EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
前回に引き続き、税務争訟のうち訴訟について、国税庁の最新データを用いてコメントします。
国税庁は、本年8月に令和2年度統計年報「5 その他 不服審査、訴訟事件」を公表しており、その内容を要約したものが下記の表1です。これによると、税務訴訟における納税者の勝訴割合は、おおむね5~10%程度で推移しています。ただし、この表は課税関係事件だけでなく徴収関係事件も含み、税目も全税目を含んでいます。そこで、表1から法人税部分だけを抽出したものを表2にまとめています。
なお、表1において、令和2年の税務訴訟新規発生件数は令和元年より大きく減少しています。これは、令和2年の審査請求の処理件数が令和元年の処理件数より500件程度少なかったことの影響が原因で、税務訴訟の提起を回避するトレンドが生まれたわけではないと考えています。
表1 (全類型、全税目、全審級の合計)
年度(4月1日から翌年3月31日まで) |
平成26年 |
平成27年 |
平成28年 |
平成29年 |
|
令和元年 |
令和2年 |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
発生件数 |
237 |
231 |
230 |
199 |
181 |
223 |
165 |
|
終結件数 |
280 |
262 |
245 |
210 |
177 |
216 |
180 |
|
請求認容 |
19 |
22 |
11 |
21 |
6 |
21 |
14 |
|
請求認容割合 |
6.8% |
8.4% |
4.5% |
10.0% |
3.4% |
9.7% |
7.8% |
|
平成26年度から令和2年までの各「統計年報」
(https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/tokei.htm)
より筆者作成
表2 (法人税の課税関係事件のみ、全審級の合計)
平成26年 |
平成27年 |
平成28年 |
平成29年 |
平成30年 |
令和元年 |
令和2年 |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|
発生件数 |
49 |
38 |
38 |
30 |
53 |
36 |
37 |
終結件数 |
74 |
46 |
43 |
35 |
32 |
58 |
39 |
請求認容(納税者勝訴)件数 |
12 |
3 |
7 |
6 |
1 |
8 |
6 |
請求認容割合 |
16.2% |
6.5% |
16.3% |
17.1% |
3.1% |
13.8% |
15.4% |
表1と比べ、法人税に限定した場合の方が全体として高い納税者勝訴割合を示しています。直近の令和2年度も15.4%の勝訴率です。統計からは法人の規模別の数値は明らかになりませんが、大企業が原告になっている場合にはより高い勝訴率になっているのではないかと推測されます。20年ほど以前の、ほとんど納税者が勝つことができなかった税務訴訟の状況からすると、大きな変化と言えます。
また、税務訴訟の特徴として、勝訴になった場合の全部認容の割合が不服申し立てよりも高いという点があり、不服申し立ての判断に際しては、最終的に税務訴訟まで進むかどうかもセットにして判断する必要があります。もちろん、訴訟には時間と費用がかかりますので、訴訟に適した案件かどうかについて、専門家の意見も考慮に入れた慎重な判断が必要になります。
EY Tax controversy team
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