減損会計 第5回:減損損失の認識と測定

EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 山岸 聡
EY新日本有限責任監査法人 公認会計士 武澤 玲子

1.減損損失の認識と測定の相違

 

減損会計のプロセス(第1回:減損会計の概要より再掲)

減損会計のプロセス(第1回:減損会計の概要より再掲)

※1 減損損失の認識
まず、割引前将来キャッシュフローの総額が帳簿価額を上回っているかどうかの回収可能性テストを行います。資産グループから得られる割引前将来キャッシュフローの総額が帳簿価額を下回る場合に、減損損失を認識し、次の減損損失の測定のステップに移ります。

※2 減損損失の測定
減損損失が認識された資産グループについては、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を当期の損失として減損損失の金額を測定します。回収可能価額とは、資産または資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれかの高い方の金額と定義されています。使用価値の計算方法は、将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて計算されます。

「認識」と「測定」の相違
次の図に示す資産Cグループのように、減損の兆候があっても、減損損失が認識されないような場合には、減損損失の測定は行いません。両者の違いは、減損損失の認識が割引前将来キャッシュフローを用いるのに対して、減損損失の測定は割引後将来キャッシュフローを用いるという点です。

キャッシュフローの見積り

キャッシュフローの見積り

減損損失認識までのステップ

資産または資産グループ

A:損益報告・経営計画

B:減損の兆候

C:減損損失の認識

認識判定の結論

D:減損損失の測定

回収可能価額

資産A

減損の兆候の識別

ある

簿価>割引前将来CF

減損あり

回収可能価額まで減額

正味売却価額

資産B

減損の兆候の識別

ある

簿価>割引前将来CF

減損あり

回収可能価額まで減額

使用価値(割引現在価値)

資産C

減損の兆候の識別

ある

簿価>割引前将来CF

-

-

-

資産D

減損の兆候の識別

なし

-

-

-

-

2.減損損失の測定
 

(1)概要

減損損失を認識すべきであると判定された資産または資産グループについては、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として当期の損失とします。各資産グループに係る減損損失の計算式は次のようになります。


減損損失の金額 = 帳簿価額 - 回収可能価額


(2)使用価値の算定

使用価値は、資産または資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュフローの現在価値として算定されます。

使用価値の計算要素

① 将来キャッシュフローの定義・範囲

② 継続的使用から生ずる将来キャッシュフローの見積り

③ 使用後の処分によって生ずる将来キャッシュフローの見積り

④ キャッシュフローを見積もる期間

⑤ 現在価値の算定に使用する割引率

使用価値の計算要素

(3)減損損失の配分

資産グループについて認識された減損損失は、合理的な基準により、資産グループの構成資産に配分されます。合理的な基準の例示として、次の2つの方法が挙げられています。

① 帳簿価額に基づいて比例配分する方法

② 各構成資産の時価を考慮して配分する方法

減損損失の配分


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