「収益認識に関する会計基準の適用指針」の改正(電気事業及びガス事業における代替的な取扱い)のポイント

2021年4月8日
カテゴリー 会計情報トピックス

公認会計士 石川仁

ASBJから2021年3月26日に公表

2021年3月26日に、企業会計基準委員会(ASBJ)より、改正企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下「本適用指針」という。)が公表されています。

ASBJは、2018年3月30日に、我が国における収益認識に関する包括的な会計基準として、以下の企業会計基準及びその適用指針を公表しました。

  • 企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(以下「会計基準」という。)
  • 企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」

会計基準第96項において、会計基準における定めが明確であるものの、これに従った処理を行うことが実務上著しく困難な状況が市場関係者により識別され、その旨がASBJに提起された場合には、公開の審議により、別途の対応を図ることの要否をASBJにおいて判断することとされています。

ASBJは、2020年8月17日に電気事業連合会より、2020年10月16日に一般社団法人日本ガス協会より、それぞれ提起を受け、別途の対応を図ることの要否等について審議を行っていましたが、今般、本適用指針が公表されるに至ったものです。

1. 本適用指針の概要

(1)電気事業連合会及び一般社団法人日本ガス協会からの提起の内容(本適用指針第176-2項)

電気事業及びガス事業において、決算月の検針日から決算日までに生じた収益を見積ることが実務的に困難であるとの理由で、月末以外の日に実施する検針による顧客の使用量に基づき収益計上が行われる実務(いわゆる検針日基準)を代替的な取扱いとして認めて欲しいとの要望が寄せられました。

(2)検針日基準による収益認識を認めなかった理由及び見積方法について代替的な取扱いを定めた理由(本適用指針第176-3項)

ASBJでの審議の結果、検針日基準による収益認識を認めた場合、財務諸表間の比較可能性を大きく損なわせないとは認められないと判断し、会計基準の定めどおり、決算月の検針日から決算日までに生じた収益を見積ることが必要であるとの結論に至ったとされています。

ただし、見積りの適切性を評価することが困難であるとの意見が財務諸表作成者及び監査人から寄せられたため、見積方法について財務諸表間の比較可能性を大きく損なわせない範囲で代替的な取扱いを定めることとされています。

2. 代替的な取扱い(本適用指針第103-2項、第176-4項及び第176-5項)

電気事業及びガス事業における決算月の検針日から決算日までに生じた収益の見積りについて、見積りの適切性の評価における財務諸表作成者及び監査人の負担を軽減する観点から、下表のように見積ることができることとされています。

使用量の見積り 決算月の月初から月末までの送配量を基礎として、気温、曜日等を加味して見積ることが考えられるが、気温、曜日等を加味することは実務的に困難である可能性があるため、その月の日数に対する未検針日数の割合に基づき日数按分により見積ることができる。
単価の見積り 電気事業及びガス事業では、契約の種類、使用量、時間帯等によって単価が変動する料金体系を採用していることがあり、単価の見積りについては、使用量等に応じて、それらの構成比の変動等を調整することが考えられるが、このような調整を行うことは実務的に困難である可能性があるため、決算月の前年同月の平均単価を基礎とすることができる。

3. 適用時期等

2020年改正の会計基準の適用時期等と同様に、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとされています(本適用指針第107項)。

4. 公開草案からの主な修正点

字句等の軽微な変更を除き、内容に関わるような公開草案からの変更はありません。

なお、本稿は本適用指針の概要を記述したものであり、詳細については本文をご参照ください。

ASBJウェブサイト

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