中村:社会的価値の創造と言っても、社員やお客さま、投資家などステークホルダーはさまざまで、広い視野が必要かと思われます。目指す未来像についてお聞かせください。
髙市 氏:社会的価値の創造を達成した先にある幸せな成長については、まだ全体像を描けていないのが現状です。試行錯誤の途中ですが、あるべき社会像を見据えて、注力すべき課題を決定するフレームワークの一つである「フューチャーデザイン」を試行しています。社会課題ごとに的を絞って取り組んでいくことで、徐々に未来像が浮き彫りになってくるはずです。
ただし、将来の課題は新たに出てくる可能性もあるので、正解を決めつけるのではなく、自由闊達(かったつ)な課題の探求や、意見を出すような柔軟さは大切にしていきたいですね。多種多様な視点から見ることで違う出口を見いだせる可能性もあるので、グループ全体に取り組みを広げたいと考えています。
中村:EYは「Building a better working world ~より良い社会の構築を目指して」をパーパス(存在意義)に掲げているので、社会的価値の創造には深く共感します。SMBCグループとの取り組みでは、持っていなかった視点や意見が双方向から出てきて、新しいアイデアが生まれることがあります。共に取り組む過程でより質の高いものを生み出すことができ、前進につながっているとしたら光栄です。
髙市 氏:EYとSMBCグループには同じ方向を向いた基本方針があり、目指す未来を共有できていることが共創を可能にしているのだと思います。
社会的価値の創造には正解がなく、独りよがりになりがちなテーマだからこそ、社外からの信頼や評価が大切です。EYは、第三者の立場からSMBCグループの取り組みを冷静に見て、社会の求める方向に進んでいるか、どのような立ち位置にいるか、コミュニケーションを取りながら伴走してくれる、力強いパートナーです。
中村:目に見えない価値を金融機関が視覚的に表現すること、経営の基本方針の中心に社会的価値の創造を据えること、いずれも難易度が高い取り組みです。しかし、難しいからこそ取り組む意義は大きいと思います。インパクトに関する明確な物差しはまだ市場にはありませんが、目標や指標は今後必要になるはずです。SMBCグループがインパクトリーダーとして社会をけん引していけるよう、引き続きお役に立ちたいと思います。