地政学的な不確実性が高まる中で、製造業企業が成功に向けて適応するには

地政学的な不確実性が高まる中で、製造業企業が成功に向けて適応するには


製造業企業の経営陣が不安定化の進む世界で成功するには、アジリティ(俊敏性)とレジリエンス(回復力)の向上を目指し、戦略的に行動する必要があります。


要点

  • 地政学的な変化とグローバルな事業環境における不確実性の高まりは、製造業企業に多大な影響を与えている。
  • 製造業企業のCEOと取締役会は、グローバルなシナリオ分析の実施を通じて、将来起こり得るさまざまな事態に備えることができる。
  • 製造業企業は、先行きは見えずとも、そのときにレジリエンスを高めるために、今、「後悔しない」ための一連の行動をとる必要がある。


EY Japanの視点

昨今の東アジアにおける地政学的緊張の高まりと、米中関係に端を発して世界的に広がる製造業向け規制や産業政策は表裏一体であり、複雑さを増しています。

東アジアへのサプライチェーン依存は有事において深刻な事業リスクをもたらします。また、その回避としてすでに自国製造回帰や新興国へのフレンドショアリング化が世界的に進んでいます。

リスク影響を最小化するためには、直接の顧客だけではなくエンドマーケットまで見据えた自社サプライチェーンの可視化と影響分析が必須となります。

また、シナリオが進展した場合にどのような経営対応をするかのガイドラインを具備し、いざとなったときに速やかに対応できるよう事前の合意形成もしておく必要があります。

同時に、リスクだけではなく、日本企業にとってこの大きな変化を「オポチュニティ」と見なして、どのように自社の新たな事業機会につなげるかという視点も重要です。

サプライチェーン再編のために世界では多大な官民一体投資が行われています。実需がどこに落ちるのかを見極め、勝ち馬を見抜き、新たな顧客を獲得するためにグローバル戦略を再考する機会でもあります。

EYでは世界に広がるネットワークによるタイムリーな分析と深い産業理解に根差した多くの実績があり、実効性のある支援が可能です。


EY Japanの窓口

野村 友成
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 EYパルテノン ストラテジー パートナー

インフレ、景気後退、国際情勢、気候変動、貿易摩擦、パンデミック、エネルギーへのアクセス、産業スパイ、サイバー攻撃など、企業のリーダーが目にする、地政学的状況に直接・間接に由来する脅威となる事柄は日ごとに多くなる一方です。

このことは、とりわけ製造業企業は該当し、次に述べる業界独特の複雑さがある中で地政学的な混乱にさらされています。多くの製造業企業が、さまざまな国で⾼価値製品を⽣産する事業拠点に、⼤規模な⻑期投資を⾏ってきました。製造業企業はまた、広範囲に拡⼤したサプライチェーンから供給される多くの資材にも依存しています。さらに顧客や消費者に保守などのアフターサービスをグローバルに提供し、プロダクトの使⽤を通じて国際的にデータの収集、送信、分析を積極的に実施しています。直接的には影響を受けない他業界の企業でも、サプライヤーやエコシステムパートナーとして同じバリューチェーンに関与することで、深刻なリスクを抱えます。

規模やバリューチェーンにおける地位に関わりなく製造業企業は、地政学的影響はかつてない広範なものであり、簡単には軽減しないことを理解しつつあります。こうした状況を受け、製造業企業は将来起こり得るさまざまな事態について先⾒性をもって検討し、戦略と事業運営に新たな⽔準のアジリティを取り入れる必要があります。

第1章  グローバリゼーションを後にして
1

第1章

グローバリゼーションを後にして

現在、製造業企業の多くが、相互に結びついた地政学的脅威に備えるために投資しています。

今回のグローバルな事業環境の変化がとりわけ私たちの神経をとがらせるているのは、地政学的・経済的な相対的安定性が保証されているも同然に感じられていた⻑いスパンから、私たちが抜け出しつつあるからです。
 

ベルリンの壁の崩壊後30年近くにわたり、製造業企業は、広⼤な新市場への進出、⽣産コストの劇的な削減、そしてイノベーションの想像できないほど膨⼤な恩恵を受けてきました。政治的緊張と市場の変動によるリスクは、グローバルな競争市場の拡⼤により⽣じる⼤きなメリットに⽐べれば、比較的⼩さく陰は薄いものでした。

しかし、時代は変わりました。現在、製造業企業の⼤半が、相互に関連する重⼤な地政学的脅威に備えるために投資しています。EY CEO Outlook Pulse October 2022では、製造業界の回答者の93%が、地政学上の問題のために戦略的投資計画を変更し、レジリエンス向上と防御態勢の強化を⽬的とする投資を⾏ったと述べています。過去12カ⽉間に計画された買収を完了できなかった、または中⽌した企業(93%)のうち、4分の1近くが、その理由として地政学上の緊張と不確実性を挙げました。

戦略的投資計画に対して次のような変更を実施しましたか。

今後については、36%が「地政学的緊張のさらなる⾼まり」を、企業の成⻑の前に立ちふさがるリスクの3位に挙げています。選択肢の中でもう1つの明白に地政学的リスクである、「グローバル経済の地域化/分断」を挙げたのは30%で、僅差といえました。残りの選択肢についても、いずれも政府の活動やグローバルな事業環境の性質と直接または間接に関連しています。

貴社の成長にとって最大のリスクだと思うのは次のうちどれですか。

⼀連の地政学的な動きに1つずつ応じて戦略を調整するのは容易なことではありません。その難しさは、世界的なパンデミック、ウクライナ情勢、世界中のサプライチェーンで⽣じた⼤規模な資材不⾜といった、数々の、誰も想像すらしなかった事象の規模からも明らかです。意思決定者である経営者は、将来の地政学的状況について、有意義な分析は不可能でただ受け⼊れるしかない「既知の未知」として扱うべきであるとして、自身の思考を合理化できるかもしれません。

しかし、最も大きな成功をつかむリーダーは、予測不能なことが多過ぎると⾔い訳し諦めるのではなく、むしろ⾝を乗り出して積極的に措置を講じ、態勢強化を図ることでしょう。このような状況では、包括的なシナリオプランニングが強固な戦略の策定に不可⽋なツールになりそうです。シナリオプランニングとは、将来起こり得る地政学的状況の範囲とそれに相応するリスクと機会を細部まで思い描くことです。

第2章  4つの地政学的シナリオと、製造業企業にとってそれらが意味するもの
2

第2章

4つの地政学的シナリオと、製造業企業にとってそれらが意味するもの

さまざまな事象の進展によって、グローバルな事業環境に影響が及ぶ可能性があります。

EYの CEOが直面する喫緊の課題 シリーズでは、 先頃、 今後5年間に現実に起こり得る4つの地政学的状況に関する未来のシナリオについて考察しました。これらの起こり得るシナリオは、国際関係、貿易、およびより広範な経済政策の変化によってグローバルな事業環境がどのように影響を受けるかを示しています。

上図は、この4つのシナリオを、国際ビジネスに対する制限の強度に応じ、強いものから順に表⽰したものです。

1. 自立統治 

新たな孤⽴主義時代の到来により、国際貿易が減退します。このため、⼤多数の製造業企業の成⻑が⼤幅に減速する⼀⽅で、戦略物資の国内⾃給達成に貢献できる企業には機会が⽣まれます。企業は、国内にフォーカスした成⻑戦略の採⽤を迫られ、垂直統合の追求または隣接業界への転換を迫られると考えられます。

2. 第二次冷戦

先の冷戦と同様に、2度⽬の冷戦においても、企業は明確に定められた経済ブロック圏内での取引を迫られ、これにはまた、事業経営とサプライチェーンの⼤規模なオンショアリングおよびニアショアリングが伴います。防衛などの⼀部のセクターは成⻑すると考えられますが、ほとんどのセクターは市場機会の減少と⼈材難の深刻化に直⾯するとみられます。

3. 友好国優先 

この将来シナリオにおいても、世界の貿易と投資は抑制されるとみられますが、⼀⽅で製造業企業は、多くの地域貿易圏やその他の「友好的な」国・地域における複数の経済ブロック圏の中で事業を営むことになると考えられます。しかし、保護主義、サステナビリティを巡る懸念、ならびに「フレンドショアリング」のため、ビジネスの複雑性とコストは増⼤するものと考えられます。欧⽶と中国それぞれの貿易ネットワーク間における貿易摩擦のため、不確実な状況も続くとみられます。

4. グローバリゼーションLite

このシナリオが実現した場合、市場の開放度は若⼲低下するものの、数年前までの状況に似たものになることが想定されます。世界経済の⼒強い成⻑と緊張の緩和が、効率的な⼈材市場と相まって、投資とM&Aを活発化させる要因になるでしょう。⼤部分の製造業企業にとって、このシナリオは他とは⽐較するまでもないほど好ましいものですが、残念ながら実現する可能性はもっとも低いとみられます。

「グローバリゼーションLite」シナリオからの乖離が拡⼤していけば、製造業企業は、⾃社のアジリティとレジリエンスを試されることになると考えられます。「第⼆次冷戦」シナリオや「⾃⽴統治」シナリオに近い状況が将来実現すれば、多国籍製造企業にとって、世界の市場と事業⽴地へのアクセスが極めて困難になるか、そもそもアクセスできなくなる可能性があることから、戦略的な問いを自らに問うことが必要となります。

第3章  未来を理解する:地政学的シナリオの枠組み
3

第3章

未来を理解する:地政学的シナリオの枠組み

製造業企業は将来起こり得るさまざまな事態を考慮して、アジリティを新たな⽔準に引き上げる必要があります

各地政学的シナリオから個々の製造業企業が受ける影響は⼀様ではありませんが、そうした影響が企業全体に及ぶことになるという点では共通しています。これを踏まえ、EYではそれらの影響を評価するにあたっては、次に示す9つのポイントに焦点を絞った、幅広い分析フレームワークを利用しています。

地政学的シナリオ分析の主要ポイント

異なるセクターに及ぶ種々の影響を事例に基づいて説明するため、航空宇宙・防衛セクターと化学・先端材料セクターの分析を通じて明らかになった重要ポイントを次に取り上げます。

取り上げる重要ポイント:航空宇宙・防衛

  • 顧客と収益
    ⺠間航空宇宙産業の成⻑は中国市場に依存しており、このことが、より極端なシナリオ下におけるリスク領域として浮上しています。ボーイング社の最新の2022年10⽉の⾒通しでは、今後20年間で世界の航空機納⼊台数の20%超を中国市場が占めるようになると予測しています。欧⽶のサプライヤーによる中国市場へのアクセスが困難になったり、完全に市場から締め出されたりすることが現実化する場合、同セクターの企業のうち多様化をより積極的に進め、価値の新たな源泉を開拓した企業が、もっとも強いポジションを取ることになると考えられます。

    ⺠間航空宇宙産業とは対照的に、地政学的緊張の⾼まりを想定するシナリオでは、防衛産業は当然恩恵を受けることになります。「第⼆次冷戦」シナリオ下では、企業規模と既存の国際的取引関係の点で⼤企業が有利になり、多くの契約プログラムが次回実施される際には契約を勝ち取ると考えられます。そうした大企業は「⾃⽴統治」シナリオ下でも成⻑可能と考えられますが、国内⾃給が多くの国にとって重要な優先課題になるため、⼩規模な地域内または国内のトップ企業はかつてないほどの需要増⼤を経験するとみられます。規模の大小を問わず、価値の⾼いケイパビリティを獲得できる分野(⾃律システムや⾼度アナリティクス、機械学習など)において優先的にイノベーションに取り組む企業が、防衛予算増額の波に乗る絶好の位置にあるといえそうです。

  • 人的資本
    ⺠間航空宇宙企業も防衛企業も、目下、特にテクノロジーセクターでの⼈材獲得競争のため、スキルのある⼈材の不⾜に苦しんでいます。より極端なシナリオ下では、国際的な流動性の低下により、⼈材市場はさらに⾮効率化するとみられます。地政学的な緊張の⾼まりに伴い各国政府は政策⽀援を拡⼤しているにもかかわらず、特に防衛企業では最新の⾼度技術やセキュリティ上の要件に関する専⾨知識が求められるため、依然として必要な⼈材の採⽤に苦心しています。
    このような課題を踏まえると両セクターの企業は、報酬だけにとどまらず、より広範に福利厚⽣やポスト・パンデミックの柔軟な働き⽅を視野に、企業⽂化と価値提案全般の向上に投資する必要があります。また、⾰新的技術の効果的な展開によって、知識習得とスキル開発(拡張現実や仮想現実によるトレーニングの促進など)や⼈材維持(退職リスクを評価するためのデータ分析など)を変⾰できる企業が、競争優位性を獲得することになりそうです。

取り上げる重要ポイント:化学・先端材料

  • 事業運営とサプライチェーン
    より極端なシナリオ下で予想される欧⽶と中国のデカップリング(分断)は、世界の化学産業を再編すると考えられます。⽣産・輸出コストは、⽶国、欧州、および⽇本の企業が、特に特殊素材について、⽣産をオンショアやフレンドショアに切り替えるとともに上昇します。孤⽴した中国は、輸出先としてのメリットが少ない市場で需要を喚起するという課題に直⾯しそうです。世界的に関税が引き上げられる結果、企業は新しい市場圏に応じた調達を迫られ、経済環境は低成⻑または景気後退となる中、バリューチェーン全体にわたりコストが上昇すると考えられます。

    さらに、ウクライナでの⻑期にわたる紛争のため、⽯油化学原料の供給が深刻な影響を受けることから、EUの製造業企業の販売先の需要が壊滅的に減少するものとみられます。プラスチックと化学肥料の⽣産の⼀部は、天然ガス資源が豊富な⽶国と中東に移転すると考えられます。ロシアと中欧におけるEU製化学品の需要低迷のため輸出圧⼒が⾼まり、需要が低下する中で地域の価格競争を激化させるものと考えられます。

    成功する企業はさらに、特にデジタル・サプライチェーン、製造工程、および製造のオートメーションへ投資し、生産性向上を加速させる必要があると考えられます。

  • サステナビリティ
    地政学的シナリオがより困難なものになる場合、化学企業によるサステナビリティ投資のペースは全体的に低下すると考えられます。プラスチック廃棄物の削減とリサイクル、政府によるインセンティブとその要求事項、電気⾃動⾞への移⾏などの変化は不可避であり今後も継続はするものの、企業が存亡に関わる危機に⽴ち向かう中にあって、サステナビリティ⽬標達成に向けての意欲は世界的に低下する可能性があります。

    しかし、国または経済ブロック圏に固有の資源の制約が故に地域差が⽣まれる可能性もあります。⽯油・エネルギー集約的な化学物質(⽯油化学製品、プラスチック、肥料など)は厳格に管理され、輸出には関税が課されるとみられます。⼀部地域では、再⽣可能エネルギーや代替原料の国内供給源として、農業の担う役割が拡⼤する可能性があります。
第4章  将来「後悔しない」ために、製造業企業が今取るべき5つの行動 どのような未来が訪れるにせよ、リスク軽減に向けた戦略的⾏動を特定して実行すべき時は今です。
4

第4章

将来「後悔しない」ために、製造業企業が今取るべき5つの行動

どのような未来が訪れるにせよ、リスク軽減に向けた戦略的⾏動を特定して実行すべき時は今です。

製造業界のリーダーは、上記を含む地政学的シナリオが⾃社の事業に与える影響を評価する必要があります。さらに、現実となりそうな未来がどのシナリオであるかに関わらず、リスクの軽減に限らず、成功に導く戦略的⾏動を特定し、実践する必要があります。企業はそれぞれ独自の優先課題に当たることになりますが、EYのチームは、次に挙げる、将来「後悔しない」ための⾏動原則が、あらゆる製造業企業にとって重要になると考えています。

1. シナリオプランニングのケイパビリティを強化する

企業はすべて、あらゆる企業戦略演習に地政学的シナリオ作成を積極的に織り込み、機会(顧客、価格設定、M&A)とリスクの特定に集中して取り組む必要があります。中でも製造業セクターは、⽣産量が多く、ビジネスの規模は⼤きく複雑で、リソース集約的であることが多いため、地政学的シナリオの導入が特に重要です。

シナリオ作成には、将来シナリオのうちどれが現実化しつつあるのか、その兆候のモニタリングを可能にするため、選挙結果、政策のレトリック、軍事費などを早期警戒指標として同定しておく必要があります。

2. 顧客体験の向上に投資する

製造業企業は、顧客をバリューチェーンの終点ではなく起点に置いて、顧客の戦略および優先分野を⾃社のものと整合させる必要があります。地政学上の進展のため顧客が急激な需要の変化と業務運営の複雑化に直⾯した場合に、事業運営の円滑化と透明性の向上につながるエンゲージメント・プラットフォームを提供できれば、鍵となる差別化要因になります。

⽇⽤品に関しては、ストレスフリーな消費者向けのeコマースプラットフォームが不可⽋であると考えられます。カスタム製品・システムに関しては、顧客の収益増とサービスコストの削減を⽬的として、⾼機能の検索、コンサルティング販売、価格設定と在庫状況の可視化を可能にするデジタルプラットフォームが必要になると考えられます。

3. 業務運営上のレジリエンスを向上させる

製造業企業の多くではビジネスが複雑ですが、それは同時にレジリエンス向上のために取り得る⼿段が数多く存在することを意味します。ここでの取り得る手段とは、供給源の複数化、サステナビリティと循環性の向上、独⾃の再⽣可能エネルギー発電インフラの構築、運転資本と価格設定の運⽤最適化のためのデータ活⽤などです。企業は、需給の⼤きな変動に直⾯してもアジリティを最⼤限に発揮できるよう、費⽤対効果の⾼い⾏動を優先する必要があります。

4. 従業員に他社より優れた価値提案を提供する

地政学的な混乱と不確実性のため、⼈材採⽤・維持に関して製造業界がすでに経験している問題は深刻化の⼀途をたどるものとみられます。企業リーダーは、従業員の間につながりが⽣まれる職場⽂化を醸成するとともに、データに基づくインサイトを活⽤して報酬・福利厚⽣の改善や、新しい働き⽅の導⼊に取り組むべきです。人材という、この最も重要なリソースが時間の経過とともに、あるいは一夜にして、流出するのを防ぐ必要があります。

5. デジタル化を加速する

デジタル化は、常に製造業企業の優先投資リストの最上位にあるわけではありませんが、⻑期的にコストを削減し市場の優位性を維持するには必須です。デジタル化はまた、EYが推奨する他の「後悔しない」ための⾏動の数々の側⾯を⽀えるものでもあります。ストレスフリーなオンライン販売、リアルタイムのサプライチェーンモニタリング、デジタルツインの活⽤による⽣産とエコシステムの脆弱性評価などの実施は、包括的なデジタル・トランスフォーメーションが順調に進展していなければ、いずれも実現不可能です。

一部の地政学的シナリオ下では、制裁その他政府の介⼊によって突然断ち切られることのないサプライヤーやパートナーをデジタル化において選択したかどうかが、企業の未来を左右する可能性もあります。このため、定期的なシナリオ計画実践の一部として新たな関係構築の可能性を評価することが極めて重要です。
 

結論

それほど遠くない過去の、これほどまでに不安定でなかった世界では、グローバリゼーションが拡⼤する中での成⻑戦略は⽐較的単純でした。しかし今、その固有の政治・経済環境はもはや消え去りました。今後、新たに出現する脅威から身を守りながら新しい機会をつかむには、変化する状況を用心深く観察し、適応性のある企業戦略を策定しながら事業のアジリティとレジリエンスを向上させる必要があります。

 

本稿の執筆に貢献していただいた次の方々に感謝の意を表します。Chris Cardinal、EY Americas Chemicals and Advanced Materials Executive Director。Joe Gaynor、EY-Parthenon Advanced Manufacturing and Mobility Global Development Lead。Mayukh Chaudhuri、EY Americas Advanced Manufacturing and Mobility, Strategy and Transactions Manager。

 



サマリー

製造業企業は、増⼤する数々の地政学的リスクにさらされています。製造業企業は将来起こり得るさまざまな事態に対し先⾒性を発揮して検討し、戦略と事業運営のアジリティを新たな⽔準に引き上げる必要があります。


この記事について

執筆者