白川:平川コーチ自身もアーティスト関係のネットワークがあっていろいろと情報を調べてくれましたが、打ち合わせしている時に「そういえばEYさんがいたな」と。力になってもらえるかもしれないと思ってご相談したという経緯です。
岡田:ありがとうございます。とても光栄です。実際、コロナ禍で制限がある中での開催に対して、クラブ内の理解を得るのは大変だったのではないでしょうか。
白川:これまで引退試合はファン・サポーターの方々がいっぱいのスタジアムで華やかにやってきたという経験がありましたし、それに対するイメージも強く残っていましたので、本当にリモートでいいのかという意見は確かにありました。ただ、開催可能な日程もほぼピンポイントで決まっていたし、もうそこに向けて批判覚悟で進むしかない、もっと言えば、どうポジティブに受け止めてもらえるように組み立てていくかを考えよう、と。私のほうで上の了承を得て、クラブの各部門から担当者を一人ずつ出してもらうことになりました。
岡田:レッズでの引退試合は、今回も入れて4選手しか開催されていません。引退試合開催の条件というのは設けているのでしょうか。
白川:以前は350試合以上出場という条件がありました。現在は明確な規定があるかわかりませんが、平川は少なくともその条件は満たしています。350試合に出るというのは相当大変なことです。だからこそ、これまで4人しか開催できなかった。クラブにとっても引退試合を行うことは結構大変なので、スタッフの間で「やろう」という雰囲気が生まれるには、その選手がそれだけの時間をこのクラブに費やしてくれたという事実がやはり大事なんですよね。
平川:嬉しいことに、まわりからは「ぜひやってほしい」という声が多くて。でも、そういう声があっても、じゃあ誰の発信で企画が始まるのかなと……。待っていたけど何も起こらなかったので、結局自分から当時の社長に言いに行きました(笑)。引退試合は本当に名誉でしかないですね。過去3選手は実績を残して浦和に貢献したレジェンドですから、そのような方々に続けることは光栄です。ただ、自分がやって大丈夫なのかという思いも正直ありましたけど。
歴史あるクラブならではの企画力
岡田:今回は引退試合に際してクラウドファンディングを実施してブラインドサッカーへの支援を行ったり、かつての指揮官であるハンス・オフト氏や元同僚の長谷部誠選手とのトークなど配信コンテンツも提供したりと、新しい取り組みが多々ありました。デジタルだからこそ、距離を超えてサポーターと価値を共有できた部分も大きかったと思います。
平川:クラファンでは背番号14にちなんで1400万円を現実的な目標に設定していたので、ひとまずそれが達成できてよかったです。オフトさんとのトークでは、自分自身が指導者になってかつての指導者と話せるのは貴重な機会だなと思いました。長谷部ともいい話ができましたし、これらのコンテンツは自分の学びにもなったなと感じています。当初は引退試合の後にみんなで飲みに行って浦和の街を盛り上げようと計画していたのをリモートでやったわけですけど、普段とは違う雰囲気でできたのでよかったなと思いました。