文 美月
株式会社ロスゼロ 代表取締役
Entrepreneurial Winning Womenの企画・協力で、旬刊経理情報に『女性リーダーからあなたへ』を連載しています。2022年10月10日号に掲載された記事をご紹介します。
食品ロスを減らすための事業「ロスゼロ」を始めて4年になります。販路を失った食品を直接食べ手につなぐプラットホームを運営しています。目指しているのは、もったいないもの活かし、笑顔に変えていくこと。資源循環が叫ばれる今、弊社も少しでも社会のお役に立ちればと思い、日々邁進しています。
ロスゼロは、2回目の事業です。気付けばもう21年、経営者をやらせていただいています。新卒後は金融業界に就職。二度の出産を経て31歳で一度目の起業。身を置いたのはEコマース業界。アクセサリーを450万点ほど販売しました。40代になってからは、前述の仕事に加え、大学NPOの理事、女性起業家支援、Eコマース支援、大学での講義などさせていただいています。アクセサリーをリユースし発展途上国の就業支援につないだりもしているのですが、一見、バラバラなキャリアです。「なぜアクセサリーから食品ロスに?」と聞かれるのですが、「もったいないものを次の笑顔につなげる」意味では行き先を失った食べ物もアクセサリーも、根底に流れるものは同じです。
これらのキャリアは、4年間専業主婦をして、2児の子供の育児に追われていた私からは、たく想像がつかなかったことです。ただただ、好奇心が強かったのだと思います。
「チャンスがあるなら、やってみたい!」「〇〇について、知りたい!」「もっといろんな人と出会いたい!」
私はそんな気持ちが何より先に立つタイプです。分からないことがあれば調べて、行動に起こしてみて、気づきを次の行動に変える。21年のあいだにそれを繰り返した結果、気付けばたくさんのご縁が生まれていました。40歳過ぎてからも知的好奇心は衰えることはありませんでした。
ただ、こう書くといつもエネルギーに満ち溢れているように思われます。しかしそうではありませんでした。あることが原因で38歳で心身のバランスを崩し、自分が起業した会社なのにある日突然出社できなくなりました。38歳は、人生の中で一番底でした。でもそんな自分を認めて、引きあげてくれる友人や家族のおかげで、時間をかけて立ち直ることができました。8時間以上机の前に座れるようになるまで一年半かかっていますが、今思うと大きな経験となっています。
そして迎えた40代。不思議なことに、40歳になってから52歳の今までずっと人生の矢印が右上を向いているのです。人生はそう甘くないので、またズドン!と落ちることは何度かあると思いますが、それもまたいつか上向きになると確信しています。
読者のみなさんも「もう〇〇歳だし」「もうお母さんだし」という言葉を口にしないようにしてください。人生で今日が一番若いのです。年齢も性別も国籍も関係ありません。好奇心を持ち続けることで新しい世界が広がり、人生はより豊かになっていきます。ミドルシニア、シニアと呼ばれる人の起業も少しずつ増えています。否定的な目で見る人がいたとしても、きっとその人も本当は何かしたいのかもしれません。
好奇心、持ち続けたいものですね。大きな成長エネルギーになると思います。
文 美月(ぶん・みつき)
株式会社ロスゼロ 代表取締役
略歴
同志社大学経済学部卒、大手金融機関の総合職・留学・結婚・出産・専業主婦を経て、2001年自宅で起業。ヘアアクセサリーEC/DtoCで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10カ国への寄贈・職業支援を行う。もったいないものを活かすリユース経験を活かし、食品ロスに着目。販路を失った食品を食べ手につなぐプラットホームを開始。2020年食品産業もったいない大賞・特別賞受賞。