎市内の魅力的な場所なので、複数の応募があったと聞いています。その中でわれわれを選んでもらえたのは、単なる商業施設よりもスポーツ施設の方が街の活力になると期待していただけたからだと受け止めています。
伊藤:アメリカでは、バスケットの試合がある日は本当にお祭りみたいなんですよ。試合開始の1時間、2時間前から来て、まずバーで飲む。試合が終わってからもアリーナにそのままとどまって、お酒を飲んだり食事をしたり。アリーナに限った話ではなく、NBAの試合があると友人宅や、レストラン、バーに集まって試合を見る。本当に至るところでバスケットボールを楽しんでいます。
ヴェルカも同じように、もちろん1番はアリーナに来てもらいたいのですが、それ以外でもヴェルカの試合があるから、どこどこのバーにみんなで集まろうということが根付いていくといいなと思いますし、長崎はそれができると感じています。そういう意味でも、スタジアムシティができることはとても大きいことです。
岩下:スタジアムシティは大きなチャンスだと感じています。世界に向けて長崎の魅力や平和のメッセージを発信するためにも、サッカーも、バスケも、例えばACLの予選までは開催できる、バスケの世界大会が開催できるという建設基準を意識しています。
もともと年間数百万人の外国の方々が訪れる街なので、街のポテンシャルをうまく生かして、ビジネスと感動を両立できる仕組みづくりにチャレンジしていきたいと考えています。