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2021年4月7日、国際通貨基金(IMF)と経済協力開発機構(OECD)は、共同報告書「Tax Policy and Climate change税務政策と気候変動」(以下、報告書)を発表しました。報告書では、カーボンプライシングの現状と可能性および気候変動対策の世界的な調整を進めるために、各国が取るべき行動について検討しています。本報告書は、イタリアが議長国を務めるG20財務大臣・中央銀行総裁会議の第2回会合において、気候変動緩和政策パッケージにおける温室効果ガスの排出権価格の役割について議論するために作成されました。
本報告書は、IMF専務理事とOECD事務総長の責任のもと共同で発表されましたが、報告書で表明された意見や採用された議論は、必ずしもIMFやOECD、あるいは各加盟国政府の公式見解を反映するものではないとされています。報告書は以下の6つのセクションで構成されています。
本報告書には、グローバルおよびG20のコミットメント、カーボンプライシングスコア、BCAデザインの選択と代替案を詳述した3つの添付資料も含まれています。
本報告書は、G20の財務大臣および中央銀行総裁に宛てられ、冒頭で2015年のパリ協定の目標を達成するためには、クライメートプライシングが必要であることを述べ、現在の排出権に関する誓約や政策では目標を達成できないとしています。
そこではカーボンプライシングを含む温室効果ガスの価格設定について、「費用対効果の高い気候変動緩和戦略において不可欠なツールである」とし、カーボンプライシングの強みを詳述しています。その強みとは、企業と家庭の双方に温室効果ガスの排出量削減とグリーンエネルギーの利用拡大をアピールできること、クリーンテクノロジーへの民間投資を促進できること、規制的アプローチよりも柔軟性があること、長期的な効果があること、政府の収入が増えることなどが挙げられています。
報告書は、G20メンバーが世界の炭素排出量の80%以上を占めていることを踏まえ、G20の財務大臣は、気候変動対策やその他の適切な環境政策を推進する重要な立場にあるとし、そのために取り得る複数の行動を提案しています。
報告書では、炭素税や燃料税を含むカーボンプライシングの現状評価について述べていますが、事実上の炭素税や排出権取引システムから生じる価格は低すぎ、燃料の炭素含有量との整合性に欠けているとしています。すべての国で、実効炭素率は電気および産業における5ユーロ / tCO2未満から、道路輸送における90ユーロ / tCO2までと大幅に異なり、すべてのセクターの平均炭素率は20ユーロ / tCO2未満です。しかし、報告書によると、カーボンプライシングは欧州連合内で勢いを増しており、韓国、中国、ニュージーランドにおいても包括的な価格設定スキームが導入されています。カーボンプライシングがもたらすプラスの影響として、大幅な歳入増加や国内の環境・健康面でのメリットが取り上げられています。
報告書では、包括的な緩和戦略の6つの重要な要素として、規制やフィーベート、技術への公共投資、炭素価格収入の公平な利用、弱者層の保護措置、産業競争力の支援、他の排出物の価格設定を挙げています。また各国が一方向の措置を検討している要因として、各国のカーボンプライシングに対する意欲が大きく異なっていることを指摘しています。BCAは、炭素リーケージを防ぎ、国内企業の競争力低下を防ぐために考慮されている政策手段の一つです。本報告書では、BCAを効果的に設計するための潜在的な課題や考慮すべき事項についても述べています。
炭素価格と国の政策目標との間の現在のギャップに対処する努力は、より厳しい炭素価格設定措置につながる可能性があります。本報告書は、政府と企業が協力して温室効果ガスの排出量を削減する必要性と政策手段の複雑さに焦点を当てた、気候・エネルギー・炭素に関する政策文書の最新版です。炭素税を含むカーボンプライシングは、イノベーションを促進し、逆進性を相殺するための収入を得ることのできる、排出量削減のための効率的なツールとして、エコノミストや政策立案者の間では広く知られています。
カーボンプライシング政策の実施は、経済全体に影響を及ぼし、すべての産業と消費者に影響を与えます。グリーン政策が普及していく中で、企業にとっては、既存及び今後の炭素制度、並びにBCAの相互作用をモデル化し、その影響を持続可能な変革計画に織り込むことが重要となります。
本アラートの詳細は、2021年4月16日付EY Global Tax Alert 「IMF and OECD release joint report on carbon pricing」(英語のみ)をご覧ください。