投資信託 第7回:投資信託のディスクロージャー

投資信託研究会
白取 洋

(1) 金融商品取引法に基づく開示制度

公募投資信託の受益証券は、金融商品取引法(以下、「金商法」という。)上の特定有価証券として同法に定める発行開示と継続開示が求められています。具体的な開示方法については「特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令」に従うこととなります。

① 発行開示

投資信託の募集を行う場合には、有価証券届出書を当局に提出するとともに、目論見書を投資者に直接交付しなければなりません。また、有価証券届出書の記載内容に重要な事項の変更等があった場合には訂正届出書を提出しなければなりません。

目論見書は、投資者に必ず交付しなければならない交付目論見書と、投資者からの請求に応じて交付する請求目論見書に分かれており、前者の記載事項は投資判断に極めて重要な投資情報に限定されています。

なお、有価証券届出書及び請求目論見書においてはファンドの財務諸表が開示されます。

② 継続開示

有価証券届出書を提出した有価証券の発行者は、ファンドの財務状況を継続的・定期的に開示し、投資判断の資料となる情報を提供する目的で、計算期間ごとに有価証券報告書を当局に提出しなければなりません。また、計算期間が6ヶ月以上のファンドの場合には、期首から6ヶ月間の財務状況を開示する目的で半期報告書を提出しなければなりません。このほか投資判断に影響を及ぼす重要な事態が生じた場合には、都度臨時報告書を提出する必要があります。なお、ファンドでは四半期報告書の提出は求められていません。

有価証券報告書においてはファンドの財務諸表が、また、半期報告書においてはファンドの中間財務諸表が開示されます。

③ ファンドの財務諸表

これらの書類の中で開示されるファンドの財務諸表は、貸借対照表、損益及び剰余金計算書、注記表並びに附属明細表で構成され、その表示方法は「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」に準拠する必要があります。ただし、投資信託については別途、「投信計算規則」が定められていますので、別記事業として貸借対照表、損益及び剰余金計算書並びに附属明細表の表示方法は「投信計算規則」の定めによるものとされています。

なお、これらの財務諸表については、金商法第193条の2第1項に基づき、公認会計士又は監査法人の監査を受けなければなりません。

(2) 投信法に基づく開示制度

① 発行開示

公募投資信託については前述のとおり目論見書を交付しなければなりませんが、私募投資信託についてはそのような義務はありません。一方、投信法上は受益証券を取得しようとする投資者に対して、信託約款の内容を記載した書面を交付しなければなりません。

② 継続開示

前述の金商法における継続開示とは別に、原則として計算期間ごとに運用報告書を作成し、知れている受益者に交付しなければなりません。

運用報告書には、計算期間中の運用実績や経過、有価証券等の期末現在における保有状況や計算期間中の売買状況、期末日の資産、負債、元本及び基準価額の状況並びに計算期間中の損益の状態などが記載されます。

このうち、計算期間中の損益の状態において記載される各損益項目の金額は、金商法に基づき開示される損益及び剰余金計算書の金額とは一致しません。これは、一部解約の計理処理の相違に起因しています。すなわち、前述のとおり、日々の計理処理では解約金総額を元本部分とプレミアム部分とに区分のうえ、後者については各損益項目から直接引落す方法がとられています。運用報告書ではこれを特段修正することなく、各損益項目を引落した後のネットの金額で表示しています。しかし、会計理論的には、一部解約はあくまでも受益者が元本を解約したことにより生じる資本取引であり、このような処理は資本取引・損益取引区分の原則や総額主義の観点から妥当ではないと考えられています。そこで、金商法に基づき開示される損益及び剰余金計算書では、各損益項目からの引落し額を一旦足し戻してグロスの金額で表示のうえ、別途、当期純利益を算出した後に「一部解約に伴う当期純利益金額分配額」という科目を設け、ここで引落し合計額を控除することとしています。
 

参考文献等

  • (社)投資信託協会編 「定款・諸規則集 平成22年4月」

  • (社)投資信託協会ホームページ

  • 野村アセットマネジメント株式会社編著 「投資信託の法務と実務 第4版」 きんざい

  • 三好秀和編著 「ファンドマネジメントの新しい展開」 東京書籍
     

(週刊 経営財務 平成22年11月15日 No.2991 掲載)



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