EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
EY新日本有限責任監査法人 品質管理本部 会計監理部/サステナビリティ開示推進室 公認会計士 前田 和哉
品質管理本部 会計監理部において、サステナビリティ開示を含む非財務情報に関する相談及び情報発信に関する業務に従事。2018年から20年までの間、金融庁企画市場局企業開示課に在籍し、非財務情報開示の行政にも従事。EYグローバルのIFRS S1及びS2の論点グループのメンバーも務める。
EY新日本有限責任監査法人 サステナビリティ開示推進室 公認会計士 山本 寛喜
企業開示全体の信頼性を高める保証の提供や開示プロセス向上支援の強化を目的するサステナビリティ開示推進室の立上げ時からのメンバーとして、サステナビリティ関連業務に従事している。
サステナビリティ基準委員会(SSBJ)から2024年3月29日にサステナビリティ開示ユニバーサル基準(以下、ユニバーサル基準)及びサステナビリティ開示テーマ別基準(以下、テーマ別基準)の公開草案(以下、あわせて「本公開草案」)が公表されています。今回公表されたユニバーサル基準及びテーマ別基準は以下の基準となります。
本公開草案は、国際サステナビリティ基準審議会が開発したIFRSサステナビリティ開示基準(以下、ISSB基準)の内容を取り入れるかどうかについて、個々の論点ごとに検討を行い、ISSB基準の内容を取り入れる場合であっても、主として基準の読みやすさを優先してISSB基準の定めの順番等を入れ替えたり、用語を言い換えたりしたうえで、SSBJとしてのサステナビリティ開示基準を定めています。
また、IFRS S1号「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」(以下、IFRS S1号)は、サステナビリティ関連財務開示を作成する際の基本的な事項を定めた部分と、サステナビリティ関連のリスク及び機会に関して開示すべき事項(以下、コア・コンテンツ)を定めた部分とで構成されており、IFRS S1号のコア・コンテンツに関する定めは、具体的に適用されるISSB基準が存在しない場合に適用することとされています。このため、本公開草案では、分かりやすさの観点から、わが国におけるIFRS S1号に相当する基準を、基本的な事項を定める適用基準案と、コア・コンテンツを定める一般基準案とに分けて基準が作られています(<図1>参照)。
本公開草案では、適用対象企業を定めていませんが、金融庁から「SSBJ基準の適用対象については、グローバル投資家との建設的な対話を中心に据えた企業(プライム市場ないしはその一部)からはじめることが考えられる」との方向性が示されたことを踏まえ、プライム上場企業が適用することを想定して開発が行われています。なお、プライム上場企業以外の企業も適用できるとされています。
適用基準案は、SSBJが公表するサステナビリティ開示基準に準拠したサステナビリティ関連財務開示を作成し、報告する場合において、基本となる事項を示すことを目的としており、SSBJが公表するサステナビリティ開示基準に従ってサステナビリティ関連財務開示を作成し報告するにあたり、適用しなければならない基準となります。
サステナビリティ関連財務開示は、企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る、報告企業のサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報を提供する開示と定義しており(適用基準案第4項(4))、関連する財務諸表に含まれる情報を補足し、補完するものと考えられています(適用基準案BC17項)。そして、SSBJが公表するサステナビリティ開示基準は、関連する財務諸表が我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されているか、その他の一般に認められた会計原則又は実務に準拠して作成されているかにかかわらず、適用しなければならないとされています(適用基準案第3項)。
ユニバーサル基準とテーマ別基準に含まれない補足文書などは、サステナビリティ開示基準の適用にあたって参考となる文書とされ、サステナビリティ関連財務開示を作成するにあたり適用する必要はないとされています。
サステナビリティ関連財務開示は、関連する財務諸表と同じ報告企業に関するものでなければならず、報告企業が連結財務諸表を作成している場合、親会社及びその子会社のサステナビリティ関連のリスク及び機会が理解できるものでなければならないとされています。
サステナビリティ開示基準で要求する情報が、企業が活動する法域の法令によって開示することが禁止されている場合、これを開示する必要はないとされています。ただし、この定めに基づき重要性がある情報を開示しない場合、開示しない情報の種類及び開示しない根拠となる法令の名称を開示しなければならないとされています。
以下のすべての条件を満たし、かつ、その場合に限り、サステナビリティ関連の機会に関する情報が、商業上の機密であると企業が判断したときは、サステナビリティ開示基準で要求する情報であり、また重要性があったとしても開示しないことができるとされています。この場合、その旨を開示しなければならないとしています。なお、サステナビリティ関連のリスクに関して、また、幅広くサステナビリティ関連財務情報を開示しない根拠として用いてはならないとされています。
サステナビリティ関連財務情報は、関連性があり、表現しようとしている対象を忠実に表現するものでなければならないとされています。また、比較可能で、検証可能で、適時で、理解可能であれば、その有用性が補強されるとされています。
企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会を適正に表示しなければならないとされています。なお、開示する情報に重要性がない場合は開示の省略が認められるとされています。
重要性がある情報を重要性がない情報で不明瞭にすることや、類似していない重要性がある項目を集約することによって、サステナビリティ関連財務開示の理解可能性を低下させてはならないとされています。
情報が関連する項目のつながり、サステナビリティ関連財務開示内の開示のつながり、サステナビリティ関連財務開示とその他の一般目的財務報告の情報とのつながりを理解できる情報を開示しなければならないとされています。
また、サステナビリティ関連財務開示の作成に用いるデータ及び仮定は、関連する財務諸表の作成にあたり準拠した会計基準を考慮したうえで、可能な限り、関連する財務諸表の作成に用いるデータ及び仮定と整合させなければならないとされています。
企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報を開示するにあたり、①バリュー・チェーンの範囲の決定、②企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会の識別、③識別した当該リスク及び機会に関する重要性がある情報の識別をしなければならないとされています。
サステナビリティ関連財務開示を作成するにあたり適用した、具体的な基準、公表文書、産業の実務及びその他のガイダンスの情報源、SSBJが公表するサステナビリティ開示基準、IFRS財団が公表する「SASB スタンダード」又は特定の産業に関連するその他のガイダンスの情報源によって特定された産業を開示しなければならないとされています。
サステナビリティ関連のリスク及び機会のそれぞれに関連して、バリュー・チェーンの範囲を決定しなければならないとされています(適用基準案第38項)。
企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得るサステナビリティ関連のリスク及び機会を識別するため、ガイダンスの情報源に関する定めを適用しなければならないとされています。そして、合理的で裏付け可能な情報を用いなければならないとしています。なお、情報の網羅的な探索を行う必要はないとされています。
サステナビリティ関連のリスク又は機会に具体的に適用されるサステナビリティ開示基準を適用し、具体的に適用されるサステナビリティ開示基準が存在しない場合、ガイダンスの情報源に関する定め(<表1>参照)を適用しなければならないとされています。
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具体的に適用される開示基準が存在しない場合は、上記の「参照し、その適用可能性を考慮しなければならない」又は「参照し、その適用可能性を考慮することができる」定めに基づいて基準の適用可能性を検討することになるとされています(適用基準案第54項、第56項)。
サステナビリティ関連財務開示は、原則として、関連する財務諸表とあわせて開示しなければならないとされています。また、以下のすべての要件を満たす場合、相互参照によりサステナビリティ関連財務開示に含めることができるとされています。
サステナビリティ関連財務開示は、原則として、関連する財務諸表と同時に報告しなければならないとしています。また、サステナビリティ関連財務開示は、SSBJが公表するテーマ別基準において別段の定めがある場合等を除き、関連する財務諸表と同じ報告期間を対象としなければならないとされています。
そして、サステナビリティ関連財務開示では、当該開示の公表承認日及び承認した機関又は個人の名称を開示しなければならないとしており、当該開示の公表承認日までに発生する取引、その他の事象及び状況に関する情報について、開示しないことにより、主要な利用者の意思決定に影響を与えると合理的に見込み得る場合、開示しなければならないとされています。
法令の要請に基づきSSBJが公表するサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合、当該法令の名称を開示し、任意でSSBJが公表するサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合、その旨を開示しなければならないとされています。
その他、数値の表示に用いる単位(適用基準案第11項、第12項)、合理的で裏付け可能な情報の考え方(適用基準案第34項から第35項)、比較情報(適用基準案第76項から第80項)、サステナビリティ関連財務開示を作成する過程で企業が行った判断の開示(適用基準案第85項から第86項)、サステナビリティ関連財務開示で報告される数値の測定の不確実性に関する開示(適用基準案第87項から第89項)、誤謬への対応(適用基準案第90項から第94項)がサステナビリティ関連財務開示を作成する際の基本的な事項として定められています。
適用基準は、公表日以後終了する年次報告期間に係るサステナビリティ関連財務開示から適用することができるとされています。この場合、一般基準及び気候基準を同時に適用しなければならないとされています(適用基準案第95項)。
最初の年次報告期間において、比較情報を開示しないことができるとされています(適用基準第96項)。また、最初の年次報告期間において、気候基準に準拠して気候関連のリスク及び機会についてのみ情報を開示することができるとされています(適用基準第97項)。この場合、最初の年次報告期間における気候関連のリスク及び機会に関する比較情報の開示、2年目の年次報告期間における気候関連のリスク及び機会以外のサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する比較情報の開示は要求されないとされています(適用基準第98項)。
開示目的は、一般目的財務報告書の主要な利用者が、企業に資源を提供するかどうかに関する意思決定を行うにあたり有用な企業のサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報の開示について定めることにあるとされています(一般基準案第1項)。
一般基準案は、SSBJが公表するサステナビリティ開示基準に従ってサステナビリティ関連財務開示を作成し、報告するにあたり、適用しなければならないとされています。また、SSBJが公表する他のテーマ別基準が、具体的なサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する情報の開示について定めている場合、これに従わなければならないとされています(一般基準案第3項、第4項)。
SSBJが公表するサステナビリティ開示基準が具体的な状況において開示しなければならないとしているか、開示することができるとしている場合を除き、(1)ガバナンス(2)戦略(3)リスク管理、(4)指標及び目標の開示をしなければならないとされています(一般基準案第7項)。
サステナビリティ関連のリスク及び機会をモニタリングし、管理し、監督するために企業が用いるガバナンスのプロセス、統制及び手続を理解できるようにすることが目的とされています(一般基準案第8項)。
サステナビリティ関連のリスク及び機会をモニタリングし、管理し、監督するために用いるガバナンスのプロセス、統制及び手続における経営者の役割(一般基準案第10項)等の開示が求められています。
サステナビリティ関連のリスク及び機会を管理する企業の戦略を理解できるようにすることが目的とされています(一般基準案第11項)。
サステナビリティ関連のリスク及び機会、ビジネス・モデル及びバリュー・チェーンに与える影響、財務的影響、企業の戦略及び意思決定に与える影響、レジリエンスについての開示が求められています。
サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別し、評価し、優先順位付けし、モニタリングするプロセスを理解すること、企業の全体的なリスク・プロファイル及び全体的なリスク管理プロセスを評価することが目的とされています(一般基準案第29項)。
モニタリングするために用いるプロセス及び関連する方針に関する情報等の開示が求められています。
サステナビリティ関連のリスク及び機会に関連する企業のパフォーマンスを理解できるようにすることが目的とされています(一般基準案第31項)。
指標は、適用されるサステナビリティ開示基準が要求している指標やサステナビリティ関連のリスク又は機会やサステナビリティ関連のリスク又は機会に関する企業のパフォーマンスを測定し、モニタリングするために企業が用いている指標を開示しなければならないとされています(一般基準案第33項)。また、目標は、戦略的目標の達成に向けた進捗をモニタリングするために設定した目標及び企業が活動する法域の法令により満たすことが要求されている目標がある場合、当該目標に関する情報を開示しなければならないとされています(一般基準案第40項)。
一般基準は、公表日以後終了する年次報告期間に係るサステナビリティ関連財務開示から適用することができるとされています。この場合、適用基準及び気候基準を同時に適用しなければならないとされています(一般基準案第41項)。
一般基準を適用する最初の年次報告期間において、比較情報を開示しないことができるとされています(一般基準案第42項)。また、適用基準の経過措置を適用し、一般基準を適用する最初の年次報告期間において、気候基準に準拠して気候関連のリスク及び機会のみについての情報を開示する場合、一般基準を適用する2年目の年次報告期間において、気候関連のリスク及び機会以外のサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する比較情報を開示しないことができるとされています(一般基準案第43項)。
開示目的は、一般目的財務報告書の主要な利用者が企業に資源を提供するかどうかに関する意思決定を行うにあたり有用な、企業の気候関連のリスク及び機会に関する情報の開示について定めることにあり、企業がさらされている気候関連のリスク(気候関連の物理的リスク及び気候関連の移行リスクを含む。)及び企業が利用可能な気候関連の機会に適用しなければならないとされています(気候基準案第1項、第3項)。
気候関連のリスク及び機会をモニタリングし、管理し、監督するために企業が用いるガバナンスのプロセス、統制及び手続を理解できるようにすることを開示目的としています(気候基準案第9項)。
気候関連のリスク及び機会を管理する企業の戦略を理解できるようにすることが開示目的であり気候基準案第13項)、以下の事項を開示しなければならないとされています(気候基準案第14項から第39項)。
① 企業の見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスク及び機会
② 気候関連のリスク及び機会が企業のビジネス・モデル及びバリュー・チェーンに与える影響
③ 気候関連のリスク及び機会の財務的影響
④ 気候関連のリスク及び機会が企業の戦略及び意思決定に与える影響
⑤ 気候レジリエンス
気候関連のリスク及び機会を識別し、評価し、優先順位付けし、モニタリングするプロセスを理解できるようにすることとされています(気候基準案第40項)。リスク管理では、企業が気候関連のリスクを識別し、評価し、優先順位付けし、モニタリングするために用いるプロセス及び関連する方針に関する情報、気候関連の機会を識別し、評価し、優先順位付けし、モニタリングするために用いるプロセスに関する情報、気候関連のリスク及び機会を識別し、評価し、優先順位付けし、モニタリングするために用いるプロセスが、全体的なリスク管理プロセスに統合され、用いられている程度、並びにその統合方法及び利用方法に関する情報を開示しなければならないとされています。
気候関連のリスク及び機会に関連する企業のパフォーマンスを理解できるようにすることとされています(気候基準案第43項)。
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気候関連の目標の特定
戦略的目標の達成に向けた進捗をモニタリングするために設定した定量的及び定性的な気候関連の目標並びに企業が活動する法域の法令により満たすことが要求されている目標がある場合、当該目標について定められた開示を行われなければならないとされています。これらの目標には、温室効果ガス排出目標が含まれるとされています(気候基準案第94項)。
目標を設定し、当該目標の達成に向けた進捗をモニタリングするために用いる指標を識別し、開示するにあたり、産業横断的指標等及び産業別の指標を参照し、その適用可能性を考慮しなければならないとされています。目標の達成に向けた進捗を測定するための指標を企業が作成した場合、その指標について定められた開示を行わなければならないとされています(気候基準案第98項)。
温室効果ガス排出目標
温室効果ガス排出目標を開示する場合、一般的な目標について要求される開示に加え、温室効果ガス排出目標に関する追加の開示を行わなければならないとされています(気候基準案第99項)。また、温室効果ガス排出の純量目標を開示する場合、関連する総量目標も別個に開示しなければならないとされています(気候基準案第100項)。
公表日以後終了する年次報告期間に係る気候関連開示から適用することができるとされています。この場合、適用基準及び一般基準を同時に適用しなければならないとされています(気候基準案第102項)。
最初の年次報告期間において、比較情報を開示しないことができ、その旨を開示しなければならないとされています。また、最初の年次報告期間においてのみ、次のいずれか又は両方の経過措置を適用することができるとされています。
これらの経過措置を適用した場合、その後の報告期間において比較情報として情報を表示するにあたり、当該経過措置を引き続き適用することができるとされています(気候基準案第 105 項)。
2023年1月31日に改正された企業内容等の開示に関する内閣府令(以下、開示府令)により、有価証券報告書においてサステナビリティ情報の記載欄が新設されるなど、サステナビリティ情報の開示義務化が始まっています。開示府令は、詳細な開示事項を規定しているわけではなく、各企業の現在の取組状況に応じて柔軟な記載が可能な枠組みとなっています。
しかし、すべてが企業の裁量に委ねられるわけではなく、「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」や「記述情報の開示に関する原則(別添)―サステナビリティ情報の開示についてー」を参照し、また、金融庁から各年度に公表される「記述情報の開示の好事例集」も参考にしながら、開示の充実を図る必要があります。開示府令の公布・施行により、有価証券報告書を提出するすべての企業にサステナビリティ情報開示への対応が求められています。
開示府令がある程度柔軟な対応が可能な枠組みである一方で、本公開草案ではより詳細な開示要求事項を定めることが提案されています。その内容には、定量的な情報だけでなくコア・コンテンツとしてサステナビリティに関連する定性的な経営情報も含まれることから、企業の状況によっては開示の前提となるサステナビリティ経営のあり方が問われる可能性があります。また、サステナビリティ関連財務開示は、関連する財務諸表と同じ報告企業に関するものでなければならないことが提案されており、連結財務諸表を作成している場合には連結グループ全体で対応が必要となることが考えられます。さらに、報告のタイミングについて、原則として、関連する財務諸表と同時に報告しなければならないことが提案されており、必要な情報を適時に、網羅的に収集する必要があると考えられます。その他、例えば気候基準案におけるバリュー・チェーン情報を含むスコープ3温室効果ガス排出に関する開示への対応など、開示要求事項に対応し得る情報収集体制の整備が必要と考えられます。
本公開草案では、具体的な適用範囲や適用時期は明確にされていませんが、各企業の取組状況に応じて、本公開草案の開示要求事項を踏まえた開示体制の整備を検討していくことが重要と考えられます。
サステナビリティ情報の充実した開示は、企業価値の向上等に寄与するものと考えられます。
企業経営の実践においては、財務データだけではなくサステナビリティ関連の情報・データを収集し、事業の進捗モニタリングや分析、経営戦略に活用することが求められます。また、それらの状況を開示することで、投資家との建設的な対話が促進されます。よって、企業経営の実践に資するサステナビリティ情報を収集し、活用できるかどうかがポイントと考えられます。
例えばグローバルに事業展開する企業では、さまざまな法域から情報を収集することになりますが、情報の定義や粒度が各法域で異なれば、収集した情報を有効に企業経営に活用できない可能性があります。このような課題を克服するために、企業グループポリシーの策定やシステム対応を含めた内部統制の整備が必要となることも想定されますが、このような内部統制の構築には実務上一定の時間を要することが想定されるため、各企業の状況に応じて早々に対応を検討することが重要と考えられます。そして、このような対応は、本公開草案の適用に向けた対応としても有用と考えられます。
金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」が新たに設置され、SSBJ基準の適用範囲やサステナビリティ情報の第三者保証のあり方について議論が行われています。このため、どのタイミングでSSBJ基準の適用対象となるかはこの議論を注視する必要があります。
全国に拠点を持ち、日本最大規模の人員を擁する監査法人が、監査および保証業務をはじめ、各種財務関連アドバイザリーサービスなどを提供しています。
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