EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
Transfer Pricing Records Regulations 2023に関する規則が、2023年8月9日に施行されました。
本規則は、重要な関連者間取引を行う特定の英国事業体に適用され、一般的な移転価格文書化要件に加えて運用されます。
本規則は、法人税については2023年4月1日以降に開始する会計期間の申告から、所得税については2024-25課税年度からそれぞれ適用されます。
該当期間にわたって国別報告書(CbCR)の基準値を満たす多国籍企業(MNE)グループのメンバーである英国事業体は、本規則の適用対象の範囲に含まれます。MNEグループのテストの対象となる英国事業体には、以下のいずれかが含まれます:
MNEグループは、次の条件に合致すれば、CbCRの基準値を満たすことになります:
本規則はまた、HMRCコミッショナーの公表する通達を通じて、影響を受ける納税者に対してHMRCがローカルファイルの作成に関する補足情報の保持を要求することを認めています。この権限は、監査証跡サマリー(SAT)の維持・保管義務を課すために行使されることが想定されます。SATについては、導入に先立ち2023年にさらなるコンサルテーションが行われる予定です。
HMRCはまた、HMRC International Manual (INTM)に移転価格の記録に関する条項を追加し、新しい要件に関する詳細なガイダンスを提供しています(INTM450000)。
ローカルファイルから除外される取引についても、独立企業原則に従って価格設定されなければなりません。さらに、2022年版のOECDの移転価格ガイドラインに従ってマスターファイルおよびローカルファイルを維持・保管する義務がない場合においても、同ガイドラインは依然としてOECDが推奨する標準的なアプローチを示しています。HMRCは、MNEグループのテスト条件が満たされない場合でも、関連者間における取引が独立企業原則を順守していることを証明する適切な方法は、OECDの推奨するアプローチに沿って文書を作成することであるとの見解を示しています。
ローカルファイルは事業体固有の文書であり、各事業体で作成されるべきものですが、MNEグループでは、国別のローカルファイルを統合して作成することができます。
当該英国事業体において、分類された関連者間取引が上限を超えない場合、または上限を超える関連者間との取引が、英国国内での取引、あるいは、移転価格事前確認(APA)の対象取引であるために免除されている取引のみとなる場合、当該英国事業体はローカルファイルを作成する必要はありません。
しかしながらHMRCは、以下に該当する場合には、英国国内の取引に関するローカルファイル作成義務の適用除外には当てはまらないことを確定しています:
ローカルファイルを維持・保管する必要がない場合には、マスターファイルを維持・保管する必要もありません。
HMRCは、重要性がなく、ローカルファイルから除外できる取引に関するガイダンスを公表しています。英国事業体にとって、分類された関連者間取引の重要性を判断するためには、分類されたカテゴリー内のすべての取引を集計しなければなりません。ローカルファイルは事業体毎に検証する必要がある文書であるため、MNEグループ全体ではなく、ローカルファイルを作成する英国事業体の観点から分類された関連者取引重要性を判断する必要があります。
HMRCは、100万ポンドというデミニマス(僅少)の閾値を分類された各関連者間取引のカテゴリーに適用できると規定しています。カテゴリー内の取引の合計額が100万ポンド以下である場合、それらの取引はローカルファイル内にて報告する必要はありません。
HMRCは、特定のカテゴリーの取引は、その性質や複雑性から常に重要であるとみなし、これらの取引は金額にかかわらず常にローカルファイルに含めるべきであるとしています。以下の重要な取引のカテゴリーについては、デミニマス(僅少)閾値は適用されません:
その他すべてのカテゴリーの取引については、関連するすべての事実および状況を考慮した上で、事業体が何を重要とみなすか独自に判断する必要があります。HMRCは、事業体が選択した重要性へのアプローチをローカルファイルに記載することが重要であると指摘しています。
文書化を含む移転価格分析は、同時期に作成し、維持される必要があります。よって、移転価格の記録は、毎年法人税申告書を提出する前に作成する必要があります。HMRCのガイダンスによると、マスターファイルおよび英国のローカルファイルはともに、英国事業体または関係者の法定記録の一部を構成する特定の移転価格の記録となり、要求があれば30日以内にHMRCに提供される必要があります。したがって、特定の移転価格の記録を要求する情報の通知に対して不服を申し立てることはできません。
マスターファイルおよびローカルファイルの維持・保管義務がない事業体も、独立企業間価格を裏付けるために、毎年法人税申告書を提出する前に移転価格分析を行う義務があります。
HMRCは、特定の移転価格の記録が少なくとも毎年見直され、必要に応じて更新されることを期待しています。また、更新の有無にかかわらず、各期間について最終的に確定した特定の記録一式(毎年完成した移転価格文書)が必要になります。
事業環境に変化がない場合、新たなベンチマーク分析を実施する頻度は、2022年版の移転価格ガイドライン3.82項に概説されているようなさまざまな要因に左右されることになります。機能的な変化があれば、新たなベンチマーク分析を実施する必要があることに留意することが重要です。状況によっては、毎年新規のベンチマーク分析を行う必要はない場合もありますが、独立企業原則を確実に適用するためには、比較対象企業の財務データを毎年更新することが不可欠です。したがって、比較対象企業の財務データを毎年更新することは、移転価格税制を確実に順守し、独立企業間価格を担保するために極めて重要となります。
申告書に関する適切な記録の維持または保管を怠った場合、最大3,000ポンドの罰金が課される可能性があり、これには規定された移転価格の記録も含まれます。
さらに、HMRCのガイダンスでは、2022年版の移転価格ガイドラインに従って、関係者がマスターファイルおよび/またはローカルファイルを維持・保管する義務を怠り、HMRCが後日、移転価格に関連する申告書の誤りを指摘した場合に、その後の罰則の検討に影響を与える可能性があることに言及しています。また、本ガイダンスでは、規定された移転価格の記録の保持は上級経理担当者(SAO)の責務であり、記録の維持が行われていない場合、組織内で適切な会計プロセスや取り決めが確立されていないことを示す可能性があると述べています。
Ernst & Young Tax Co. (Japan), UK Tax Desk, Tokyo
Richard Johnston アソシエートパートナー
Rebecca McKavanagh シニアマネージャー
Ernst & Young LLP (United Kingdom), London
Jo Stobbs Partner パートナー
Eriko Hirai Partner パートナー
Hitoshi Kobayashi シニアマネージャー
Nobuhiko Ito マネージャー
※所属・役職は記事公開当時のものです
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