公認会計士 山岸 聡
原価計算
- 原価差異の繰延処理(基準12)
- 原価差異の配賦計算の簡便的な方法(適用指針9、89)
1.原価差異の繰延処理
次の要件を満たす場合には、原価差異を流動資産または流動負債として繰り延べることができるとされています。
(要件)
- 原価差異が操業度等の季節的な変動に起因したものであること
「操業度等の季節的な変動」には、「販売量の季節的変動が大きい業種であること」や、「生産設備の定期修繕による計画的な操業度の低下」などが例と考えられます。これに対して、例えば「主要な売上先が在庫調整に入ってしまった」ことによる操業度の低下は、季節的な変動とは言い難く、かつ原価計算期間末までに解消できるかどうかを見込むことも実際には困難が伴うと考えられます。
発生した原価差異のうち繰延処理の対象となる、操業度等の季節的な変動に起因する原価差異を把握するためには、原価差異を要因別・内訳別に区分して把握することが必要と考えられます。
- 原価計算期末までに当該原価差異がほぼ解消すると見込まれること
繰延処理を適用するに当たっては、「原価差異が原価計算期間末までにほぼ解消されるかどうか」についての将来予測が伴います。この将来予測を合理的に行うための基礎として、予定操業度および標準原価(または予定原価)が当期の状況に照らして合理的に設定されていることを確認しておくことが必要です。
- 継続適用を条件とすること
四半期決算において、原価差異の会計処理は、年度決算と同様の処理(すなわち原価差額を繰り延べない方法)と、これまで説明した繰延処理との、いずれかを選択できることとなっており、いったん採用した方法は継続適用することとなっています。
年度決算と同様の処理を選択した場合でも、四半期決算においては後述2.のとおり、発生した原価差異の配賦は年度決算よりも簡便的な方法によることができます。
なお、繰延処理を選択しても、要件を満たさなくなった(例えば、原価計算期間末までの解消が見込まれなくなった)四半期末においては、年度決算と同様の処理を行うことになります。この場合、会計方針の変更には該当しないと考えられます。
また、繰延処理を適用する範囲として、操業度の季節的な変動が大きい子会社や事業セグメントについてのみ適用する、という選択も考えられます。
四半期財務諸表の場合には季節変動も大きいと考えられ、操業度等が季節的に大きく変動する場合に原価差異を売上原価や棚卸資産に配賦すると、売上原価と売上高の対応関係が適切に表示されない可能性があることから、繰延処理が認められています。
【図表1】の例では、操業度の変動により第1四半期の標準原価が12,800、実際原価が12,400となっていることから、原価差異400をその他の流動負債として繰延処理することができます。
【図表1】
第1四半期 | 第2四半期 | 第3四半期 | 第4四半期 | 年度計 | |
---|---|---|---|---|---|
標準原価 | 12,800 | 10,800 | 11,600 | 12,800 | 48,000 |
実際原価 | 12,400 | 11,400 | 11,800 | 12,400 | 48,000 |
原価差異 (-は不利差異) |
+400 | -600 | -200 | +400 | - |
原価差異(累計) | +400 | -200 | -400 | - |
2.原価差異の配賦計算の簡便法
発生した原価差異は、製品単位や製品グループ等の区分により棚卸資産と売上原価へ配賦する必要がありますが、四半期財務諸表では、原価差異の配賦計算の簡便的な方法として、年度決算より大きな区分で配賦することが認められます。(ただし、報告セグメント等を超えない程度の範囲であることに注意が必要です。)
四半期において簡便的な方法によった場合でも、年度決算における原価差異の配賦は、四半期ごとに行った簡便的な配賦結果の積み上げとすることはできず、年度決算において求められる配賦方法に従い、期首からさかのぼって配賦計算を行うことになると考えられます。
なお、原価差異に重要性が乏しい場合には、年度と同様にすべてを売上原価に賦課します。
固定資産
- 減価償却費の算定における合理的な予算制度の利用(適用指針12)
- 定率法の場合における年度の減価償却費の期間按分(適用指針13)
- 減損会計における簡便的な取り扱い(適用指針92)
1.減価償却費の算定における合理的な予算制度の利用
年度中の取得、売却、除却等の見積もりを考慮した予算を採用している場合には、予算に基づく年間償却予定額を期間按分して減価償却費を計上することが認められています。実務的には、年間償却予定額の12分の1を月次で負担させる方法が多くなるのではないかと考えられます。これは、開示の迅速性の観点から重要性の乏しい有形固定資産の増減まで厳密に考慮するのは煩雑であり、実態と大きく乖離しなければ、こうした方法を認めても利害関係者の判断を誤らせることはないと考えられたためです。
ただし、年度中の取得、売却、除却等に重要性がある場合には、その部分を適切に反映するように期間按分額を調整することが求められます。この場合は、年間償却予定額の12分の1を月次で負担させるのではなく、例えば、重要な取得が第2四半期にあるのであれば、第2四半期以降の四半期の負担額を多くする調整が必要となり、重要な除却が第3四半期にあるのであれば、第3四半期および第4四半期の負担額を軽くする調整が必要となります。
【計算例】
年間使用し続ける資産A(四半期での減価償却費は10)、第2四半期期首で使用開始する資産B(四半期での減価償却費は8)、第2四半期期末で売却する資産C(四半期での減価償却費は2)を前提に、四半期決算での減価償却費を算定します。
(ケース1:合理的な予算制度による四半期毎減価償却費[Dp]の算定)
(ケース2:途中取得資産に重要性がある場合の四半期毎減価償却費[Dp]の調整)
年間の減価償却費を4分の1にした金額が17ですが、それを四半期での減価償却費として使用すると、第1四半期ではBを取得する前であるにもかかわらず減価償却費が増加することとなります。②と①の差額5に重要性がある場合、ケース2のような調整が必要です。
2.定率法による場合の減価償却費の按分計算
減価償却方法として定率法を採用している場合には、四半期の償却率を用いて計算する方法に代えて、年度の減価償却費の額を期間按分して計上することが認められます。
3.固定資産の減損損失
(1)四半期における減損の兆候の考え方
固定資産の減損損失は期末に計上するものではなく、減損の事実があったときに期中のいかなるときでも認識・測定するもので、減損の兆候に始まって、認識、測定というステップを踏んで計上されます。「固定資産の減損に係る会計基準」では、減損の兆候として四つの事象が例示されていますが、四半期での減損の兆候の把握においては、「......使用範囲又は方法について当該資産又は資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化を生じさせるような意思決定や、経営環境の著しい悪化に該当する事象が発生したかどうかについて留意する。」とされています。
「固定資産の減損に係る減損会計」での兆候の例示
つまり、入手可能なタイミングにおいて利用可能な企業内外の情報に基づき、減損の兆候を識別するという主旨から、前年度末等において減損の兆候を把握している場合には、必ずしも四半期会計期間ごとに資産または資産グループに関連する営業損益、営業キャッシュ・フローなどを算定または入手することを求めるのではなく、使用範囲または方法について当該資産または資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化を生じさせるような意思決定や、経営環境が著しく悪化する事象が発生したかどうかについて留意し、そのような意思決定や事象の発生があればそれらを減損の兆候ととらえ、回収可能性テストを実施し、使用価値が固定資産の帳簿価額を上回っているかどうかを確認することになると考えられます。
(2)不動産の著しい時価の下落
土地の帳簿価額が著しく下落しているかどうかを把握するために、減損の兆候をとらえるのに路線価や基準地価を用いている例も少なくないと思われます。この点については路線価等が公表される時期にもよりますが、各四半期末の時点において、タイミングよく取り込むことが可能なことも多いのではないかと考えられます。
退職給付引当金
- 年間の退職給付費用を期間按分して計上(適用指針24)
- 数理計算上の差異は、原則として、年間費用処理額を期間按分(適用指針25、99)
- 過去勤務債務は、原則として、年間費用処理額を期間按分(適用指針26、100)
1.退職給付費用の計上方法
四半期財務諸表における退職給付費用は、期首に算定した年間の退職給付費用を期間按分して計上します。
2.数理計算上の差異の償却方法
数理計算上の差異を翌年度から費用処理している場合には、四半期会計期間において年間償却額を期間按分します。ただし、数理計算上の差異は期末で発生するものであることから、発生年度から費用処理する場合および発生年度に一括費用処理する場合には、第4四半期に1年分の費用を計上します。
3.過去勤務債務の償却方法
過去勤務債務は、原則的に発生時から月割り等の合理的な方法により償却されることから、発生時に全額費用処理する方法を採用している場合以外においては、年間償却額を期間按分します。
この記事に関連するテーマ別一覧
四半期
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