ビジネス文書DXを理解する

従来の紙面を中心とした業務から、デジタル文書を中心とした業務形態に移行する企業が増加してきています。このようなビジネス文書のデジタル化によりメリットのみならずデメリットも生じるため、これを踏まえた新たな内部統制(「デジタル内部統制」)の構築が必要になると考えられます。

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1. デジタル化の潮流

社会環境の急激な変化とともに、企業活動も非対面の業務の遂行が推奨され、リモートワークの導入が進んできています。それとともにDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉も急速に浸透してきました。

DXの定義は幅広い概念を含むものと考えられますが、本稿で取り扱うDXは、デジタル化により企業の収益構造を変えるような全社的なDXを取り扱うものではありません。従来、紙面で行われていた業務を、電子契約システムや電子ワークフローシステムを利用して、デジタル文書を中心とした業務形態に移行することを目指す管理部門の業務プロセスに特化したDXについて取り扱います。

ビジネス文書のデジタル化の流れは、すでに20世紀から始まっています。税務上で必要な書類を電子化することを可能とした「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」(以下「電子帳簿保存法」)は1998年に施行されました。しかし、電子的な書類として認められる要件が厳格であること、紙・押印を中心とした業務形態を変えるモチベーションが上がらなかったこと、技術的環境がそろわなかったことなどを背景に、一般的な普及には至りませんでした。

電子帳簿保存法の施行から約20年が経過した近年においては、さまざまな環境変化の中、多くの企業で管理部門のデジタル化が検討されつつあります。

デジタル化の潮流 - 度重なる規制緩和と急増する電子契約とスキャナ保存制度

*出典:国税庁「税務統計20-8 電子帳簿保存法に基づく電磁的記録による保存等の承認状況」(2019年)

2. ビジネス文書のデジタル化

管理部門の業務プロセスをデジタル化する場合、従来、紙・押印を中心とした業務の場合とは異なる業務上のリスクを把握し、新たな内部統制を導入し対応することが求められます。

このように、管理部門の業務プロセスをデジタル化することで新たに構築することになる内部統制を「デジタル内部統制」と定義し、本稿では、デジタル化された業務プロセスで一般的に発生することが想定される業務リスクとその対応方法の一例を示します。

デジタル化のメリットには、「コスト削減」「効率化」「意識変化」といった点が挙げられます。これらにより、単純作業からの脱却など、働き方改革を通じて、新たな価値創造につながることが期待されます。

一方、デジタル化によって、従来以上にリスクが高くなる領域も生じると考えられます。特に、「改ざん」「なりすまし」「情報喪失」といった点について、内部統制の観点から対応を検討することが考えられます。

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