嵐雲を背景に航海する白い帆のヨット
Incredible storm cloud in the sea while sailing

CEOが直面する喫緊の課題:目下の地政学的危機を切り抜けるにあたり、政策立案者に期待できること


各国政府と企業経営者は、危機的状況下で短期的な危機管理と⻑期的な計画を両⽴させるという困難に直⾯しています。


要点

  • 多数の相反し競合する要因が作用しているため、政策のトレードオフが非常に複雑になっている。
  • 各国政府は、インフレと戦う一方で弱い立場にある人々を守り、エネルギー安全保障と脱炭素化の双方に取り組み、サプライチェーンのレジリエンスと供給保障を共に向上させる必要がある。
  • 一方、CEOは、度重なる混乱を耐え抜く俊敏性と回復力を備えた組織を実現する必要がある。


EY Japanの視点

ウクライナ情勢をきっかけとした物価上昇やサプライチェーンの混乱は、日本企業や日本に居住する人々の暮らしにも大きな影響を及ぼしています。円相場は20年以上経験したことがない円安局面となり、輸入に頼る資源価格の高騰が、エネルギーや素材関係の産業にマイナスの影響を与えています。

日本の公共部門が抱える膨大な政府債、2050年カーボンニュートラルの実現という高い目標など、日本の状況も踏まえて、この局面を乗り切る方策が政府と民間企業の双方に求められています。


EY Japanの窓口

熊井 豊
EY Japan 公共・社会インフラセクター・ストラテジー・アンド・トランザクションリーダー EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 リード・アドバイザリー パートナー
福田 健一郎
EY Japan ガバメント・パブリックセクター・ストラテジー・アンド・トランザクションリーダー EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 リード・アドバイザリー アソシエートパートナー

各国政府がこれほどまでに破壊的なパーフェクトストーム(複数の要因が引き起こす最悪の事態)に直⾯するのは稀なことです。多くの国々がCOVID-19(新型コロナウイルス)によるパンデミックの最悪期を脱しつつあるまさにその時に、ウクライナ情勢が極めて深刻な状況に陥り、その影響は世界各国に波及したため、通常のビジネスに復帰すべく慎重に練られた計画は頓挫しました。

ウクライナ情勢が緊迫化する以前は、インフレ率こそ急上昇していたものの、大半の主要なグローバルマクロ経済変数は明るい兆しを⽰していました。経済成⻑はパンデミック前の⽔準に回復しつつあり、多くの国が完全雇⽤状態に戻る軌道上にありました。しかしウクライナ情勢が経済回復への歩みを⼤きく妨げ、グローバリゼーションに対してさらなる課題を突き付けました。今後CEOはこれらの問題の機先を制し、対処しなければなりません。

もちろん、政府は常に政策のトレードオフに直⾯してきました。しかし現在、多数の相反する⼒が作⽤しているためリスクはより⼤きく、ディスラプション(創造的破壊)はよりダイナミックな動きとなり、状況は錯綜しています。以下に示す4つの重要領域で、難しい選択をする必要があります。

  • インフレへの対処と格差拡大の回避
  • インクルーシブかつサステナブルな成長路線への復帰
  • エネルギー安全保障と脱炭素化公約との両立
  • レジリエンスの強化と資源不足の最小化に向けたサプライチェーンの再構築

かつての確実性は姿を消しディスラプションが常態化するのに伴って、深刻なシステムへの衝撃を回避するには政府はより先⾒的で包括的な政策と戦略を必要とするでしょう。CEOはそれに対応して、⾃社をレジリエンスと俊敏性を備えた組織にする必要があります。今回の「CEOが直面する喫緊の課題シリーズ」では、公共政策に関する論点を取り上げます。CEOはどのように公共政策から影響を受けるのでしょうか。また、公共政策の形成に関与することで、自社の未来を左右することはできるのでしょうか。

夜に熱気球を膨らませている光景
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第1章

インフレへの対処と格差拡大の回避

経済を支え、社会的弱者を守るためには、健全な判断が必要です。

インフレ率上昇が続く

ウクライナ情勢が緊迫化する以前から、パンデミックが引き起こしたサプライチェーンの混乱と消費の増加が相まって、インフレ率は既に上昇していました。消費が増加した要因は、⼀部には⾦融緩和政策と景気刺激を見込んだ財政⽀出によるものですが、消費者の需要が商品からサービスにシフトしていることにも起因します。

そして今、ウクライナ情勢の影響によりエネルギーや⾷料品、その他の⽇⽤品の価格は急騰しています。⽶国消費者物価指数(CPI)上昇率は2022年3⽉に8.5%となり、40年振りの⾼⽔準に達しました。ユーロ圏では、インフレ率は第2四半期に6.9%でピークに達すると予測されています。また、イングランド銀⾏は、英国のインフレ率が2022年後半に10%に達すると予想しています。

米国消費者物価指数(CPI)
2022年3月のCPI上昇率は、40年振りの⾼⽔準。

インフレはパンデミックに起因する政府の債務負担を軽減させるかもしれませんが、その⼀⽅で物価上昇は貧困層に打撃を与え、格差を拡大させます。さらにはポピュリズムを煽る可能性もあります。これは政府にとって困難なトレードオフです。景気後退を引き起こすことなく、インフレを抑制する必要があるからです。

ウクライナ情勢が緊迫化する前でさえ、各国の中央銀⾏は利上げを実施していました。今後もこの⽅針は変わらないでしょう。これはCEOにとって懸念すべき状況です。なぜなら、利上げは経済成⻑を鈍化させ、国⺠の貯蓄額の価値が徐々に下がり、国内の借り⼿の負担をさらに増⼤させるリスクがあるからです。また、⾦利上昇の弊害をより多く被るのは、多額の公的債務を負い、輸出への依存度が⾼い新興諸国です。

財政政策と長期的成長確保の両立

増税や⽀出削減などの緊縮財政政策は特に失業率の低い国にとっては選択肢の1つになり得ます。しかし増税については、社会的弱者の保護そして経済成⻑の保護のため、対象者を絞って実施せねばなりません。

多くの政府が課税に関して検討しているのは、以下のような措置です。

  • 最低法人所得税率
  • エネルギー企業に対する超過利潤課税
  • デジタルサービス企業への課税
  • 炭素税やレジ袋税など、環境・社会・ガバナンス(ESG)の活動を促進するための課税
  • 富裕層への課税強化

これらの措置はすべて、企業に直接的・間接的に影響を及ぼします。

政府の多くは困難な状況にある企業や家庭を⽀援したいと考えているため、インフレ抑制という責務はさらに難しくなります。繰り返しになりますが、⽀援を最も必要としている⼈々に的を絞った暫定措置を実施することが、彼らを迅速に救済し、そして賃⾦・物価の悪循環を阻⽌する鍵となるでしょう。選択肢として考えられるのは、燃料・⾷料品価格の上昇を相殺するための1度限りの⽀援⾦や商品券の給付、失業保険の給付⽔準引き上げ、個⼈所得税の課税最低限の引き上げなどです。

政府がインフレ圧⼒の増⼤と公的債務の増加を防ぐには、政府の効率化と積極的な財政管理をさらに進めるとともに、上記のさまざまな措置を⽐較検討する必要があります。そのために実施できることとして、コスト管理の強化、債務の借り換え、資産売却や不動産活⽤⽅法の改善、脱税や詐欺の取り締まり強化などが考えられます。

政府はまた、インフレとの⻑期的な戦いのために先⾒的なアプローチを必要としています。これには、開かれた競争的な市場維持に向けた取り組みや、エネルギーや重要物資の代替調達源開発による供給サイドの制約軽減措置などが挙げられるでしょう。

木漏れ日に見とれる男女のハイカー
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第2章

インクルーシブかつサステナブルな成長路線への復帰

経済成長の推進に焦点が当たっていますが、いかなる犠牲を払っても達成すべきだという訳ではありません。

ウクライナ情勢は、パンデミック後に始まりつつあった世界経済の回復を遅らせました。国際通貨基金(IMF)の予測では、世界経済成長率は、2021年の6.1%から2022年と2023年には3.6%に減速する見込みです。これは、貿易とサプライチェーンの混乱、物価の上昇、金融・財政の引き締め政策、投資家と消費者の信頼感の低下などの要因によるものです。

2021年の世界経済成長率
IMFの報告による。
2022年・2023年の世界経済成長率
IMFの直近の予測に基づく。

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CEOが直面する喫緊の課題:絶え間なく続く混乱を乗り切り、目標に向かって進むには

過去に例を見ないほど頻繁に発生している数々の衝撃的な出来事が、世界と経済を変容させています。企業は、サステナビリティが格段に向上し、地域化、デジタル化が進む世界に備える必要があります。

    パンデミックが誘発した景気減速がかねてより存在していた格差をさらに拡⼤し、貧困層や貧しい国々に深い痛手を負わせたのと同様に、ウクライナ情勢による経済への逆⾵によって最も⼤きな打撃を受けるのは社会的弱者や低所得国となるでしょう。また、経済成⻑と炭素排出量が密接に関連していることは歴史的に明らかですが、経済成⻑促進のために化⽯燃料に依存すれば、壊滅的な気候変動を回避するべく世界規模で取り組んでいる努⼒は⽔泡に帰すでしょう。
     

    経済成長の再始動と、すべての人にとってより公正な未来を両立させる
     

    これは各国政府にとって鍵となる課題です。政府がよりサステナブルな未来を⽬指すにあたって、以下に挙げる優先事項が検討の対象になるでしょう。
     

    • 価格⾼騰の影響を最も受ける企業やセクターに経済的⽀援を提供する(この⽀援が経済的、社会的、または環境的に⼤きなメリットを⽣む場合)
    • 近年の危機で⼤打撃を受けたセクターや地域、およびグリーン・トランジション(緑の移⾏)の影響が⼤きいセクターや地域の雇⽤創出と技能研修に注⼒する
    • ⻑期的な雇⽤と持続可能な将来の成⻑を期待できる重要セクターの研究開発を⽀援し、外国直接投資(FDI)誘致に向けて斬新な政策を策定する
    • 最も炭素集約度が高く環境を汚染する産業への補助⾦を削減し、農業⽣産を増強して世界的な⾷糧不⾜に対処するために農業への補助⾦を検討する
    コロラド州のエレファントバットレスで綱渡りをする男性。
    3

    第3章

    エネルギー安全保障と脱炭素化公約との両立

    ウクライナ情勢はグリーンエネルギーへの移行を促すのでしょうか、あるいは妨げるのでしょうか。

    国際エネルギー機関(IEA)によると、COP26での公約が達成されたとしても、気温上昇を1.5°Cに抑えるという⽬標達成に向け2030年までに必要な排出量削減にはまだ相当量の不⾜があります。ウクライナ情勢を受けて各国がロシア産の⽯油や天然ガスへの依存を減らそうと努めるなか、化⽯燃料からの脱却という課題がより切迫したものになりました。今私たちが直⾯しているのは、ウクライナ情勢はグリーンエネルギーへの移⾏を促すのか、あるいは妨げるのかという重⼤な疑問です。

    各国の政府は深刻なジレンマに陥っています。炭素排出量の削減を公約する⼀⽅で、ロシア産天然ガスの代替資源として⼀時的に⽯炭を使⽤するなど、化⽯燃料の開発を通じてエネルギー主権を強化しているのです。再⽣可能エネルギーはまだ不⾜分を補うには⼗分ではないため、移⾏の進展は⼀様ではありません。CEOは、短期的なエネルギー需要に応じつつ、脱炭素化の公約の早期達成に貢献するために安定した政策環境を必要としています。

    エネルギー効率の向上と移行の加速

    政府には、既存の低炭素排出エネルギー源による発電を最⼤化するなど、複数の選択肢があります。専⾨家の多くは、原⼦⼒エネルギーなくしてネットゼロ経済の実現は不可能であると考えています。IEAは、排出⽬標を達成するためには、2040年までに原⼦⼒産業の規模を倍にする必要があるとしています。これに対しては懐疑的な国もありますが、多くのEU諸国では原⼦⼒開発に向けての機運が⾼まってきています。例えばフランスでは、2050年までに少なくとも6基の原⼦炉建設が計画されており2 、英国では2030年までに最⼤8カ所の発電所の新設を計画しています。3

    政策⽴案者は、いくつかの⼿段を通じて、太陽光やグリーン⽔素などの再⽣可能エネルギーへの移⾏を加速することができます。例えば、低⾦利で資⾦調達をする機会を提供することにより、⺠間投資家が新技術に投資する際のリスクを軽減できますし、税制上の優遇措置、有利な条件での融資、グリーンボンドにより⽀援を提供することも可能です。政府⾃体が研究開発のための⽀出を増やすこともできるでしょう。また、家庭や企業に対して、断熱材やスマート暖房、家庭⽤太陽光発電機の設置を促すインセンティブを提供することでエネルギー効率を⾼めると同時に、幅広い業界に機会をもたらすことが可能です。

    カーボンプライシングは、グリーンエネルギーへの移⾏を促進し得る強⼒な低コストのメカニズムです。これは炭素税と炭素排出量取引を通じて、商品やサービスの⽣産に使⽤される天然資源の社会的価値を正確に価格に反映させて市場に価格シグナルを送り、世界の炭素排出量の抑制につなげるものです。しかし、メカニズムの設計には、納税義務が⽣じる事例を慎重に検討する必要があります。炭素税の⽀払いが想定される対象は現実的には、そうならないかもしれません。国際的な協調に基づくアプローチが公正で効率的なカーボンプライシング制度の形成と、企業の戦略的な計画立案につながるでしょう。

    海上のコンテナ船の上空にかかる虹
    4

    第4章

    レジリエンス強化に向けたサプライチェーンの再構築

    政策立案者は、世界貿易を制約することなく、重要物資の供給を確保する必要があります。

    パンデミックとウクライナ情勢の影響で、⽯油・天然ガス、⾷料品、農産物、その他の重要物資の供給が妨げられてきました。この背景には、製品輸送と物流の混乱に加えて、ロシア産品に対する貿易制限があります。

    パラジウム、ニッケル、チタンなどのグリーン・トランジション(緑の移⾏)に不可⽋な⾦属や、ネオンガスその他の化学物質の供給をロシアとウクライナに依存しているためマイクロチップ、電気⾃動⾞のバッテリー、太陽光発電パネルなどの⽣産が滞り、⾃動⾞から家電製品までさまざまなセクターが打撃を受けています。

    さらに憂慮すべきことに、世界の⾷糧供給は危機的状況にあります。ウクライナ情勢が緊迫化する以前には、ロシア・ウクライナ両国で世界の⼩⻨輸出の30%超、⼤⻨では30%近くを占めていました。4 また、ロシアは世界最⼤の肥料輸出国でもありました。⽬下の⾷料品価格の⾼騰および主⾷となる作物、家畜飼料、肥料の深刻な不⾜が世界的な⾷糧危機を引き起こす恐れがあります。

    低所得諸国、特に北アフリカ、アジア、近東の低所得国では、ロシアとウクライナからの⾷糧・エネルギー輸⼊への依存度が⾼かったため、企業、特に多国籍企業は慎重に対応したいと望むでしょう。これらの地域では、極度の貧困、飢餓、社会不安、政情不安が深刻化しかねません。また、何百万もの⼈々が難⺠になる恐れがあります。

    ウクライナ情勢の緊迫化以来、世界の食糧供給は深刻な状況にあります。特に貧しい国々を中心に、世界的な食糧危機が迫っている可能性があります。

    各国政府は、⾷料安全保障を確保し、必須のエネルギー・物資の不⾜や価格⾼騰による最悪の結果を回避するために迅速に⾏動する必要があります。問題は、世界貿易をさらに抑制しかねない保護主義に訴えることなく、⾃国のエネルギーと重要物資の供給を確保しなければならないことです。

    パンデミック時のような輸出管理を導⼊すれば、貧しい国々をさらに⼤きなリスクにさらすことになるでしょう。国際連合は、供給の安定化に向けて国際協⼒の強化を求めており、可能であれば⽣産を増加させるよう呼びかけています。⼀⽅、最も豊かな国々であるG7加盟国の農業⼤⾂は、各国に引き続き市場を開放するよう要請しています。

    脆弱性の軽減に必要なフレームワークの策定

    パンデミックとウクライナ情勢は、従来のサプライチェーンの脆弱性を浮き彫りにしました。⻑期的には、CEOは直線的でグローバル化された単⼀のサプライチェーンを、コスト効率に基づいて構築するというレガシーモデルを⾒直す必要があります。多くの政府がレジリエンス向上と国外への依存低減のため、保護主義的な政策を実施してきました。これには、⾃国や地域のエコシステムの強化を⽬的とする⽶国やEUの半導体チップ保護法のような、必需品の製造拠点の国内回帰や近隣国への移転を促すための融資やインセンティブの提供などがあります。

    しかし、CEOや政府はグローバリゼーションと地域化の利点も取り⼊れたいと考えるはずです。供給ネットワークの多様化と地域への配分を進めることで競争⼒を犠牲にすることなく、主要物資の国外への依存を軽減することができます。各国政府がこれを促進するにあたって取り得る措置には、反競争的な統合の防⽌や市場参⼊障壁の低減などが考えられます。また、消費者や従業員、投資家は、サプライチェーン内のサステナビリティと透明性の向上を望んでいます。政府は規制の枠組みを策定し、遵守状況を監視することでこれに貢献できます。

    未来を守る支えとなるレジリエンスの構築

    パンデミックに続いて発生したウクライナ情勢によって、政策⽴案者が直⾯しているジレンマはさらに深刻になりました。各国政府は、短期的な課題に対処するため迅速に⾏動せねばなりません。その際には、地域の状況を踏まえて考案された、必要に応じて修正できる幅広い政策⼿段を⽤いるべきです。しかしこれと同時に、⻑期的な⽬標を⽀える取り組みも必要です。

    企業の側では、急速に変化する政策環境に機敏に適応する必要があります。CEOは、⾦融引き締め政策に加えて、企業や富裕層を対象とする新たな課税や課税強化に備えるべきです。公共⽀出はさらに抑制されるかもしれませんが、⽣活費上昇により最も深刻な影響を受ける⼈々には⼀時的な救済が提供されるとみられます。また政府は、研究開発に投資する企業への⽀援、将来のスキル開発、グリーン・トランジション(緑の移⾏)など、持続可能な経済成⻑に最も寄与する措置を優先するでしょう。

    世界貿易に関与する企業はウクライナ情勢の全般的な影響が顕在化していくなか、さらなる混乱と不安定な状況に備えるべきです。短期的には必需品の供給を確保しつつ、激しい競争下にある世界市場での地位を⻑期的に維持するためには、政策⽴案者との緊密な協⼒が必要です。政府とビジネスリーダーが協⼒することで経済の活性化とサステナブルでインクルーシブな成⻑を実現する機会をつかみ、現在の混乱を乗り越えることが可能になります。

    CEOがとるべき鍵となる対応策

    1. 地政学的状況と政策環境の変化を踏まえると、CEOは部⾨横断的な戦略地政学チームの⽴ち上げを検討し、グローバルサプライチェーン管理のあり⽅を⾒直す必要があるでしょう。
    2. インフレ率上昇を抑制するための取り組みの一環として、CEOは可能な限り自社の原価管理を徹底し、コスト上昇を消費者に安易に転嫁することは避けるべきです。
    3. 各国政府が財政収支の改善を図るなか、CEOは政策立案者と建設的な協力関係を形成し、⻑期にわたる包括的な成⻑および競争⼒と⽣産性の向上につながる賢明な税制改⾰を⽀援する必要があります。
    4. CEOは⻑期的な競争⼒増強に向けて、競争法に関する政府の規制改⾰と労働市場改⾰を⽀援するべきです。
    5. CEOはネットゼロ⽬標の堅持、政府との協⼒によるセクター別ロードマップの策定、クリーンエネルギーへの投資においてさらに広範なESG⽬標の重要性を⾼めるために、⾃らが果たすべき役割を認識する必要があります。

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    過去に例を見ないほど頻繁に発生している数々の衝撃的な出来事が、世界と経済を変容させています。企業は、サステナビリティが格段に向上し、地域化、デジタル化が進む世界に備える必要があります。


      サマリー

      近年発⽣した数々のショッキングな出来事は私たちに度重なる衝撃を与えていますが、これは決定的な課題を各国政府とCEOに突き付けています。政府は⾮常事態への対応と、⻑期的⽬標にも適いつつ万人にとってより良い未来につながる政策を両⽴させる必要があります。それと同時に、CEOは衝撃そのものだけではなく、衝撃への政府の対応策にも対応できるよう⾃社の態勢を整えなければなりません。


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