電子契約

電子契約の導入により、従来、紙・押印を中心とした業務の場合とは異なる業務上のリスクが生じます。特に、(1)本人性、(2)権限性、(3)非改ざん性といった着眼点を踏まえたデジタル内部統制の構築が必要と考えられます。

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1. 電子契約の概要-「立会型」の特徴

現在、一般的に流通している電子契約システムのほとんどがクラウドを利用しており、「立会型」と「署名型」に分類されます。「立会型」の特徴は、自社と取引先の間にあるクラウド上の電子契約システムの中で全てが完結していることです。自社と取引先がクラウド上で電子契約書に電子サインを行った上で、電子契約システムベンダーの名義で、電子契約書(PDF)にラッピングするかのごとく、認証局から電子証明書が付されます。

なお、電子証明書でラッピングしているのは電子契約システムベンダーの名義に係るものであり、契約当事者が電子サインを行ったことは、電子契約書(PDF)では表示されません。電子契約システム内における契約当事者の電子サイン証跡により、契約当事者が当該電子契約書(PDF)の内容で合意に至っていることを確認できます。

また、「立会型」では、取引先(電子サインを行う者)が契約当事者であることを確かめるために、電子契約システムを通じた電子サイン依頼の他、別途、SMS認証コードを当該取引先の携帯電話に送付するなど、二要素認証を実施することで、なりすましのリスクを低減する場合があります。

立会型の電子契約の流れ

2. 電子契約の概要-「署名型」の特徴

「署名型」の特徴は、自社および取引先の双方が認証局に登録した上で、電子契約システムにおいて、電子証明書付きで電子サインを行う点です。これにより、電子契約書(PDF)に、契約当事者が電子サインを行ったことが表示されます。

「署名型」では、電子サインを行う者が認証局に個人情報を登録する必要があります。「立合型」と異なり、なりすましができないため、不正防止の観点からは優れている方式ともいえます。

署名型の電子契約の流れ

3. 電子契約における内部統制上の留意事項

電子契約の導入により、従来、紙・押印を中心とした業務の場合とは異なる業務上のリスクを把握し、新たな内部統制を導入し対応することが求められます。本稿では、特に、(1)本人性、(2)権限性、(3)非改ざん性といった着眼点から、内部統制上の留意事項を考察しています。

デジタル化による内部統制上の留意事項-電子契約

4. 電子契約について詳しく知る

  • (1)本人性

    電子契約においては、取引先になりすまして架空契約が締結されるリスクが存在することに留意が必要です。
    本稿では、人材紹介サービス業において人材紹介契約(電子契約)をなりすましで締結し、売上を架空計上する事例を想定しました。

    【電子契約~想定事例~】 なりすましによる架空取引不正
    【電子契約~想定事例~】なりすましによる架空取引不正
  • (2)権限性

    電子契約においては、承認権限のない担当者が契約を締結するリスクが、従来の紙面による契約よりも高くなることに留意が必要です。
    本稿では、承認権限のない担当者が金銭消費貸借契約を電子契約で締結し、入金額を着服する事例を想定しました。

    【電子契約~想定事例~】無権代理
    【電子契約~想定事例2~】無権代理
  • (3)非改ざん性

    電子契約においては、データの改ざんリスクについて留意が必要と考えられます。
    例えば、電子検収の場合、電子検収書のチェック体制の構築、修正履歴の確認、SOC報告書の入手等の検討が必要と考えられます。
    本稿では、電子検収書の改ざんにより売上の前倒しを行い得る事例を想定しました。

    画像1 想定事例の概要(通常)
    画像2 想定する不正の手口
    画像3 内部統制上の問題点と改善案

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