モビリティ(海外赴任)コラム:個人のクロスボーダー課税 ―出国税について―

人の異動に伴う税金の問題は年々複雑になっています。今回は日本からの出国時、海外在住時、帰任時と3回にわたって税金の問題を考えたいと思います。

皆さんは出国税(国外転出時課税)というのをご存知でしょうか。時価1億円以上の有価証券等を所有している国内居住者が、国外へ転出する(赴任等により国内に住所や居所がなくなる)ときに、所得税が課されます。課税時期までに発生しているその有価証券等の「含み益」について、実際には有価証券等を売却等していなくても、精算したものと「みなして」所得税が課税されるという制度です。

対象となる資産は主に有価証券等になりますが、長期インセンティブプランで株式報酬を付与されている従業員、役員が増え、また複数の株式報酬制度があるケースも多いため、個人の方がどのプランが対象になるのかを判断するのは難しくなっています。

例えば、譲渡制限付株式(RSU)を付与されている場合には、譲渡制限解除後の株式が対象となります。ストックオプションについては、国内源泉所得を生ずべきものを除くとされています。上記の他、ESOP信託や従業員持ち株会などに加入している場合の検討もありますので、赴任前には自分の財産の棚卸しをすることをお勧めします。

一方、海外では株式報酬については、その国の税制に則り課税されることになりますので、出国税で課税された場合には、二重課税にならないように、滞在地国での税制度の理解も必要になってきます。

2021年10~12月期の資金循環統計によると家計の金融資産は前年同期比4.5%増の2023兆円であり、株式の保有残高は前年同期に比べて15.5%増の212兆円となっています。株高、円安を背景に今後も株式投資は増加することが予想されますので、海外への出国を控えている方は今一度ご確認ください。


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羽山 明子 ディレクター