わかりやすい解説シリーズ「企業結合」(平成25年改正会計基準) 第3回:共通支配下の取引等の会計処理(株式交換)

公認会計士 内川 裕介
公認会計士 高野 昭二

1.株式交換により子会社を完全子会社化

 

【設例】

  • A社はB社発行済株式総数の80%を保有している。

  • A社は株式交換することによりB社を完全子会社化した。

  • 株式交換に当たりA社はB社の非支配株主に対して新株の発行を行った。時価相当額は200である。

  • B社はA社が新規設立した会社である。

  • B社は設立後に当期純利益を計上していないものとする。
株式交換
  • 株式交換直前の貸借対照表は以下のとおりである。
株式交換直前の貸借対照表

 

(1)A社の仕訳

  • 親会社A社が追加取得するB社株式の取得原価は、株式交換直前に付された適正な帳簿価額ではなく、取得の対価に基づき算定します。すなわち、非支配株主との取引ですので非支配株主に交付したA社株式の時価に基づき算定します。
A社の仕訳

※新株発行による増加資本200については、払込資本の増加(資本金又は資本剰余金)として処理します。資本金、資本準備金、その他資本剰余金のいずれを増加するかは会社法の規定に基づき決定することになります。ここでは資本剰余金の増加としています。

(2)B社の仕訳

  • 株式交換に伴う仕訳は発生しません。

(3)連結財務諸表における仕訳

  • 投資と資本の相殺
投資と資本の相殺
  • 追加取得による持分変動
    追加取得したB社株式の取得原価と、減少する非支配株主持分との差額は資本剰余金に計上します。なお、連結会計基準の改正により追加取得持分の取得原価と減少する非支配株主持分との差額は資本剰余金として処理することとされた点、留意が必要です。
追加取得による持分変動

(4)株式交換前後の連結貸借対照表

  • 株式交換前後の連結貸借対照表は次のようになります。株式交換により、B社が100%子会社となったことから、移転後の非支配株主持分は減少してゼロとなり、払込資本(ここでは資本剰余金)が増加します。
株式交換前後の連結貸借対照表



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