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EY新日本有限責任監査法人 電力・ユーティリティセクター
公認会計士 池田 光典
電気事業とは、エネルギーである電気を生産(発電)、送電し、販売する事業と定義することができます。電気事業のビジネスの特徴及び経営環境について、以下の5回に分けて解説します。
わが国の電気事業(者)の概要は図表1のとおりです。
出典:資源エネルギー庁「電力供給の仕組み(2016年4月以降)」
この他、2022年4月1日より施行された改正電気事業法により、新たに配電事業、特定卸供給事業の2つが電気事業として規定され、各事業を行う者を配電事業者、特定卸供給事業者といいます。
電気事業は、発電(届出)、送配電(許可)、小売(登録)の事業区分に応じ、事業の運営が規制され、その事業及び事業者の種類は次のように規定されています。なお、電気事業を行う事業者は事業ごとにライセンスが付与されます(ライセンス制といいます)。
電気事業法(以下、「事業法」とする)とは、電気事業に関する法律です。その目的は、電気事業の運営を適正かつ合理的ならしめることによって、電気の使用者の利益を保護し、電気事業の健全な発達を図るとともに、電気工作物の工事、維持及び運用を規制することによって、公共の安全を確保し、環境の保全を図ることとされています。電気事業者は、この法律に基づいて事業を営むこととなります。
発電事業者は、発電事業を営むことについて経済産業大臣に届出をした者をいいます(事業法第2条第1項第15号、第27条の27第1項)。発電事業とは、自らが維持し、運用する発電用の電気工作物を用いて、小売電気事業、一般送配電事業または特定送配電事業の用に供するための電気を発電する事業であって、その事業の用に供する発電用の電気工作物が経済産業省令で定める要件に該当するものをいいます。火力、水力、原子力発電のみならず、太陽光、風力などの再生可能エネルギーによる発電を行っている事業者も、これに該当します。
特定卸供給事業者は、特定卸供給事業を営むことについて経済産業大臣に届出をした者をいいます(事業法第2条第1項第15号の4、第27条の30第1項)。特定卸供給事業とは、特定卸供給を行う事業であって、その供給能力が経済産業省令で定める要件に該当するものをいいます。特定卸供給とは、発電等用電気工作物を維持し、及び運用する他の者に対して発電又は放電を指示する方法その他の経済産業省令で定める方法により電気の供給能力を有する者(発電事業者を除く)から集約した電気を、小売電気事業、一般送配電事業、配電事業又は特定送配電事業の用に供するための電気として供給することをいいます。
一般送配電事業者は、一般送配電事業を営むことについて経済産業大臣の許可を受けた者をいいます(事業法第2条第1項第9号、第3条)。一般送配電事業とは、自らが維持し、運用する送電及び配電用の電気工作物により、その供給区域において託送供給及び発電量調整供給を行う事業(発電事業に該当する部分を除く)のことです。北海道電力ネットワーク㈱、東北電力ネットワーク㈱、東京電力パワーグリッド㈱、中部電力パワーグリッド㈱、北陸電力送配電㈱、関西電力送配電㈱、中国電力ネットワーク㈱、四国電力送配電㈱、九州電力送配電㈱、沖縄電力(株)の10社が、これに該当します。
送電事業者は、送電事業を営むことについて経済産業大臣の許可を受けた者をいいます(事業法第2条第1項第11号、第27条の4)。送電事業とは、自らが維持し、運用する送電用の電気工作物により、一般送配電事業者に振替供給を行う事業(一般送配電事業に該当する部分を除く)のことです。2024年1月現在、旧一般電気事業者間の連系送電線等を保有する電源開発送変電ネットワーク㈱に北海道北部風力送電㈱、福島送電㈱を加えた3社が、これに該当します。
配電事業者は、配電事業を営むことについて経済産業大臣の許可を受けた者をいいます(事業法第2条第1項第11号の3、第27条の12の2第1項)。配電事業とは、自らが維持し、及び運用する配電用の電気工作物によりその供給区域において託送供給及び電力量調整供給を行う事業(一般送配電事業及び発電事業に該当する部分を除く)であって、その事業の用に供する配電用の電気工作物が経済産業省令で定める要件に該当するものをいいます。地域新電力やインフラ技術をもっている事業者、AIやIoTの技術を有するベンチャー企業等が、参入事業者として挙げられます。
特定送配電事業者は、特定送配電事業を営むことについて経済産業大臣に届出をした者をいいます(事業法第2条第1項第13号、第27条の13第1項)。特定送配電事業とは、自らが維持し、運用する送電用及び配電用の電気工作物により、特定の供給地点において小売供給または小売電気事業もしくは一般送配電事業を営む他の者に、その小売電気事業もしくは一般送配電事業の用に供するための電気に係る託送供給を行う事業(発電事業に該当する部分を除く)のことです。旧特定電気事業者である鉄道会社や鉄鋼会社などの送配電部門が、これに該当します。
小売電気事業者は、小売電気事業を営むことについて経済産業大臣の登録を受けた者をいいます(事業法第2条第1項第3号、第2条の2)。小売電気事業とは、小売供給(一般の需要に応じ電気を供給すること)を行う事業(一般送配電事業、特定送配電事業及び発電事業に該当する部分を除く)のことです。旧一般電気事業者である北海道電力㈱、東北電力㈱、東京電力エナジーパートナー㈱、中部電力ミライズ㈱、北陸電力㈱、関西電力㈱、中国電力㈱、四国電力㈱、九州電力㈱、沖縄電力㈱は、小売電気事業者とみなされます(みなし小売電気事業者)。また、旧一般電気事業者以外の小売電気事業者は、いわゆる新電力と呼ばれることがあります。一般需要家は、この各小売電気事業者から電気を購入します。
戦後長く10電力会社による地域独占が続いていましたが、社会環境の変化などから、より効率的かつ安定的な供給の確保のためには規制緩和による市場競争が不可欠であるとの結論に至り、1995年の事業法の改正を契機に、電力の自由化へと歩み出しました。さらに2011年3月に発生した東日本大震災以降の一連の電力システム改革により、2016年4月に小売全面自由化が達成され、全ての一般需要家は電力の購入先を自由に選択できるようになりました。さらに、2020年4月に送配電部門の法的分離が実施されたこと等により、10電力会社による地域独占が崩れ、ライセンス制の下で、様々な形態の事業者が電気事業に参入することとなりました。
わが国において、2012年7月に再生可能エネルギーの固定価格買取制度(以下、「FIT制度」とする)が導入されて以降、再生可能エネルギーの発電電力量が制度開始前と比べて急速に拡大してきており、2020年度の発電電力量における再生可能エネルギーの比率は19.8%となりました。また、2018年7月に閣議決定された第5次エネルギー基本計画において、初めて再生可能エネルギーに関しては、経済的に自立し脱炭素化した主力電源化を目指すと明記されることとなりました。さらに、2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画において、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、2030年度の温室効果ガス排出削減目標として2013年度から46%削減すること、更に50%の高みに向けて挑戦を続けるとの新たな方針を示しました。同計画において再生可能エネルギーはS+3E※を大前提に、主力電源化を徹底し、最優先の原則で取り組み、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら最大限の導入を促すと位置づけられ、暫定的に2030年における電源構成に占める再生可能エネルギーの比率を36%~38%とするエネルギー需給の見通しが示されています。
※ S+3E
安全性(Safety)を前提としたうえで、エネルギーの安定供給(Energy Security)を第一とし、経済効率性の向上(Economic Efficiency)による低コストでのエネルギー供給を実現し、同時に、環境への適合(Environment)を図る、というエネルギー政策を進めるうえでの視点のことです。
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