EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
今回は「タレント・インテリジェンス」がテーマです。HR Techを継続的にウォッチしているリクルートワークスのレポートで2021年12月に初出したカテゴリで、『データやAIを活用し、企業が人材に関する戦略的な意思決定を行うためのテクノロジー』とされています。随分最近の話題のように聞こえますが、例えばOracle社が2012年に紹介しているように、HR Tech領域では実は古参といえる用語です。このタレント・インテリジェンスが近年再注目されています。
タレント・インテリジェンスとは、人材データ(タレント・データ)を分析することで意思決定のための示唆・知見(タレント・インテリジェンス)を得る活動のことです。類義語であるピープル・アナリティクスが社内のタレントマネジメント高度化を主目的とするのに対し、タレント・インテリジェンスは適切な人材登用と管理を主目的とします。つまり、社内人事データの分析結果を用いてより効率的な採用活動を行おう、という着想です。
このように表現しますと、よくある話ではないかと思われたかもしれませんが、このタレント・インテリジェンスが近年になり再注目されているのにはいくつか背景があります。第一にコロナ禍に始まる業績不振からの人員削減圧力と、急激なDX化による人手不足という、矛盾に板挟みになった人事の採用強化策としての役割の期待です。最適な人材登用が重視された結果、社外・社内両方の人材データもシームレスに比較評価する環境が必要になっています。次に、求人広告の時代から求人サイトやエージェント、SNSという形で広がり続ける人材プールが挙げられます。今まで候補者1人ずつ評価していたものが、徐々に数十名~数百名、今では数十万人の潜在的な 候補者群から適任者を探す必要があり、データドリブンなプロセスへの切り替えが不可避になっています。加えてLLM(ジェネレーティブAI)の進化も大きな影響がありました。数千件の履歴書と3つの職務内容のマッチングコンペを人とアルゴリズムで行った結果、アルゴリズムは精度では3位でも、人が30時間かかった作業をわずか5秒で行ったという報告もあり、このようなテクノロジーを活用できるプラットフォーム、ソフトウェアへのニーズが高まってきています。その他、クリティカルスキルの流動性が高まっていることなども、これまでのような不要な属性管理を極力減らし、真に必要なコアスキル単位でのタレントマネジメントを実現しようという動きを通じ、タレント・インテリジェンス への注目度を高めている要因のひとつとなっています。
5年前、タレント・インテリジェンスは「採用Tech」の位置づけで、コア人事への影響力はわずかでした。技術的進化とともに、会社のタレントプールの強みやスキルギャップ把握、後継者育成計画やチーム組成の社内外機会の特定、多様性等の観点からの組織人材パターン分析など採用に限らない使途拡大が予想されています。人事基幹システムにわざわざタレント・インテリジェンス・ツールを組み合わせる事例も紹介され始めていますし、ERPやHRIS側の機能開発やSaaSツールの競争激化なども予想されますので、タレント・インテリジェンスが人事のみなさまのお手元に届く日もそう遠くないかもしれません。
参考文献
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