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EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 大浦 佑季
2023年3月期決算に係る有価証券報告書(以下「有報」という。)のコーポレート・ガバナンスの状況等における株式の保有状況に関する注記の開示状況を知りたい。
調査対象会社(201社)のうち、投資有価証券に該当する株式のうち保有目的が純投資目的である投資株式と純投資目的以外の目的である投資株式の区分の基準や考え方についての記載状況を調査した結果が<図表1>である。
区分の基準や考え方 |
会社数 |
比率 |
---|---|---|
専ら株式価値の変動又は株式に係る配当の受領によって利益を受けることを目的とする |
167社 |
83.1% |
定義の記載なし |
29社 |
14.4% |
「純投資目的以外の目的である投資株式」を定義して「それ以外の目的」、「その他の株式」等と記載 |
3社 |
1.5% |
その他 |
2社 |
1.0% |
合計 |
201社 |
100.0% |
区分の基準や考え方 |
会社数 |
比率 |
---|---|---|
「純投資目的である投資株式」を定義して「それ以外の株式」等と記載 |
74社 |
36.8% |
取引関係の維持・強化 |
71社 |
35.3% |
企業価値の向上に資する |
25社 |
12.4% |
記載なし |
22社 |
10.9% |
その他 |
9社 |
4.5% |
合計 |
201社 |
100.0% |
<図表1>からは、純投資目的である投資株式について「専ら株式価値の変動又は株式に係る配当の受領によって利益を受けることを目的とする投資株式」として、純投資目的以外の目的である投資株式について「それ以外の株式」とする事例が最も多く、全体の3分の1を占めていたことがわかる。
また、「原則として純投資目的である投資株式の保有は行わない」とする方針を記載したり、純投資目的以外の目的である投資株式のみ保有していることを記載し、純投資目的である投資株式について基準や考え方を記載しない事例も全体の14.4%を占めていた。
なお、純投資目的以外の目的である投資株式については、区分の基準として、取引関係の維持・強化や企業価値の向上等に資するといった点を記載している会社が全体の5割弱を占めていた。
次に「保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式」と「保有目的が純投資目的である投資株式」に分けて投資株式の保有状況を集計したところ、<図表2>の結果となった。
非上場株式以外 |
非上場株式 |
||||
---|---|---|---|---|---|
会社数 |
調査対象会社に占める比率 |
会社数 |
調査対象会社に占める比率 |
||
保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式 |
|
86.1% |
183社 |
91.0% |
|
保有目的が純投資目的である投資株式 |
27社 |
13.4% |
25社 |
12.4% |
<図表2>より、純投資目的以外の目的で投資株式を保有している会社が多く、純投資目的で投資株式を保有している会社は全体の1割程度であることがわかる。
(旬刊経理情報(中央経済社)2023年9月20日号 No.1688「2023年3月期「有報」調査」を一部修正)
2023年3月期 有報開示事例分析