EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
パース駐在員 公認会計士 諸貫健太郎
2004年、当法人に入所。石油開発企業、製造業、小売業をはじめとする上場企業を中心に、会計監査およびIFRSアドバイザリー業務に従事。13年よりEYパース事務所に駐在。会計監査を中心として、現地日系企業をサポートしている。
2017年4月18日、オーストラリア政府は現行の就労ビザであるTemporary Work (Skilled)visa(subclass 457 visa:457ビザ)を18年3月に廃止し、代わりに新しい一時的就労ビザ(Temporary Skill Shortage visa:TSSビザ)の導入を発表しました。また、当該発表とともに17年4月19日から現行の457ビザの改正についての発表も行っています。
新しいビジネスビザ制度への完全な移行は18年3月からですが、17年4月19日より457ビザの段階的な改正を経て新制度が導入される予定です。以下、17年3月までに実施される457ビザの改正について、時系列に沿って概要を説明します。
457ビザは、前記の改正を経た後18年3月に廃止され、全く新しいTSSビザに置き換わる予定です。なお、新しい制度では以下の2種類の一時的就労ビザが導入されます。
高度なスキルが要求される職種には、短期ビザ(短期TSSビザ)が利用できます。このビザの移民局の申請手数料は、1,150豪ドルとなります。このビザでは、雇用者が高度なスキルを保有する外国人を2年間まで就労させることができます。
スキルギャップを埋めるためには中長期ビザ(中長期TSSビザ)が利用できます。このビザの移民局の申請手数料は、2,400豪ドルとなります。このビザでは必要とするスキルを保有する外国人を4年間まで就労させることが可能で、さらに将来的に永住権の取得が可能となります。
オーストラリア政府は今回発表された新ビザ制度による現行の457ビザ保有者への影響はないと表明しました。今後、雇用者に対して新制度への移行措置が導入され、現行の457ビザ保有者の在住ステータスが明確化されると予想されます。
17年4月19日より該当職種リストが651の職種から435の職種へ減少しています。このため、該当職種が職業リストから除外された場合には、457ビザの申請は許可されません。なお、申請を取り下げることで、申請料金の返金の措置が取られることとなります。また、該当職種リストにある職業についても、一連の改正で承認までに時間がかかることが想定されます。
職業リストのさらなる見直し、英語力要件の厳格化、オーストラリア従業員に対するトレーニング実施要件の厳格化など、雇用者による一時就労ビザ申請に対する厳格化がなされています。そのため、駐在員派遣に対する選考プロセスの長期化、コンプライアンスに費やすコストの増加が企業への大きな影響として想定されます。
17年5月9日に連邦予算案の発表があり、18年3月より現行のTraining Benchmark Financial Obligationsを廃止し、代わりに新たに設立されるSkilling Australians Fundへの納付が義務付けられることになりました。新規定上では、雇用者は、売上が1,000万豪ドル以上の事業所の場合は、TSSビザ保有者一人当たり毎年1,800豪ドル、売上が1,000万豪ドル未満の事業所の場合は、1,200豪ドルを納付することになります。
※16年4月12日時点で53,900豪ドル