2023年3月期 有報開示事例分析 第4回:コーポレート・ガバナンスの状況等③(株式の保有状況)

EY新日本有限責任監査法人
公認会計士 大浦 佑季

Question

2023年3月期決算に係る有価証券報告書(以下「有報」という。)のコーポレート・ガバナンスの状況等における株式の保有状況に関する注記の開示状況を知りたい。

Answer

【調査範囲】

  • 調査日:2023年8月
  • 調査対象期間:2023年3月31日
  • 調査対象書類:有価証券報告書
  • 調査対象会社:以下の条件に該当する201社
    ①2023年4月1日現在、JPX400に採用されている
    ②3月31日決算である
    ③2023年6月30日までに有価証券報告書を提出している
    ④日本基準を適用している

【調査結果】

調査対象会社(201社)のうち、投資有価証券に該当する株式のうち保有目的が純投資目的である投資株式と純投資目的以外の目的である投資株式の区分の基準や考え方についての記載状況を調査した結果が<図表1>である。


<図表1> 投資株式の区分の基準や考え方

  • 保有目的が純投資目的である投資株式

区分の基準や考え方

会社数

比率

専ら株式価値の変動又は株式に係る配当の受領によって利益を受けることを目的とする

167社

83.1%

定義の記載なし

29社

14.4%

「純投資目的以外の目的である投資株式」を定義して「それ以外の目的」、「その他の株式」等と記載

3社

1.5%

その他

2社

1.0%

合計

201社

100.0%

  • 保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式

区分の基準や考え方

会社数

比率

「純投資目的である投資株式」を定義して「それ以外の株式」等と記載

74社

36.8%

取引関係の維持・強化

71社

35.3%

企業価値の向上に資する

25社

12.4%

記載なし

22社

10.9%

その他

9社

4.5%

合計

201社

100.0%

<図表1>からは、純投資目的である投資株式について「専ら株式価値の変動又は株式に係る配当の受領によって利益を受けることを目的とする投資株式」として、純投資目的以外の目的である投資株式について「それ以外の株式」とする事例が最も多く、全体の3分の1を占めていたことがわかる。

また、「原則として純投資目的である投資株式の保有は行わない」とする方針を記載したり、純投資目的以外の目的である投資株式のみ保有していることを記載し、純投資目的である投資株式について基準や考え方を記載しない事例も全体の14.4%を占めていた。

なお、純投資目的以外の目的である投資株式については、区分の基準として、取引関係の維持・強化や企業価値の向上等に資するといった点を記載している会社が全体の5割弱を占めていた。

次に「保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式」と「保有目的が純投資目的である投資株式」に分けて投資株式の保有状況を集計したところ、<図表2>の結果となった。


<図表2> 投資株式の保有状況

非上場株式以外

非上場株式

会社数

調査対象会社に占める比率

会社数

調査対象会社に占める比率

保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式

173社

86.1%

183社

91.0%

保有目的が純投資目的である投資株式

27社

13.4%

25社

12.4%


<図表2>より、純投資目的以外の目的で投資株式を保有している会社が多く、純投資目的で投資株式を保有している会社は全体の1割程度であることがわかる。


(旬刊経理情報(中央経済社)2023年9月20日号 No.1688「2023年3月期「有報」調査」を一部修正)



この記事に関連するテーマ別一覧


企業会計ナビ

会計・監査や経営にまつわる最新情報、解説記事などを発信しています。

eyjapancorporateaccountingthumbnail.jpg