EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
テクノロジーの進化が早すぎて追い付けないと嘆いている方もおられるのではないかと拝察しますが、ご心配なく、それは何も年齢だけの問題ではありません。むしろ近年、若手層に対して過度にテクノロジー関連知識を期待するという問題が生じており、これが若い方々の中でTech Shame(技術的な恥)という新しい課題を引き起こしているようです。
2022年にHP社が実施した調査によれば、画面が映らない、音声設定がおかしい、Wi-Fiの調子が悪いなど、「ありがちな」技術トラブルに対応できない時、若い人はシニアな世代より10倍も恥を感じやすいという結果が出たそうです。デジタルネイティブじゃないの?と思った方はご注意を。確かにZ世代(1990年代後半~2010年代前半生まれ)はデジタルネイティブと呼ばれ、生まれた時からインターネットやスマートフォンがあり、SNSと共に育ち、そして分からないことは書籍よりもデジタルツールで検索するというように、新しい技術への抵抗感が少なそうな印象はあります。
しかし一方で、うすうすお気付きかもしれませんが近年のデジタルツールには実はほとんど「マニュアル」がありません。2007年のiPhone登場以降、多くのデジタルツールは直感的な操作性を重視するようになってきました。つまりZ世代が主に活用してきたものは、その大半が直感で分かるものばかりだったわけです。一方でオフィス内のデジタル機器はどうでしょうか。複合機プリンター、デスクトップPC、テレビ会議システムなど、いずれも直感的なものではなくマニュアルと悪戦苦闘した記憶のある方も少なくないのではないでしょうか。こういったものはZ世代からすると入社して初めて触れるわけですので、当然ながら勝手は分かりません。そこに「デジタルネイティブだから分かるよね」という偏見が混じると、分からなかった時の「恥」という感情を生むわけです。
では皆さんは、我が社ではそのような偏見はありません、と自信を持って言えるでしょうか?例えば、Z世代は4割が最低限のコンピューティングスキルしか教わっていないと自覚しているそうですが、彼らが必要とするデジタルスキルトレーニングを十分に提供できているでしょうか?あるいは育休などでしばらく業務を離れた人に対し、その期間中の新しい技術についてのキャッチアップを支援する仕組みをお持ちでしょうか?または若い人がシニアメンバーに最新技術や流行を教えるリバースメンタリングなどの仕組みを導入してしまっていたりはしませんでしょうか?
リバースメンタリングに関しては最近、生成AIはリバースメンタリングの対象とすべきではないという論文をハーバード・ビジネススクールとボストン コンサルティング グループが発表したように、警鐘を鳴らす例も出始めています。生成AIに関してはデジタルに詳しい傾向がある若い世代にとっても新しい技術であるため、教えるというのは荷が重すぎて過信してはいけないという話ではありましたが、そうでなくとも当然に若手の中にもデジタルスキルの濃淡がある中で、全員まとめて「若いんだからデジタル分かるよね」とひとくくりに捉えてしまうことが根本的な問題です(生成AIも、メンター役を正しく選べば機能するはずです)。
Tech Shameというのは個人の問題ではありません。従業員がそれぞれに自分のスキル・知識の現状を正しく把握すること、そして必要なスキルを獲得するために企業が適切なプログラムや機会を提供し、学習の機会を増やすことが求められます。また、そのような濃淡が個人にあるという前提に立ち、分からないことを分からないと素直に表現できる環境や、〇〇だからとひとくくりにしてしまわない意識などが、組織の側に求められる問題なのです。
参考文献
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