情報センサー

SSC/BPO等のオペレーションセンターにおける業務マニュアルに関する留意点


情報センサー2018年7月号 EY Advisory


EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング(株)
Project Management Professional(米国プロジェクトマネージメント協会認定資格)保有者 水野 貴仁

外資系コンサルティングファームにてITコンサルティングやPMOのほか、BPOの立ち上げから運用までの全工程の業務を経験。2017年、EYに入所。当社では、主にバックオフィス業務のBPO、SSCの戦略立案、設計、立ち上げ、運用以降の各種管理までのプロセスの始まりから終わりまでを支援する、SRA(Sourcing Risk Advisory)のサービス提供に従事。


Ⅰ はじめに


欧米企業で導入・運営が先行していたシェアード・サービス・センター(SSC)やビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)は、近年、日本企業でも活用が進んできています。
このSSCやBPO等を導入して企業の目的を達成するためには、それらのオペレーションセンターにおいて「業務マニュアルの整備」が重要な要素の一つになります。
本稿では、業務マニュアルの作成および運用における留意点について、解説します。

Ⅱ 業務マニュアルの作成における留意点


一般的に、業務マニュアルを作成する主な目的は、現行担当者での安定した業務遂行(サービス提供)や担当者交代時のスムーズな引き継ぎ、ならびに、継続的な改善(オペレーショナルエクセレンス)実現のための「見える化」になります。それを実現するためには、現行の担当者だけが理解できるだけでなく、他の担当者や管理者層も理解ができるようなものになっている必要があります。
しかし、実態として以下のような傾向がしばしば見受けられます。


<よくある不適切な例>

  • 情報量の多さ、粒度の不統一などにより、作成者以外の人が読むと何が書いてあるのか理解に苦労する。
  • 手順として行うことと、実施した結果どのような状態になることの説明が混在し、分かりにくい。
  • 手順を簡潔に記載しておくべきところに、注意点をだらだらと記載している。特に、「XXXに注意」と書いてあるが、結局は手順の説明になっていない。
  • 複数パターンがあるにもかかわらず、表形式を用いることなく、文章で全てを説明している。
  • 同じシステム名、部署名、作業名でも言葉が異なるため、複数マニュアル間での比較が困難。

このような状況が散見されますと、業務マニュアルとしての機能を十分に果たすことは困難になります。このような状況に陥る主な原因としては、業務マニュアルの適切なフォーマット、記述ルールを定めたガイドライン、用語の定義(マスターの定義)がないことが挙げられます。
従って、単純に各担当者に業務マニュアルの作成を指示するのではなく、組織として業務マニュアルの在り方について、フォーマット、ガイドライン、用語の定義を用意した上で、作成する必要があります(<表1>参照)。


表1 業務マニュアルの作成に必要な要素

Ⅲ 業務マニュアルの運用における留意点


業務マニュアルは一度作成したら終わりではありません。現場で業務を遂行する中で、初めて気付くルールや例外があるため、継続的に追記していくことが必要になります。また、今日の変化の速いビジネス環境においては、社内外のさまざまな要因によって業務プロセス自体を変更する必要があり、さらにはオペレーションセンターを導入する以上、業務改善は必須であるため、業務マニュアルの改訂が必要になります。これらを実行するために、<表2>について留意する必要があります。


表2 業務マニュアルの改訂に必要な要素

表3 業務分析マトリクスの例

Ⅳ おわりに


SSCやBPOにおける、業務マニュアルの作成や運用について、基本的な考え方を説明しました。人が代わることが前提となるSSCやBPOでは、通常、業務マニュアルは用意されているものの、中には内容が不十分なために、引き継ぎが発生するごとに、業務の品質が低下してしまったという事例があります。このような事象を避けるために、業務マニュアル自体の品質も一定のものにすることが重要です。本稿が業務マニュアルに対する理解や社内での共通認識として、皆さまのお役に立つことができれば幸いです。


「情報センサー2018年7月号 EY Advisory」をダウンロード


情報センサー

2018年7月号
 

※ 情報センサーはEY Japanが毎月発行している社外報です。