EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
コロナ騒動の2020年から2022年にかけ、Great Resignation(大量退職)、Great Reshuffle(大量転職)という動きが欧米で生じたのはご存じの方も多いでしょう。その状況が近年一転し、求人は多いが人が動かないBig Stayと呼ばれる状態へとシフトしています。弊社のグローバル定点調査では1年以内の転職希望者が2022年の調査では43%だったものが2023年調査では34%とおよそ2割の減少が見られ、直近調査でも半年以内の転職希望者が2023年7月の49%から2024年2月は36%とおよそ3割の減少を報告した例もありました。市場全体としてこの動きはしばらく継続すると見られており、今回はこのBig Stayから日本企業が何を学ぶべきかを考えてみましょう。
まずそもそもなぜこのBig Stayは起きたのでしょうか。中には単にパンデミック前の水準に戻っただけの自然な反動だという論調も多少はありますが、多くの説では①Great Resignationで賃金水準が高止まりして金銭的な転職インセンティブが働きづらくなったことと、②続くGreat Reshuffleで企業が打った人材確保と引き留め策が奏功して現職への満足度が高まったこと、そして③地政学リスクを代表とする不安定さの中で転職リスクが取れずにQuiet Quitting状態に陥っている可能性などが挙げられています。
この3点を意識して日本の労働市場に目を転じると、ご存じの通り雇用の流動性は高まりつつあるとは言え欧米と比較すれば極めて低く、転職希望者の9割近くが1年以内に転職しないという報告さえあるほどです。ですからまず、企業側には高止まりするほど賃金を上げる理由が無く(新卒採用競争で徐々に上がってはきていますが)前掲①は日本では無縁となります。転職リスクが取れずに現状維持を続ける人の量にも大きな変化があるとは思えませんので、③も日本では事情が異なると考えるのが妥当です。となると日本企業が学ぶべきは②の、Great Reshuffleで各社が打ったリテンション施策(賃金を除く)、ということになります。
さまざまな施策がある中でも最も効果が大きかったのはフレキシブルワークだと言われています。特に時間と場所の柔軟性はコロナ禍の間に制度導入した企業が多く、もはやそれだけでは差別化ができない程度にまで浸透しています。加えて人と業務がReshuffleされたことで、目的志向のキャリア(自分の価値観に合致するキャリアが用意されているか)と仕事に対する満足度(自身の希望するチャレンジングな業務に向き合えるか)に関するミスマッチが減少したことも大きいとされています。
そしてこれらの施策では差が生まれにくくなってきた中で次の差別化要素として注目されてきているのが、Well-being(福利厚生とメンタルヘルス)、DE&I(またはDEIB)、そして自律的なアップスキリング・リスキリングの3施策です。簡単にまとめると全体を通して「従業員の自律性・選択権」というものを軸として、働き方、業務内容、そして生活や価値観へと施策対象が広がってきたと表現することができ、これは順序も含め非常に学びが多い動きと言えるのではないでしょうか。
ちなみに職種別に見ると最もBig Stayが起きている(直近半年での転職希望率のマイナス変化量が大きかった)のはなんと人事だったという調査もあります。当たり前と言えば当たり前ですが、上述テーマは全てが人事にかかってくるチャレンジングな課題です。まさに今、皆さんが感じておられる「仕事の面白さ」や「組織の良さ」、「やりがい」などを、ぜひ人事以外にもしっかり伝えられるよう取り組んでいきましょう。
参考文献
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