チームとJリーグ、どちらがデジタル化を推進するのか?
ーースポーツビジネス、スポーツ業界のデジタル化推進について、ブンデスリーガはどのような役割を担っているのでしょうか?
イェーガー:ブンデスリーガは、クラブをサポートするためにデジタル放送を中心に大きな力を注いでいます。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、デジタルへの投資がうまく進まず、多くのクラブが後れを取ってしまいました。
デジタル戦略のフロントランナーである私たちは、さまざまなクラブへ一定レベルのサポートを実現すべく、ビデオ会議を開き、協力者として何ができるのか、また私たちも知識として取り入れられることはないか、積極的に意見交換を行っています。
ーー日本での状況はいかがでしょうか。デジタル化に当たり、Jリーグと密接に連携し推進しているのでしょうか?
白戸:この件に関しては、浦和レッズのデジタルアクティビティの歴史を踏まえ、お伝えできたらと思います。
浦和レッズはまず、モバイルでデジタル情報を販売する有料コンテンツサービスを開始しました。大きな節目は2015年、新メンバーシップ「REX CLUB」の創設です。現在約12万人の会員がおり、それに連動し、レックスチケットというチケッティングも運用しています。
2017年にはeコマースのシステムを大きく変更、その頃と比較するとECにおける売上高は約10倍に増えています。
浦和レッズの取り組みにやや遅れて、Jリーグでも似たようなファンシステムを作りました。そちらと連動させ、その後にデジタルマーケティングに本格的に着手しました。
2020年にはコロナ禍でクラウドファンディングやギフティングがスタート。また、NFTやメタバースにも着手しています。
この他、エンチャントという購入時のレシートを活用した支援特典の仕組みを導入。スポンサー、協賛会社などパートナーの方々の多大なるご協力を頂きながら、共同で取り組みを行っています。
今後の課題は、データマーケティングでのデータの活用方法、そして地域通貨と浦和レッズアプリの導入です。それによって、あらゆるものをワンストップで提供するシステムを構築していきたいと考えています。
少し大きめのDX対応策としては、スマートスタジアムやスマートシティ構想があります。これらを実現するため、協賛金や共同事業化、または取り組み自体を公益、公共性のあるものとして政府や公共団体の支援を受けていくなどの方法を考えています。
Jリーグ全体におけるDX化については、現状、各クラブの自主性に任されています。今後どのようにリードしていくのか、サポートしていくのか。黎明期の前夜という状況で、各クラブでできるところを自主的に進めてもらうというのが、現時点でのJリーグのスタンスです。
なお、Jリーグファンのデータベース化については、JリーグID、Jリーグチケットがあります。データを集めてデジタルマーケティングをする基盤は既に共通化されており、それをどのように展開するのかが現在の課題であると聞いています。
ーー枠組みづくりには、サポートネットワークが必要です。岡田さんは、企業や政府のサポートについてどう考えていますか?
岡田:まず、日本のスポーツ環境というのは、欧州のチームのようにインベストメントをする、ファイナンスが成り立つというところまで成熟していません。それに対して、政府などがどうサポートしていくのか、ということですが、政府としてはまだまだ民間に任せたいというのが現状で、そこが一番の課題です。
日本のスポーツビジネスは、スポンサー企業がいてスポーツマーケットが浸透していくという形が今の主流になっています。このような成熟度の中で、スポンサー企業と政府がうまくアライアンスを組めるところまで橋渡しをするのが、われわれコンサルティング会社の役割であり、現在取り組んでいるところでもあります。