海外の保険会社により公表された2023年次財務報告から得られる所見 ~IFRS第17号及びIFRS第9号の適用~

海外の保険会社により公表された2023年次財務報告から得られる所見 ~IFRS第17号及びIFRS第9号の適用~


日本の保険会社によるIFRS適用の検討、IFRS適用域内の保険子会社の財務分析、IFRS適用地域への投資判断の際、保険業界で先行する開示事例の分析は有用となるでしょう。


要点

  • EYはグローバルに活動する保険会社45社の連結財務諸表(2023年12月31日時点)におけるIFRS第17号及びIFRS第9号に関する各社の開示を分析し、独自に財務指標を定義・計算した上で比較した。
  • 加えて、主要なメソドロジーの選択(例えば、保険契約負債の測定に用いる割引率の決定方法)やKPIに関する分析も実施している。

欧州を中心に多くの保険会社が2023年1月1日からIFRS第17号及びIFRS第9号の適用を開始しています。

EYはグローバルに活動する保険会社45社の年次財務諸表におけるIFRS第17号及びIFRS第9号の適用の影響について分析しました。レポート“ Reporting under IFRS 17 and IFRS 9 Observations from “Year-End” 2023 financial statements published by insurers(PDF、英語版のみ)”では、その分析結果について、詳しく考察しています。
 

同レポートでは、

  • 2023年12月31日時点の保険サービス損益に占める非金融リスクに係るリスク調整のリリース金額の割合
  • 2023年12月31日時点の(一般モデル及び変動手数料アプローチが適用される)残存カバーに係る負債について、将来キャッシュ・フローの現在価値に対する、非金融リスクに係るリスク調整の割合
  • 2023年度中の新契約のCSMと、当該新契約のキャッシュ・インフロー(予想保険料)の現在価値の比較(新契約の収益性)
  • (純損益へのリリース前の)2023年度末のCSM残高に対する、CSMの純損益へのリリース額の割合
  • 2023年12月31日時点のCSM残高合計に対する、移行時に修正遡及アプローチが適用された契約グループ、公正価値アプローチが適用された契約グループ、その他の契約グループごとのCSMが占める割合
  • CSMが純損益に認識される将来期間
  • 発行した元受保険契約グループのCSMに対する、再保険契約のCSMの割合
  • KPI(コンバインド・レシオ、ROE、営業損益〈operating profit〉や税引前純損益〈net profit before tax〉)の期間比較やIFRS第17号適用による影響
  • 保険契約負債の測定に用いる割引率(非流動性プレミアムを含む)や非金融リスクに係るリスク調整の決定方法、カバー単位の決定方法及び保険金融収益費用に係るOCIオプションの適用有無など

などが分析されています。

日本の保険会社によるIFRS適用事例はまだ少ないですが、今後、自社におけるIFRSへの移行の検討、IFRS適用域内の保険子会社のIFRSに基づく財務数値の分析、及び同地域への新規投資の検討等に際して、先行する事例の分析は参考となるものでしょう。

レポートの全文は、「Reporting under IFRS 17 and IFRS 9 Observations from “Year-End” 2023 financial statements published by insurers(PDF、英語版のみ)」をご覧ください。
PDF資料をダウンロード(英語版のみ)



サマリー 

多くの国及び地域で、2023年1月1日よりIFRS第17号の適用が開始されています。2023年12月時点の年次財務諸表をもとにEYがその財務的側面に与える影響についてさまざまな角度から分析を行いました。IFRS第17号が与える影響を理解することは、日本の保険会社によるIFRS適用の検討、IFRS適用域内の保険子会社の財務分析、IFRS適用地域への投資判断の際、有用となるでしょう。


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