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家計消費支出や住宅ローン金利の上昇が可処分所得の伸びを上回ったため、家計貯蓄は減少しました。貯蓄率は、所得の8.3%から7~9月四半期には6.9%に低下し、パンデミック前の水準に戻りました。消費者は最近では、貯蓄の取り崩しで支出増と裁量的支出をカバーするようになっています。金利がさらに上昇し、新型コロナウイルス感染症関連の社会保障費が減少すれば、消費は低迷し、貯蓄はさらに減少するでしょう。
金利と生活費の上昇、実質賃金の低下、住宅価格の下落が重なり、消費者支出の後退が予想されます。労働市場が堅調であることと、住宅ローン保有者のかなりの割合が超低金利の固定金利であることが消費を支えていますが、こうした住宅ローンの多くが来年には超低金利から高金利に切り替えられるため、消費の伸びは鈍化し、後退する可能性さえあります。
スキル人材不足や生産能力に制約のある経済下での政府支出の増加
政府支出は、州・地方自治体レベルの支出や国防費の増加に支えられ、前期比0.1%増にとどまりました。
国全体で大規模なインフラプロジェクトのパイプラインがあるにもかかわらず、公共投資は連邦政府と州・地方政府の両方で減少し、当四半期に3.4%減となりました。これは、政府所有の公営企業によっていくぶん相殺されました。
政府の消費と投資のGDPに対する比率は、歴史的にも、依然として高い水準にあります。このような政府支出は、経済におけるスキル人材不足と生産能力の制約を悪化させるとともに、インフレの圧力を高め、RBAの仕事を難しくしています。
経済的な課題に直面しているにもかかわらず、企業は将来への投資を続けており、7~9月四半期の企業投資は主にインフラ投資により2.5%増加しました。民間投資は、住宅建設と非住宅建設がともに増加し、供給制約が緩和されたため、今期は0.8%増加しました。この上昇は、機械設備投資の減少(2.7%減)と、不動産および不動産譲渡費用を反映した所有権移転費用の11.2%減によっていくぶん相殺されました。
生産能力の制約がわずかに緩和したことを受けた、住宅投資の回復
住宅投資は3期連続で減少した後、本四半期を通じて1%増加しました。これは、労働力や資材の不足が緩和されたこと、またパンデミック時の刺激策により、住宅プロジェクトのパイプラインが充実していたことによります。さらに、7月にニュー・サウス・ウェールズ州で洪水が発生しましたが、当四半期は雨天の影響が前四半期に比べて少ない結果となりました。
7~9月四半期の住宅投資は、新築物件が 3.4%増加した一方で、改築・増築物件は 2.2%減少しました。
7~9月四半期に3回連続で50ベーシスポイント(5月の25ベーシスポイント、6月の50ベーシスポイントに続く)の金利が引き上げられたため、住宅市場の活動は低下し、所有権移転費用が大幅に減少しました。この減少は11.2%となりましたが、それでも譲渡費用はパンデミック前の水準と比べると19%増加しています。10~12月四半期には3回連続で25ベーシスポイントの金利が引き上げられるため、所有権移転費用はさらに低下すると思われます。
輸入増加による観光客や地方輸出の増加の相殺
純輸出は、輸入の増加(3.9%)が輸出の増加(2.7%)を相殺し、成長率を0.2%ポイント引き下げました。
輸出は、商品およびサービス輸出の増加により、成長率に0.6%ポイント貢献しました。サービス輸出は、オーストラリアの国境開放に伴う留学生や観光客の入国が支えとなりました。商品の輸出は、天候不順などの影響で石炭やガスの輸出が減少したものの、ウールや綿を中止とした地方部からの輸出と鉄鉱石の輸出の急増に支えられました。
輸入では、オーストラリア人の海外旅行者数の増加により、この増加分を相殺し、成長率を0.8%ポイント引き下げました。
在庫の変動は、4~6月四半期に減少した後、クリスマス前の鉱業と小売業を中心に0.2%ポイント成長率に貢献しました。
各州・特別地域で堅調な家計消費
州の最終需要は、成長が停滞したビクトリア州を除く全ての州・特別地域で増加しました。これは2021~-22年の好調なパフォーマンスに続くものです(最近の州・特別地域の分析はこちら)。国内活動の増加に主に貢献したのは接客業と旅行関連の支出で、ほとんどの州・特別地域で増加が見られました。西オーストラリア州では、2022年1~3月四半期に州境が再開されたことで旅行が回復し、輸送サービスが前期比で30%以上増加しました。
ビクトリア州では、民間消費と投資の増加がありましたが、政府の医療関連支出の削減と資産取得の減少による公共消費と投資の減少で相殺されました。
北部準州(ノーザンテリトリー)は、住宅建設、道路インフラ、公共事業への投資の増加を背景に、2.7%という最も強い四半期成長率を記録しました。
ニュー・サウス・ウェールズ州では最近の洪水により、被災地への支援や修繕のために政府支出が増加しました。このような状況にもかかわらず、ニュー・サウス・ウェールズ州はプラス成長を示し、州の最終需要は四半期を通じて0.7%増加しました。
最終消費の増加は、RBAが実施した利上げに反応し始めた住宅用不動産市場の減速によって一部相殺されました。このため、ほとんどの州と特別地域で住宅譲渡費用が減少し、特にビクトリア州とニュー・サウス・ウェールズ州では7~9月四半期に10.4%と15.5%の減少を記録しました。