ソフトウェア業 第2回:ソフトウェアに関する会計ルールとソフトウェアの分類

EY 新日本有限責任監査法人 ソフトウェアセクター
公認会計士 小林 祐

1. ソフトウェアに関する会計ルール

ソフトウェアに関する、現在公表・適用されている会計基準・実務指針等は以下になります。
 

(1) 「研究開発費等に係る会計基準」、「研究開発費等に係る会計基準注解」、「研究開発費等に係る会計基準の設定に関する意見書」(企業会計審議会)

研究開発費やソフトウェアの会計処理についての基本的な事項について、定められています。
 

(2)「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針(日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第12号)、「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関するQ&A」

(1)の公表を受け、具体的な取り扱いや実務的な指針が定められています。
 

(3)「情報サービス産業における監査上の諸問題について」(IT業界における特殊な取引検討プロジェクトチーム)

ソフトウェア業における会計環境の特質が、整理されています。ただし、①総額・純額表示の区分、②収益の認識時点、③複数の要素のある取引等の検討については、下記(5)の収益認識会計基準で明確化された部分もあるため、参照の際には留意が必要になります。
 

(4)「棚卸資産の評価に関する会計基準」(企業会計基準第9号)

棚卸資産の期末における評価基準及び開示について定めることを目的として、公表されています。
 

(5)「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第30号)

収益認識に関する包括的な会計基準として、公表されています。

(6)「建設業及び受注制作のソフトウェア業における収益の認識に関する監査に係る実務ガイダンス」(監査基準報告書540実務ガイダンス第2号)

建設業及び受注制作のソフトウェア業における「収益認識に関する会計基準」及び「収益認識適用指針」を適用した場合の、企業の財務諸表の監査において留意すべき事項について記載されています。
 

(7)「ソフトウェア制作費等に係る会計処理及び開示に関する研究資料~DX環境下におけるソフトウェア関連取引への対応~」(会計制度委員会研究資料第7号)

ソフトウェアに関するビジネスの環境変化に伴い、多様な実務が生じていることを踏まえ、ソフトウェア及びその周辺の取引に関する会計上の取扱いについて調査し、現時点における考えが取りまとめられています。
なお、本研究資料において示されている会計処理等は、現時点における調査・研究の成果を踏まえた考察であり、実務上の指針として位置付けられるものではなく、また、実務を拘束するものでもない点には留意が必要です。

 

2. ソフトウェアの分類

「研究開発費等に係る会計基準」では、ソフトウェアはその制作目的に応じて、販売目的のソフトウェア及び自社利用のソフトウェアに分類され、販売目的のソフトウェアはさらに受注制作のソフトウェア、市場販売目的のソフトウェアに分類されます。

ソフトウェアの分類 図

(1) 販売目的のソフトウェア

① 受注制作のソフトウェア

受注制作のソフトウェアは、特定のユーザーから、特定の仕様で、個別に制作することを受託して制作するソフトウェアを指します。

② 市場販売目的のソフトウェア

市場販売目的のソフトウェアは、ソフトウェア製品マスターを制作し、これを複製して不特定多数のユーザーに販売するパッケージ・ソフトウェア等を指します。

 

(2) 自社利用のソフトウェア

自社利用のソフトウェアは、ユーザーへのサービス提供を行ってその対価を得るために用いられるソフトウェアと、社内の業務遂行を効率的に行うなど、社内の管理目的等で利用するためのソフトウェアとに分類されます。






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