EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
要点
EY Japanの数少ないリーダーの1人として、グローバルな役割(Women Athletes Business Networkのリーダー)を担い、現在はコーポレート・レスポンシビリティリーダーを務める中、ダイバーシティ、エクイティ&インクルーシブネス(DE&I)がどのようにリーダーシップと関連しているのか聞かれることが多くあります。その答えは、リーダーは組織の鼓動する心臓となり、ビジョンや方向性、インスピレーションを与えながら、すべての人に成功をもたらす環境を作り出す存在でなければならないということです。
昨年11月、米ワシントンDCで開催された米日カウンシルのアニュアル・カンファレンスで、「変革的リーダーシップ:ジェンダー平等を推進する女性リーダー」と題したパネルディスカッションに登壇し、山口大学の林裕子教授と、米国とアジア太平洋地域の関係を促進する団体であるイースト・ウエスト・センターのスザンヌ・ヴァレーズ=ラム(Suzanne Vares-Lum)所長と議論を交わしました。
本記事では、米日カウンシルのパネルディスカッションでの発言内容を紹介するとともに、2024年3月の「国際女性デー」のキャンペーンに向けたEY JapanのDE&Iの取り組みの一つとして、まずは私のキャリアのストーリーをお話ししたいと思います。
米日カウンシル アニュアル・カンファレンス パネルディスカッション
「変革的リーダーシップ:ジェンダー平等を推進する女性リーダー」
同カンファレンスに参加していたEYのグローバル会長兼CEOのカーマイン・ディ・シビオは、違いを持つ人々や文化との関係を構築することは、EYのDNAの一部であると語っています。EYではDE&I指標を設定して、進捗状況を確認し透明性を確保するとともに、女性やマイノリティに注目するだけではなく、経験やモビリティ、エンゲージメントの多様性も考慮しています。
私のキャリアは、人々の多様な「旅」がもたらす価値の一例です。私の目標は長い間、組織と人々にインスピレーションを与え、前向きな変化を生み出すことでしたが、存在しなかった新しい役割を作り、責任の幅を広げ、自分自身の職務内容を作り出してきました。ある意味それは必然的なことでした。なぜならDE&Iの分野で働き始めた当時、DE&Iは「必須」ではなく「あるといい」イニシアチブだったからです。一方で、物事を違った方法でやってみることに可能性を感じていました。
多くの障害にぶつかりましたが、とりわけ大きかったのは、米国での仕事の経験を、当時「インクルージョン」という言葉が広く認知されていなかった日本と結びつけることでした。私は、意味論的なことを試すよりも、日米間の深い相互理解の架け橋となるべく自らの二文化的な経歴を生かしながら、尊重や支援、相互信頼といったインクルーシブネスの特性に焦点を当てました。
最終的にはデータを活用することで、意識に変化をもたらすことに成功し、職場でビジネス戦略としてDE&Iが受け入れられました。そしてクライアントにその学びが評価され、クライアントとの関係強化にもつながりました。
この経験は、大きな変化をもたらす変革的リーダーシップ以上のことを目指す必要性を私に教えてくれました。それは、変革を起こす力を持つ変革的リーダーを育てなければならないということです。
変革的リーダーは人々にインスピレーションを与え、予想外の、あるいは目覚ましい成果を達成させます。また、大きな変化を促し、ロールモデルとして行動します。リーダーたちは今、これまで以上にDE&Iの考え方をリーダーシップスタイルに組み込み、性別に関係なく誰もが活躍できる職場環境と文化を醸成する必要があります。
国際連合(UN)が発行した「ジェンダー・スナップショット2022年版」¹によると、世界の男女格差を解消するには286年かかるとされています。
EYでは、そこまで長く待つつもりはありません。UN Womenは「持続可能な開発のための2030アジェンダ」²を達成するためには、経済における女性のエンパワーメント促進とビジネスの世界における男女格差の解消が重要だとしています。ジェンダー平等への道をさらに加速させるため、EYは意識的および無意識的バイアスのない協力的な環境の構築、柔軟な働き方の拡大とウェルネスとの関係性の促進、ならびにリーダーシップへの道筋を照らすことに取り組んでいます。
米国の活動家マリアン・ライト・エデルマン(Marian Wright Edelman)氏の有名な言葉に「見えないものにはなれない」がありますが、こう言い換えることができるかもしれません。「道を知らなければ、そこにたどり着くことはできない」。私は自らキャリアを切り開いてきた経験から、キャリアの道をたどる、あるいは作ること、有意義なネットワークを構築すること、将来のビジョンを共有すること、そして他の人が自分の後に続くような影響を与えることの重要性を知っています。
女性が自らの道を見つけるために、全員が手助けをする必要があります。変革的リーダーは、キャリアの機会の可視性を高め、昇進基準を共有することに加え、リーダーシップ・パイプライン・プログラムや女性のネットワーク、メンター制度を構築することで模範を示すことができます。
メンター制度は、キャリアのどの段階においても有益です。私は社会人になって間もない頃からメンター制度の恩恵を受けており、今ではメンティーであると同時にメンターでもあります。自分のメンティーや同僚が新しい役割に登用されたり、自信を深めたり、昇進したり、自分のビジネスを始めたりするのを見ると、他の人の助けになりたいという気持ちが湧いてきます。
変革的リーダーは、他の人の成功が自分自身や組織の成功につながることを認識しています。
ハーバード・ビジネス・レビュー誌³の研究によると、幅広いネットワークもジェンダー平等に役立つとされています。親密な女性の集まりを持つ女性ほど、より大きな権限を持ち高い報酬を得るエグゼクティブ職に就く可能性が高いことが示されています。
EYは、キャリアを築いてきた女性が職場で次世代の女性を支援することを促進し、身近に感じられるロールモデルを作ることを目指しています。
ロールモデルがCスイート(最高責任者)の役職に就いている必要はなく、中間管理職や、同僚より数歩先を行っている女性でもよいことを私たちは覚えておくべきです。メンター制度が当たり前の環境を醸成することで、さらに多くのロールモデルを作ることができ、それによって将来のリーダーへの道筋を構築することができます。
世界経済フォーラムが公表した「グローバル・ジェンダーギャップ・レポート2023」⁴において、日本は主要7カ国(G7)の中で最下位に位置しており、ジェンダー平等を達成することは困難なことのように思えます。しかし、変革的リーダーシップによって、女性の明るい未来とより良い職場環境の実現に向けて、一歩を踏み出すことができると私は信じています。
巻末注
職場で女性のエンパワーメントを図るには、キャリアアップの方法をオープンにすることが必要です。EYでは、キャリアを築いてきた女性が次世代の女性を支援し、より身近に感じられるロールモデルを作ることが女性のキャリアを向上させる方法の一つであり、結果として明るい未来に貢献すると考えています。