わかりやすい解説シリーズ「企業結合」(平成25年改正会計基準) 第4回:共通支配下の取引等の会計処理(株式移転)

公認会計士 内川 裕介
公認会計士 高野 昭二

1. 株式移転により完全親会社(ホールディングス会社)を設立

 

【設例】

  • A社はB社発行済株式総数の80%を保有している。

  • A社及びB社は株式移転によりCホールディングス社を設立した。

  • Cホールディングス社は新株を発行し、A社及びB社の株主へ割り当てた。

  • B社の非支配株主へ交付したC社株式の時価相当額は200である。

  • Cホールディングス社の増加資本は、資本金1,500及び資本剰余金840とする。

  • また、各社において損益は発生していないものとする。
株式移転
  • 株式移転直前の貸借対照表は以下のとおりである。
株式移転直前の貸借対照表

 

(1) A社の仕訳
 

  • A社はB社の株主としてCホールディングス社株式を取得します。共通支配下の取引となりますので、完全親会社Cホールディングス社株式の取得原価は、旧子会社B社株式の株式移転直前の適正な帳簿価額に基づき計上します。
     
  • B社株式とCホールディングス社株式の株式交換による損益は認識しません。
     
A社の仕訳

※B社株式の適正な帳簿価額

(2) B社の仕訳

  • B社は株主がA社及び非支配株主からCホールディングス社に変更するのみとなります。従って、株式移転に伴う仕訳は発生しません。

(3) C社の仕訳

  • 旧親会社A社株式の取得原価は、共通支配下の取引となるため、原則としてA社の株式移転日の前日における適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて算定します。


旧親会社A社株式

旧親会社A社株式

※1,500=資本金1,000+利益剰余金500

 

増加資本1,500については、払込資本の増加(資本金又は資本剰余金)として処理します。ここでは資本金の増加としています。

  • 旧子会社B社株式の取得原価は、株式移転日の前日の持株比率に基づき、①旧親会社A社持分相当額と②非支配株主持分相当額に按分します。
     

①旧親会社A社持分相当額(80%)

共通支配下の取引となるため、B社の株式移転日の前日における適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて算定します。

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※640=(資本金500+利益剰余金300)×80%

 

増加資本640については、払込資本の増加(資本金又は資本剰余金)として処理します。ここでは資本剰余金の増加としています。

②非支配株主持分相当額(20%)

非支配株主との取引となるため、C社が非支配株主に対して交付したC社株式の時価に基づいて算定します。

②非支配株主持分相当額(20%)

※時価相当額200

 

増加資本200については、払込資本の増加(資本金又は資本剰余金)として処理します。ここでは資本剰余金の増加としています。

(4) 株式移転後のCホールディングス社貸借対照表

移転直後のCホールディングス社貸借対照表は次のようになります。
 

株式移転後のCホールディングス社貸借対照表

(5) 連結財務諸表における仕訳

  • 投資と資本の相殺消去
投資と資本の相殺消去

※B社株式の取得原価200と減少する非支配株主持分160(=(資本金500+利益剰余金300)×20%)との差額は資本剰余金として処理します。
 

  • 自己株式へ振り替え
     

A社が受け入れたCホールディングス社株式は、連結財務諸表上では自己株式となるため、自己株式に振り替えます。

自己株式へ振り替え
  • 株主資本項目の調整

共通支配下の取引であるため、株式移転前後で連結財務諸表の資本構成が異なる場合には、株式移転前の連結財務諸表上の資本構成に戻す必要があります。すなわち、利益剰余金の金額は株式移転前後で影響はないため、株式移転前の利益剰余金の金額に調整する必要があります。

また、連結財務諸表上の資本金はCホールディングス社の資本金となるため、株式移転前のA社(旧親会社)の資本金が異なる場合には、その差額を資本剰余金に振り替えます。

株主資本項目の調整

※Cホールディングス社資本金1,500-A社資本金1,000


(6) ホールディングス会社設立前後の連結貸借対照表

  • ホールディングス会社設立前後の連結貸借対照表は次のようになります。親会社がA社からCホールディングス社となったことにより、純資産の部の構成がホールディングス会社設立前後で異なります。
  • 連結貸借対照表
     
連結貸借対照表




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