役員に対する株式報酬制度に関する税務上のポイント 平成29年度税制改正大綱を受けて

役員に対する株式報酬制度に関する税務上のポイント 平成29年度税制改正大綱を受けて


Japan tax newsletter 2017年1月17日号

平成29年度税制改正大綱が公表され、役員給与に関する改正が注目を集めています。従来、役員に対して支給する報酬については厳しい損金算入要件が設けられており、実際、多くの企業で固定報酬を中心とした報酬制度が採用されてきたところです。近年のコーポレートガバナンスに対する取組みの中で新たな役員報酬のあり方が検討され、税制もこれに呼応して改正されています。本アラートでは、株式報酬を中心に、改正が見込まれる内容も踏まえて、税務上の取扱いをご紹介します。

1. 役員報酬制度の変化と税制の整備

(1) コーポレートガバナンスと役員報酬制度

2015年6月よりコーポレートガバナンス・コードの適用が開始され、企業の持続的な成長と中長期的な価値向上に向けた取り組みが進められているところですが、その基本原則4-2(取締役会の役割・責務(2))の中で、取締役会の重要な役割として、経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備が掲げられ、経営陣の報酬については、中長期的な会社の業績や潜在的リスクを反映させてインセンティブ付けを行うべきとされています。さらに、補充原則4-2①では、経営陣の報酬について、持続的な成長に向けた健全なインセンティブの一つとして機能するよう、中長期的な業績と連動する報酬の割合や、現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべきとされており、現金での固定的な報酬制度からの移行が提言されています。

さらに、2015年7月、『コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会』が新しい株式報酬の導入に向けた法的論点に関する解釈指針を公表し、取締役に対する報酬として自社株を交付することについての環境が整備されました。

(2) 役員給与に対する税制の整備

上記の流れを受け、平成28年度税制改正において、譲渡制限付株式を役員に対して交付する場合の費用について、条件付きで損金算入が認められることとなりました。

役員に対して株式を交付するタイプの報酬について損金算入が認められたのは、画期的な前進であったものの、事前確定届出給与の枠内で整理されたものであり、一般的な自社株交付や中長期的な業績に連動することを想定したような多様な役員報酬制度に対応させるには、やや窮屈な側面がありました。

そこで、中長期的な業績と連動する報酬や自社株報酬を導入する流れに呼応して税制が見直され、平成29年度税制改正では、譲渡制限の付されていない株式を交付するタイプの報酬制度についても損金算入される役員給与に含まれることとなるのに加え、利益連動給与の算定基礎となる利益指標に株価や売上高も含まれるなど、損金算入可能な役員給与の範囲が拡大することになります。

2. 役員報酬の種類と税務上の取扱い

(1) 役員報酬に関する法人税法上の類型
(2) 主な役員報酬制度と法人税法上の整理
(3) 平成29年度税制改正後の株式報酬

3. 今後の対応

※本アラートの全文は、下記PDFからご覧ください。


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