EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバルネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。
公認会計士 浦田 千賀子
公認会計士 伊藤 毅
【ポイント】
減損会計は、企業が行った投資額が回収できなくなるという見積りをタイムリーに財務諸表に反映するための会計処理です。
企業は新たな利益を得るために、固定資産を取得し事業の拡大を計画します。例えば、新規事業を開始する際、そのための機械装置を設置することがあります。その際、企業は固定資産の投資額以上のもうけを将来得ることを見込んで、固定資産を購入しています。
図1-1 固定資産への投資
図1-1の場合、毎年、将来の回収見込み170-減価償却額120=50のもうけを得ることを想定しています。投資時点の計画通りに事業を営むことができた場合、耐用年数5年を経過した時点で250のもうけを得ることになります。この場合、ABC株式会社は、投資額を上回る成果を得られたということになります。
図1-2 投資の失敗
しかし、投資はいつも成功するとは限りません。強力な同業他社の出現など、様々な事象によりもうけが得られないどころか、固定資産の投資額すら回収できない、元が取れない状況になることも大いにありえます。
図1-2の場合、貸借対照表に計上されている機械装置の帳簿価額240に対して、将来の回収見込みが60と小さいため、帳簿価額と将来の回収見込みの差額180が投資の損失ということになります。
このように投資の損失が見込まれる場合には、当該事実を財務諸表に反映する必要があります。そこで、会計上は固定資産の帳簿価額に反映させるために、「減損」という処理を行います。固定資産の帳簿価額を減らした部分は、損益計算書では「減損損失」として反映されます。一方、貸借対照表では、固定資産の帳簿価額が、減損損失分減らされた金額で計上されることになります。これにより、固定資産の帳簿価額が見積り時点で得られると見込まれる回収額に見合った金額であることを明確にすることができるのです。
ここでは、機械装置を例に固定資産の減損について説明しましたが、実際に減損会計が適用される資産は広範囲にわたっています。こちらについては、解説シリーズの本編において説明しておりますので、ご参照ください。
わかりやすい解説シリーズ「減損会計」