EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
2023年もテクノロジーは地政学的競争の戦略的重点分野となり、この傾向が、テクノロジーのブロック出現をさらに加速させそうです。
要点
本記事は2023 Geostrategic Outlookの 5. Hardening of technology blocsを翻訳したものです。英語版と本記事の内容が異なる場合は、英語版が優先するものとします。
経済的自給自足を巡る地政学的競争で近年重視されているのは、重要なテクノロジーの内製化です。2023年もテクノロジーは地政学的競争の戦略的重点分野となり、貿易・投資に対する規制措置の拡大が図られるものとみられます。こうした傾向が、個々に分断されたテクノロジーのブロック出現をさらに加速させるとみられます。
ウクライナ情勢を受けた厳格な先端技術輸出規制措置により、ロシアは実質的に先進国・地域のテクノロジー分野から締め出されました。米国、EU、日本やこれら諸国の同盟国は、半導体や、その設計に必要なソフトウェアなど基幹テクノロジーへの中国によるアクセスの規制をさらに強化する可能性が高いと思われます。米国が2022年10月に発表した輸出規制措置は、こうしたセクターにおける中国の技術力の向上を積極的に阻む姿勢への本質的なシフトにほかなりません。中国も、新たな輸出管理法でこれに対抗する構えを見せています。
EUとその加盟国が監視を厳格化させていることから、国境を超えた技術投資に対する規制措置も拡大する可能性が高そうです。また、対米外国投資委員会(Committee on Foreign Investment in the United States:CFIUS)の権限が強まる中、米国はさらに「アウトバウンド」投資スクリーニングプログラムを導入する見通しです。一方、CHIPSプラス法(CHIPS and Science Act)のようなインセンティブ政策を伴う規制措置は、中国など戦略的競合国とされる国への、機密問題がある投資を防ぐ働きをすると思われます。
データローカライゼーション関連法や、国・地域などによりそれぞれ異なる技術基準も、テクノロジー分野でのブロック化を加速させるかもしれません。中国、インドネシア、インドなど、大きな影響力を持つ国・地域で規制措置や法的枠組みが増え、デジタル業務が複雑化する傾向にあります。また米国とEUがエマージングテクノロジーで連携する一方で、中国は引き続き国際機関における影響力の拡大を図っている中で、技術基準の地政学的重要性も増すものとみられます。
【共同執筆者】
許斐 建志
(EYパルテノン マネージャー)
EYパルテノンにおいて戦略コンサルティング業務に従事すると同時にEYの地政学戦略グループメンバーとして、地政学に係るサービスを幅広く提供している。
※所属・役職は記事公開当時のものです。
経済的自給自足を巡る地政学的競争で近年重視されているのは、重要なテクノロジーの内製化です。2023年もテクノロジーは地政学的競争の戦略的重点分野となり、貿易・投資に対する規制措置の拡大が図られるとみられます。こうした傾向は明確に分断されたテクノロジーのブロック化をさらに加速させるとみられます。